M-1グランプリ2024 決勝戦
決勝戦 FIRST ROUND 前半戦 1~5組目
12月22日(日)放送分
俳優の堀井新太さんが主演する舞台「少女ミウ」(作・演出:岩松了さん)がザ・スズナリ(東京都世田谷区)で上演中だ(6月4日まで)。一家心中の生き残りの少女・ミウ(黒島結菜さん)を巡る青春群像劇で、今作が舞台初主演となる堀井さんは、NHK連続テレビ小説「マッサン」や「下町ロケット」(TBS系)、映画「青空エール」などに出演して注目を浴び、現在はドラマ「3人のパパ」(TBS系)で主演を務めている。舞台への意気込みや俳優としての現在についての心境などを聞いた。
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舞台への手応えを、「手応えというのは、あまりどの作品でも感じたことはないのですが、雰囲気はいいと思います」と堀井さんは切り出し、「岩松さんがすごく優しくて、本当にだめな状況なら絶対怒っていると思う(笑い)」と充実ぶりをにじさせる。
制作発表時、演出の岩松さんを「不思議な魅力のあるおじさん」と表現していた堀井さんだが、その印象は「変わらないです」と言い、「すごく優しくて、大きな子供みたいなイメージもあります。お芝居が好きで、ずっとここまでやってこられた方なんだなっていうふうにすごく感じました」と語る。
そして、「一緒に出る役者さんに、『岩松さんの頭脳がほしい』とよく言うんですけど、考えていることが僕らよりもはるかに複雑で豊か」と敬意を口にする。
今作には「身を委ねる」という気持ちで臨んでいるといい、「初見で台本があまり分からなかったので、身を委ねるしかないなと思ってやらせてもらっています」とその心境に至った経緯を説明し、「朝ドラで父親役だった風間杜夫さんと親交があるんですが、風間さんは岩松さんとよくご一緒されていて、風間さんの舞台を見に行ったときに楽屋におじゃまして『今度、岩松さんとやるんです』と言ったら、岩松さんの言うことには『はい』だけにしろというアドバイスをもらいました」と明かす。
その理由について、「分かっていないのに分かったと言ったら岩松さんが怒っちゃうからって(笑い)」と明かし、「本当に素直に言われた通りにやっていったら、不思議といろんな道が見えてきて、やっていてすごく楽しいなという感じになってきました」と効果てきめんだったことを喜ぶ。
舞台で堀井さんが演じるのは、ミウを取材するドキュメンタリー番組のアンカーマン、広沢役。爽やかな好青年役のイメージから、一転して大人びた男性役への挑戦に、「しゃべり方を意識している」と話し、「普段はダラダラしゃべっちゃいますが、この役はキビキビしゃべらないといけない」と考えているという。
さらに、「スーツを着て一番びしっとしている人なので、座り方や姿勢も気を付けていかないといけない」と役作りについて語り、「あまりカチカチしすぎると一人だけ硬い印象になってしまうので、そこのバランスは稽古(けいこ)を通して見つけています」と話す。
同じシーンを何度も繰り返すことで知られる岩松さんの稽古では、「何回も繰り返していくと見えてくる何かがある」と堀井さんは感じるも、「岩松さんは決してそれを答えてはくれないんですが、意味なんか聞くのは野暮なこと。『机を触りながらしゃべって』とか言われて、最初はとまどったのですが、やっていくうちに腑に落ちてきました」と振り返る。
舞台は今作が堀井さんにとって初主演となったが、「普段とあまり変わらずに(いこう)」という心境で臨み、その理由について「『3人のパパ』で連ドラ初主演をやっていて、ちょっと気負いすぎたので、いつも通りでいいということを学びました」と打ち明ける。
“座長”ということを意識しすぎず、「まずは(自分の役を)全うして、余裕ができたらいろんなところに行くぐらいの気持ちじゃないと」と自然なスタンスを心がけ、「そういうのも見越した上で選んでくれていると思いますから、最近は、そこに委ねようと思っています」と心境の変化を語る。
映像とは異なる舞台の魅力を、「やっぱり生でお芝居を見られるところ」と言い、「カットがかからず、ずっと出ていて、せりふを言っていないときもずっと見られている。役を深めるという作業は、舞台が一番すごいなとは思います」と自身の見解を述べる。
出演中の「3人のパパ」もそうだが、堀井さんは同世代と共演する機会が多い。「同世代だと、菅田(将暉)、太賀、戸塚純貴、染谷(将太)くんとか、演技派が多いです」と切り出し、「なぜか同い年だと、なんかライバル意識を持つというか、よく分からないですけれど、そういう心が芽生える」と意識してしまうという。
しかし、最近では「人と比べることってあまりよくないと思っていて、気にしちゃうぐらいなら(自分自身が)もっと努力しろよと」と心境の変化があり、「人の目が気にならないぐらい自信を持てる人でありたい」と真っすぐ前を見つめる。そして「意外と甘えん坊なので(笑い)。自分に勝たないと」と冷静に自己分析する。
同世代の俳優とは「ご飯に行ったりはしますが、そんなにべったりというわけではなく、ほどよい距離感」を保ちつつ、先輩の俳優との交流も楽しんでいるという。「年上というのが楽しく、いろいろ学ぶこともあるし、経験値が違う」と目を輝かせ、「ものの見方とか、自分がその人たちと同じような年になったら同じようなことを思うんだろうなって言うことを聞きながら、そう思っています」と楽しそうに話す。
ジャンルを問わず、さまざまな役や作品に出演していることについて、「いろいろな役を演じてみたいというよりかは、は特定の色をあまりつけたくはない」と堀井さんは考えており、「いろんなことをやりたい。前は明るくて爽やかな役が合うといわれていたんですけれど、本当の自分はもっと腹黒いのに……とか思ってたりします(笑い)。意外と、ないものねだりというか、逆をやっていきたい」と今後の展望を語る。
そういった中で、今作の役だが「岩松さんは基本、当て書きするそうで、岩松さんと対談したとき、岩松さんが以前、僕をよく知っている方に、『堀井くんと次やるんだけど、どんな子?』って聞いたら、『あいつはバカですよ』と言っていたらしくて、だったら僕の脚本で頭のいい役にしようと思ったそうです」と堀井さんは笑い、気になる自身の印象を岩松さんに聞いたところ、「バカじゃないですよと言ってくれたので、ちょっとうれしかったです」と笑顔を浮かべる。
ドラマ「3人のパパ」では赤ちゃんと共演するなど、堀井さんは演技の幅をますます広げつつある。「面白いのが、めっちゃ素直なんです。お芝居のときに、こっちが聞いてほしいという思いを伝えて思いながら演じると真剣な顔をして、こっちが笑うと笑う。悲しい顔をすると悲しい顔になる」と赤ちゃんの素直さに堀井さんは驚き、パパ役を通じて、「最初可愛いなと思っていたのが、いとおしいに変わってきたタイミングがあって、父性はあるなと思いました」と自身の隠れた父性に気付いたという。
将来、どんな父親になりたいかを聞くと、「家族サービス、土日はどこかに連れて行ってあげられるお父さんになりたいです」と言い、「大きい公園でちょっと遊んで、奥さんがサンドウイッチかおにぎりかお弁当を作ってくれる。子供はシャボン玉を吹きながら、夫婦でそれ見てという。すごく憧れなんです」と照れくさそうな笑みを浮かべる。
今作の見どころについて、「男と女の対比。面白いほど、男が女にやられるんです。登場する男の人たちが、手の平で転がされているように、全員やられます」とアピールし、「一家心中をしてしまう家族のシーンから始まるので、そのシリアスな展開からそこにどう結びつくのか、思うけれど結びついている。男が女性に翻弄(ほんろう)されている姿をぜひ、見に来てほしい」とメッセージを送った。
<プロフィル>
1992年6月26日生まれ、東京都出身。2010年に「D☆DATE新メンバーオーディション」でグランプリを受賞し、「D-BOYS」と「D☆DATE」に加入。11年にドラマ「シマシマ」(TBS系)で俳優デビューして以降、ドラマや舞台、CM、バラエティーなどで活躍。15年には「ズタボロ」で映画初出演を果たす。主な出演作に14年のNHK連続テレビ小説「マッサン」、15年の「表参道高校合唱部!」(TBS系)、同じく15年の「下町ロケット」(TBS系)、NHK大河ドラマ「花燃ゆ」、映画「青空エール」(16年)などがある。現在、「3人のパパ」(TBS)に出演中。2018年のNHK大河ドラマ「西郷どん」への出演が決まっている。
(取材・文・撮影:遠藤政樹)
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