清野菜名:インタビュー(上) リリー・フランキーとのキスシーンでは…

映画「パーフェクト・レボリューション」に出演した清野菜名さん
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映画「パーフェクト・レボリューション」に出演した清野菜名さん

 女優の清野菜名さんが、精神に障害を抱えた風俗嬢に扮(ふん)し、車椅子生活を送る男性との愛を貫こうとする姿を描いた映画「パーフェクト・レボリューション」(松本准平監督)が、29日に公開された。台本を読んだときから「すでに演じる“ミツ”が頭の中で動き出していた」という清野さんに、印象に残る場面や相手役のリリー・フランキーさんについて聞いた。

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 ◇頭の中で「勝手に動き出した」ミツ

 映画「パーフェクト・レボリューション」は、幼いころに脳性まひを患い、以来車椅子生活を送る男性“クマ”と、幼いころのつらい体験から心に障害を持つ風俗嬢の“ミツ”が、周囲の偏見や差別を跳ね飛ばし、幸せになろうと突き進む姿を描くラブストーリーだ。脳性まひを抱えながら、講演やイベントなどさまざまな活動を通して障害者の性への理解を訴え続ける活動家・熊篠慶彦さんの実話が基になっており、熊篠さんの“分身”のクマを、イラストレーターや文筆家、俳優としても活躍するリリー・フランキーさんが演じている。

 普段、小説を読んでいてもなかなかページが進まず、「台本を読んでいても寝落ちしちゃったりすることがある」と苦笑いで告白する清野さん。しかし今回の台本は、「開いたら時間がたつのも忘れて、あっという間に読み終わっていました」というほど没頭できた。「読んでいるうちにどんどん興味が湧いていきました。それに、愛の表し方っていろいろだなあと思いました」と感想を語る。

 台本を読みながら、すでに「頭の中で勝手にミツが動き出していた」といい、特に悩むことなくすんなり役に入り込めたという。そんな体験が初めてなら、撮影に入る前、監督から手紙をもらったのも初めてで、「ミツの笑顔と清野さんの笑顔が合っていて、その明るさを出してほしいというお手紙を松本監督からいただいて、すごくうれしかったです」と顔をほころばせる。

 ◇引かれる男性のタイプは?

 講演会でクマの話を聞き、勇気を与えられたミツは、初対面にもかかわらずクマを「クマピー」と呼び、猛烈なアプローチを開始する。自分の感情に正直で、クマへの思いをストレートに表現するミツ。清野さん自身、ミツに対しては、「感情の表し方がはたから見るとめちゃくちゃだと思われるかもしれないけれど、自分の感情を素直に出せるところはいいなって思いました。大人になると、それはなかなか難しいことなので」と、共感と同時にうらやましさを覚えたようだ。

 また、クマに引かれたミツの心情を、「クマピーは障害を抱えていますけれど、自分の考えや、やりたいことをあきらめずに発信し、前向きに活動しています。ミツはそういうところに引かれたのではないでしょうか」と推し量り、清野さんもクマのような「自分の道を貫く人」に引かれると明かす。

 印象に残っているのは、終盤、クマと2人でダンスをするシーン。「あの撮影のときは、リリーさんと朝、会ったときから、すでに不思議な空気が流れていました。カメラは回っていないのにリリーさんを見た瞬間から泣きそうになって、リリーさんも、『俺も泣きそう』と言っていて、あの時間は忘れられないですね」としみじみ語る。

 ◇リリーと友達以上恋人未満の関係に…

 リリーさんと仕事をするのは今回が初めてだった。初対面にもかかわらずリリーさんは、「本当に裏表がないというか、すごく居心地がよかった」といい、「役を演じる上でも仲よくなりたいし、一番近い存在でいたいという思いもあって、自分から頑張って話し掛けました。そうしたら、いつの間にかすごく仲よくなっていて……」と撮影期間を振り返る清野さん。結果、撮影中は宿泊先のホテルのロビーで一緒に飲んだりするなど、「友達以上恋人未満みたいな感じ(笑い)」の関係にまでなり、お陰でキスシーンも、「お互い、クマピーとミツみたいな感じで特に緊張することなく」できたそうだ。ただ、「2人とも気にはしていて、同じガムを食べようということになって(笑い)」、同じ味のガムを食べて撮影に臨んだという。

 クマとミツの愛は、前途多難だ。しかし2人は立ちはだかる壁をぶち壊し、“完全なる革命”を成し遂げようとする。そんな2人の愛を、清野さんは「はたから見たら難しいというか、無謀だなって思いますけど、愛は理論じゃない、本当に愛が勝っているなということは、2人を見ていて思います」と共感を寄せる。そして、「大変なことでも、2人の愛があれば、何があっても乗り越えていけるのだと思いましたし、そうであってほしいと思いました。つまらないことにこだわったり、型にはまったりせず、自分たちがしたいように行動する。(愛には)人によってそれぞれ形はあるだろうし、関係性もあるだろうけれど、やっぱりこの2人みたいに愛が勝ってほしいし、(映画を)見ている人にもそう思ってほしいです」と力強く語った。

 <プロフィル>

せいの・なな 1994年10月14日生まれ、愛知県出身。2007年に雑誌「ピチレモン」の専属モデルとしてデビュー。2014年、園子温監督作「TOKYO TRIBE」でヒロインを演じ、第36回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞する。15年に公開された押井守監督作「東京無国籍少女」で初主演を務め、同作の演技で第4回ジャパンアクションアワードのベストアクション女優賞を獲得。17年は舞台、劇団☆新感線「髑髏城の七人」Season花 、映画「暗黒女子」、ドラマ「やすらぎの郷」などに出演。9月23日公開の「ユリゴコロ」にも出演しており、10月2日から放送のドラマ「トットちゃん!」では主人公の黒柳徹子を演じる。

 (インタビュー・文・撮影/りんたいこ)

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