ダンダダン
第7話「優しい世界へ」
11月14日(木)放送分
話題のアニメの魅力をクリエーターに聞く「アニメ質問状」。今回は、「月刊アフタヌーン」(講談社)で連載中の市川春子さんのマンガが原作のテレビアニメ「宝石の国」です。オレンジ制作部の和氣澄賢制作プロデューサーに作品の魅力を語ってもらいました。
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遠い遠い未来の話。そこに住んでいるのは、宝石の体を持った28人の者たち。彼らは宝石であるが故、死という概念を持たず存在し続ける。彼らを連れ去ろうとして、月から来る者たちがいる。なぜそんなことをするのかは分からないが、自身を守るために戦い続ける宝石たちの物語。
この作品の最大の魅力は、もし死という概念を持ちえなかったら、人は何を考え何を思うのか。それを大上段に構えずに、サラリとやってのけてしまっている、そんなところなのかなと思います。
マンガではデフォルメされた世界を、どう現実に即した形に落とし込み、空間としても把握しやすい状況、キャラクターとしても感情移入しやすい芝居を作れるかを最初の到達目標とし、コンセプトアートの西川洋一さんや、キャラクターデザインの西田亜沙子さんにその土台作りをお願いしました。
加えて、CGであるが故の利点を、カット内での芝居の付け方に見いだせないかと思い、それを生かすような作り方を模索しました。中でも最も効果的だったのは、ビデオコンテでのアフレコをした後にアニメーション作業に入ったことで、それによって役者の芝居を各アニメーターにフィードバックするような形で動きを付けることができました。そういった作り方から変えるクオリティーというものを、意識的に取り入れてきたことが今作の特徴だと思います。
今回の作品の最も大きなチャレンジはCGでキャラクターを作り上げるということで、そこにチャレンジできたこと自体が最もうれしく、最も大変だったことですね。まだまだ日本国内では作品自体の作り方が確立されていないCGアニメで、いかにクオリティーを上げ、監督の理想とする形にするかを考え、スタッフリングや制作工程を模索するのは大変でありながらも本当に楽しかったです。
あとは、原作自体が詩のように余白を含めて楽しむ作品であるからこそ、その余白の読み方を考えることも困難でした。分からない時には市川先生にお聞きし、そこに思いもよらない設定が隠されていた時には驚かされると共に、新たな原作の読み方を知れて、違った原作の楽しみ方ができるようになったのが印象的でした。原作では、小さなコマで表現されている箇所も、アニメとしての解釈でたっぷりと芝居させていたりもするので、ぜひそういったところも楽しんでいただければと思います。
原作「宝石の国」は本当に面白いお話で、かつ魅力的なキャラクターばかりです。市川先生から当初、言われたことが、この作品は“喪失ベースの物語”だということ。私自身、映画の醍醐味(だいごみ)は何かを失うことによって成長する、もしくは変化する人のドラマだと思っています。今作も、それらの要素満載な点も映画的です。今後の展開もそういったところが見どころになってくると思います。
加えて映像の方は、回を追うごとにアクションが激しく、かつキャラクターの表情も豊かになります。映像としても多くのチャレンジをしているので、自分の好きなキャラを見付けて楽しんでご覧いただければと思います。
今作を作る前に、私自身が最も大切にしていたことは、演出家がしっかりとディレクションできる作品作りを心掛けること。前社・スタジオ地図を出る際に、細田守監督に言われた一言から、そういった考え方に至りました。今後、作品を作っていく中でも、その作品にとって何が大切なことなのかを、あぐらをかくことなく真摯(しんし)に向き合っていきたいと思います。
オレンジ制作部 制作プロデューサー 和氣澄賢
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