アニメ質問状:「結城友奈は勇者である」第2期 勇者部と物語の結末に注目を

「結城友奈は勇者である-勇者の章-」のカット(C)2017 Project 2H
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「結城友奈は勇者である-勇者の章-」のカット(C)2017 Project 2H

 話題のアニメの魅力をクリエーターに聞く「アニメ質問状」。今回は「結城友奈は勇者である」の第2期となる「結城友奈は勇者である -鷲尾須美の章-/-勇者の章-」です。毎日放送(MBS)の前田俊博プロデューサーに作品の魅力を語ってもらいました。

ウナギノボリ

 --作品の概要と魅力は?

 「結城友奈は勇者である2-鷲尾須美の章-/-勇者の章-」は、2014年に放送された第1期「結城友奈は勇者である」のシリーズ作品となります。前半6話にあたる「鷲尾須美の章」は第1期の前日譚(たん)となります。今年の3月から7月にかけて2話ずつ劇場で先行上映し、この10月からテレビ放送となりました。後半6話にあたる「勇者の章」は第1期の続編となります。11月24日から第1話を放送しており、つい先日の金曜日に第3話を放送しました。同クールで2章仕立ての構造で放送するのはMBS・TBS系のアニメイズム史上初めての試みです。続編とイラストノベル「鷲尾須美は勇者である」両方の映像化を求めるファンの皆様の声にお応えするべくこの構造となりました。業界でも珍しい放送形式ではないでしょうか。

 ジャンルとしてはかれんな少女が変身して戦う、いわゆる「変身ヒロインモノ」になるのですが、この作品の場合、「日常の尊さを痛感する日常系アニメ」として認識された印象を持っています。日常系アニメを楽しむ視聴者にとってキャラクターの死ほど恐ろしいことはないと思いますが、変身ヒロインモノではキャラクターの死を期待している風潮がありました。(第1期放送当時、「誰が死ぬか」を予測する感想が多く見られたのを覚えています)が、それを逆転の発想で「決して死なない(死ねない)絶望」を描いたのが第1期。その「なぜ死なないシステムへ至ったのか」を描いたのが「鷲尾須美の章」。そして続編となる「勇者の章」は、このシリーズで尺を割いてたっぷり描いてきた日常そのものを揺るがすことを描いていきます。「勇者の章」第1話の消えた「東郷さん」がその一端です。

 --アニメにするときに心がけたことは?

 まず放送する際に心がけたことがあります。このシリーズの時系列は「鷲尾須美の章」、第1期、「勇者の章」の順となるので、「勇者の章」放送前に必ず第1期の総集編を放送しようと思っていました。それもただの総集編ではなく初めてこの作品を見る方に親切な作りであること、そして「勇者の章」への橋渡しとすべく主人公の友奈ではなく東郷さん視点のモノローグで第1期を振り返ることを心がけました。「鷲尾須美の章」から地続きで楽しめるのはもちろんですが、「勇者の章」第1話で消えた東郷さんへのひそかなフリの狙いもありました。

--作品を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったことは?

 「鷲尾須美の章」に関しては岸誠二さん(監督)、上江洲誠さんとタカヒロさん(シリーズ構成)が劇場パンフレットや20日発売の「鷲尾須美の章」ブルーレイボックスのブックレットなどで熱く語っておられるのでここでは「勇者の章」について語ります。

 やはり続編を制作する上での生みの苦しみというのは当然ありました。伏線や謎を回収しつつどういうドラマを展開すべきか、丁寧に議論していきました。この作品の場合、日常シーンをしっかり見せながら、その日常シーンの尊さを痛感するドラマにせねばなりません。第1期で我々が「新・日常系」というジャンルをうたった以上、やはりこれを視聴者の皆様は見たいはずだと思いました。

 じゃあ一体、どういう切り口でこの日常を揺るがすか。ところが主人公の友奈は完璧すぎる人間で、中学生とは思えないコミュニケーション能力を有しています。これこそが勇者たる資質でしょうが、そもそも友奈はくよくよ悩まないし、勇者部には「悩んだら相談」という鉄の掟(おきて)があります。性格の癖がすごい東郷さんなら破るのもまだ理解できますが、友奈はそうはいきません。だからこそ友奈のこの性格が弱点になるドラマにしようとなりました。本来は誰よりも「勇者部五箇条」という“コンプライアンス”を順守する友奈が、「勇者部五箇条」を否定するお話です。

--今後の見どころを教えてください。

 現在放送している「勇者の章」は勇者部が主人公となるお話です。いま、友奈がとんでもなく孤独な戦いを強いられていますが、他の勇者部員たちが友奈の異変に気付かないはずがありません。「悩んだら相談」がしたくてもできない状況下で、彼女たち勇者部の、そして「勇者の章」のたどり着く結末にぜひ注目してください。

--ファンへ一言お願いします。

 「鷲尾須美の章」では、後にテレビ放送があると告知しながら多くのファンの方に劇場に足を運んでくださいました。須美、三ノ輪銀、乃木園子の雄姿を映像化できたことは応援してくださったファンの皆様のおかげです。また、ミニシアターランキングで3部作連続1位という栄えある記録、劇場で限定販売したブルーレイが3部作で、各7000枚以上を突破したという愛ある記録、興行収入で3作目が1作目を超えるという珍しい記録、すべてファンの皆様のおかげです。この場を借りて厚くお礼申しあげます。

 我々スタッフも、結城友奈の声を担当する照井春佳さんをはじめキャストの皆様もこの作品にとても情熱を持っています。それはファンの皆様からの作品への愛情を感じれるからこそ、私たちもできる限りその気持ちに応えたいという思いで取り組めるのです。プロデューサーとしてこれほど冥利に尽きることはありません。来年3月4日に行われるスペシャルイベント「満開祭り3」では豪華なライブはもちろん、カオスなバラエティートーク、そしてお約束のダイジェスト朗読をご用意しておりますので、皆様とお会いできることを楽しみにしています。

 また、5月に発売の「勇者の章」ブルーレイボックスにはご好評いただいている特典ゲームがつきます。近いうちにこの特典ゲームを照井さんにプレーしていただく「特典ゲーム 照井春佳の反応(仮)」を企画しようと思っていますのでこちらもどうぞお楽しみに!

 引き続き「勇者の章」をテレビとアマゾンプライム・ビデオでぜひお楽しみください。

MBSプロデューサー 前田俊博

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