ブルゾンちえみ:声優初挑戦で「悔しくて仕方なかった」 上川隆也、山本耕史と映画「ジオストーム」吹き替え秘話

映画「ジオストーム」日本語吹き替え版で声優を務めている(左から)ブルゾンちえみさん、上川隆也さん、山本耕史さん
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映画「ジオストーム」日本語吹き替え版で声優を務めている(左から)ブルゾンちえみさん、上川隆也さん、山本耕史さん

 俳優の上川隆也さん、山本耕史さん、お笑い芸人のブルゾンちえみさんが日本語吹き替え版で声優を務めている映画「ジオストーム」(ディーン・デブリン監督)が19日から公開されている。上川さんは洋画の吹き替え声優は初めてで、ブルゾンさんは今作が声優初挑戦。日本語吹き替え版では、上川さんが主人公のジェイク・ローソン(ジェラルド・バトラーさん)、山本さんがジェイクの弟のマックス(ジム・スタージェスさん)、ブルゾンさんが女性シークレットサービス・エージェントのサラ(アビー・コーニッシュさん)の声を担当している。3人に、吹き替え版の声優を務めた感想や収録エピソードなどを聞いた。

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 ◇ブルゾンちえみ、“スーパーキャリアウーマン”役は……

 --上川さんは実写洋画の吹き替えが初挑戦。ブルゾンさんは声優が初挑戦でした。話を聞いたときの心境は?

 上川さん とてもうれしかったですけれど、役者さんがジェラルド・バトラーさんと聞いて、「これは生半(なまなか)ではないな」と思いました。僕とは体格から全く違うタイプの役者さんなので、普段しゃべっているトーンをそのまま持ち込めるかどうか、疑わしかった。だから現場に行くまで何も決めず、ディレクターさんとコミュニケーションしながら声色を作っていきました。これまでにいくつかの役柄を声で演じさせていただきましたが、そうした経験とは違ったアプローチが必要でしたね。

 ブルゾンさん オファーは本当にうれしかったです。映画を見ることが大好きなので、自分がその映画に携われる、一員になれる、とうれしくてうれしくて。でも、実際に自分がどんな声を出せるのかが分からなくて……。「やるしかない」という気持ちで演じたのですが、本当に難しくて。「うまくなりたい、ちゃんと100点をたたき出したい」という気持ちがめちゃめちゃあったので、悔しくて悔しくて仕方がなかったです。演出家の方が言われていることも頭では理解できるのに、どうすればこの体からその音が出るのか分からない。初めてだったのでワクワクしたけれど、めちゃめちゃ難しいお仕事でした。

 山本さん 声の仕事は、自分たちが普段やっている俳優業とは使う神経が違うんですよね。より繊細になれたり、初心に帰って素人になれる瞬間がある。人って、年を重ねれば重ねるほど、“先生”にはなるけど“生徒”にはなれなくなっていく。生徒に戻れる瞬間はあまりないので、貴重。そういう意味では、(今回は)素人になった気持ちを持てたので、刺激的な仕事でした。
 
 --ブルゾンさんは、作中では女性シークレットサービスとして、男性顔負けの銃さばきやカーチェイスを見せるスーパー・キャリアウーマンのサラの声を演じています。いつもの「キャリアウーマン」のネタが生きた部分は?

 ブルゾンさん 普段やっている「キャリアウーマン」の感じでは、全然通用しなかったんですよね。キャリアウーマン(のネタ)が、自分の顔と身ぶり手ぶりにどれだけ救われていたのかということがよく分かりました。声だけだと(役に)合わなかったんですよ。(サラ役は)もっと言い方を大人っぽく、声を低く、トーンを低くしないと。遠くの方に叫ぶ声を出そうと思うと、またトーンが高くなってしまって、「もっと低く」と言われたり……。何が正解か分からなくて、自分を見失いました。まだ自分が映画の中に入ってやった方が簡単なんじゃないかと思うぐらい、声だけって、声優さんって本当に難しいお仕事なんだなと痛感しました。演出家の方に、本当にゼロから教えてもらって。修業でしたね。

 --サラは、山本さん演じるマックスとは恋人役でもありました。

 ブルゾンさん 「その場の雰囲気に溶け込め―!」って思っていました。向こうはこれぐらい親密な感じで来てくれているから、私もこれぐらいの慣れ親しんだ声、出ろ! とか(笑い)。相手のことを好きだ!っていう気持ちでやりました。「好きな相手だったらこういうトーンかな」とか、リアルにリアルに、自分の中にある、「そういうことを言ったことある声、出ろ!」と。「今までの彼氏に私どんな声で言っていた?」と、自分の中にある経験を掘り起こしていました(笑い)。

 ◇師匠は林原めぐみ 上川「そこへ至れたら」

 --普段とは違う声の仕事をするときは、役にどう向き合っていくのでしょうか?

 上川さん 声優の山寺宏一さんや林原めぐみさんと友達としてお付き合いさせていただいていて、林原さんから聞いたお話で忘れられないのがあって。アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の中で、ファンの方に「あそこのシーンのあの絵、すごく良かったですね」と言われたけど、どんなに頭の中でそのシーンを再生しても、その絵がない、と。よく考えてみたら、(林原さん演じる)綾波レイの目で(碇)シンジ君しか見ていないので、頭の中にはシンジ君の絵しかない。お客さんはレイちゃんの顔もシンジ君の顔も見ているけど、林原さんの中にはシンジ君の顔しか残っていない。……理想はそれです! 僕が師匠と仰いでいる方でもあるので、そこへ至れたらな、と。今回でいうと、マックスと向き合っているときはマックスの顔しか記憶に残らない芝居ができたらな、と思いますが、遠く及びませんね(笑い)。

 山本さん 俳優業では、僕はなるべくせりふに抑揚をつけないように、オーバーにならないようにしているんです。でも声だけで参加したときは、自分が思っている以上の波をつけないと、ハマらない。全然違う作業なんだなと思いました。自分が普段ドラマではやらないことをやらないと。大声で叫んでいるときなどは、思ったよりも声に動きがなかったりするんですよ。声優さんって、声での表現力にすごくたけている人たちなんだなと思います。

 ブルゾンさん 「うまくできるかな?」という思いでやると、「うまくできるかな?」という声になるよと教わって。「怖っ!」って思いました。そんなに反映しちゃうんだ、と。だから「うまくできるかな?」を考えないように、サラがちょっとでも笑ったら自分も笑う、真剣な顔をしたら自分も真剣な顔をする……と、できるだけ寄り添って演じました。無心というか、この状況になじむんだ、と。それしかできなかったですね。(サラのように)人に指図することは、今までなんとなく(「With B」らとネタで)やったことがあるんですけど(笑い)。椅子から立ち上がる声とか、普段無意識でやっていることほど難しくて……普段どうやってその声を出しているか分からないんですよ。今回はそういうことも勉強になりました。

 映画は、全世界の天候を操る気象コントロール衛星の暴走が引き起こす「超異常気象」を描くディザスター・アクション。科学技術者のジェイクが仲間と共に地球の危機に立ち向かう……というストーリーだ。19日から公開中。

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