注目映画紹介:「リズと青い鳥」 「けいおん!」「聲の形」の山田尚子監督の新作 繊細な心の動きを丁寧に描く

劇場版アニメ「リズと青い鳥」の一場面(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
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劇場版アニメ「リズと青い鳥」の一場面(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 「映画 けいおん!」「映画 聲(こえ)の形」などの山田尚子さんが監督を務めた劇場版アニメ「リズと青い鳥」が21日、新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開される。吹奏楽がテーマのアニメ「響け!ユーフォニアム」に登場する鎧塚みぞれ、傘木希美という2人の高校生を中心とした物語で、繊細な心の動きを丁寧に描く。

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 武田綾乃さんの小説「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」(宝島社文庫)が原作。「響け!……」のテレビアニメ第2期では、北宇治高校吹奏楽部を一度退部した希美が再び入部したが、「リズと青い鳥」では、その後の2人の微妙な関係が描かれる。

 オーボエ担当のみぞれにとって、フルート担当の希美は数少ない友人で、強く執着する。しかし、徐々に関係が変化していくことになる。「リズと青い鳥」は、2人が出る最後のコンクールの自由曲のタイトルで、童話がモデル。オーボエとフルートが掛け合うパートがあり、2人は童話の物語と自分たちを重ねる。

 まず驚かされるのは「響け!……」と同じ京都アニメーションの製作ながらキャラクターデザインが大きく変更されたところだ。淡いタッチになり、キャラクターの造形がよりリアルになった。キャラクター同士の会話もリアルだ。独特の間があり、言葉を投げかけると、相手が考え、返事をする……というように、キャラクターのやり取りが丁寧に描かれている。会話がすれ違っているように見えるところもある。

 作品のイベントで、山田監督が「女の子の秘密をのぞき見している映画」と説明した通り、遠くからキャラクターのやり取りを見ているようだ。足音や息遣い、風の音など何気ない音が、大きく聞こえるところもある。映像、音などすべてが2人の心の動きのメタファーなのかもしれないと感じた。

 ストーリー自体は至ってシンプルで派手さもないが、あのシーンの意味は?などと考えさせられるところも多く、何度も見たくなる。「映画 けいおん!」「たまこラブストーリー」「映画 聲の形」とこれまでも山田監督の作品には驚かされてきたが、こんな表現もあったのか……とまた驚かされた。

 「響け!……」から引き続き、種崎敦美さんがみぞれ、東山奈央さんが希美の声優を務めるほか、本田望結さんが「リズと青い鳥」と同名の童話に登場するリズと青い髪をした不思議な少女の声を担当している。(小西鉄兵/MANTAN)

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