SPECIAL EDITED VERSION 『ONE PIECE』魚人島編
第8話 弱虫で泣き虫!人魚姫しらほし
12月22日(日)放送分
今期のアニメの特徴の一つが名作のリメークの多さだろう。「キャプテン翼」や「銀河英雄伝説」などと数あるリメーク作の中で、頭一つ抜けているのが5度目のリメークとなる「ゲゲゲの鬼太郎」。視聴率も1話からずっと5%超えと好調で、ネットでの評判も上々だ。今クールもすべてのアニメを毎話見ている“オタレント”の小新井涼さんが、生まれ変わった「ゲゲゲの鬼太郎」の魅力を分析する。
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春アニメを見ていると、今期はいわゆる“リメーク作品”がひときわ目立っている印象を受けます。「キャプテン翼」や「銀河英雄伝説 Die Neue These」「Cutie Honey Universe」といった名作がそろっていますが、どうやら大きなお友達の間で一番話題になっているのは「ゲゲゲの鬼太郎」のようです。発表当初は声優やキャラデザが大きく変更されたことに不安の声も上がっていましたが、放送されるやいなや「結構面白いぞ!」と早速SNSでトレンド入りするほどの盛り上がりを見せています。今期、数あるリメーク作品の中でも新しい「ゲゲゲの鬼太郎」がこれだけ好評な理由は何なのでしょうか。
作品を見て、真っ先に気になったのは、「ゲゲゲの鬼太郎ってこんなにアクション激しかったっけ!?」ということでした。悪い妖怪と戦う描写は昔からありましたが、今回の鬼太郎は指鉄砲やリモコン下駄を駆使した戦いが前番組の「ドラゴンボール超」を、身軽な動きと素手(というか爪)を使ったねこ娘の戦いは「プリキュア」での肉弾戦をどこか彷彿(ほうふつ)とさせる激しさなのです。作品が持つ不穏さにゾクゾクしていたはずなのになぜかそこではテンションが上がってわくわくしてしまうのは、そうしたアクションシーンにどことなく「ニチアサ感」を感じるからではないでしょうか。「怪奇事件の解決」という、下手すると地味になりかねない設定にもかかわらず、見ていて思わず熱く夢中になってしまうのは、今回のアクションシーンにそうした「ニチアサ感」が強く出ているからだと思います。
もうひとつ忘れてはならないのが、犬山まなちゃんとねこ娘というヒロインたちの存在です。犬山まなちゃんは、鬼太郎たちにただ守られるだけのヒロインではなく、彼らの力になりたいと自らも積極的に行動する勇敢な主人公タイプの女の子でした。そして外見からは第5期以上に「萌えキャラ」化するかと思われたねこ娘も、ツンデレ要素は持ちつつ「ねこ姉さん」として慕われるかっこいいお姉さんポジションだったのです。放送前には深夜アニメ寄りなキャラデザに賛否両論もあった2人ですが、単に可愛いだけじゃなく、実は熱くて芯の強い第6期独自の魅力を持ったヒロインたちだったため、放送後は「結局萌えキャラかよ」という否定的な意見も見かけないのだと思います。
2人の関係性が、第3期のユメコちゃんとねこ娘とのような“恋敵であり友人”というよりは、面倒見のいい先輩と可愛い後輩のような女の子同士の絆を感じさせるものであるのもポイントです。それによって“どっち派”ではなく、“どっちも(2人そろって)可愛い”と、人気が二極化せずにヒロインが2人して好評なのではないでしょうか。
こうしてみると、激しいアクションや熱いヒロインたちなど、今回の鬼太郎が好評なのは「萌えに走るのか!?」という当初の予想を裏切り、思いがけない「燃え」アニメであったことが理由のように思います。往年の名作でありながら不思議と古臭さを感じないのも、そういった一周回って新鮮な燃え要素が随所に盛り込まれているからではないでしょうか。
そして見ていて古臭さを感じないのには、加えて「ゲゲゲの鬼太郎」ならではの“時代適応力の高さ”も関係がありそうです。リメーク作品では昔の作品を現代に持ってくる都合上、どうしても時代錯誤な部分や違和感が出てきてしまうことがありますが、鬼太郎に関してはスマホやYouTuberがいる時代にいてもなぜかそうした違和感がなく、不思議としっくりきてしまうのです。
人間とは違う時間の流れにいて、どんなに時代が変わっても「いつも私たちのすぐ近くに潜んでいるんじゃないか」と思える「妖怪」という存在自体が、いつまでも色あせることのない魅力になっているのではないでしょうか。
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。
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