ダンダダン
第12話「呪いの家へレッツゴー」
12月19日(木)放送分
YouTubeなどでさまざまな動画を配信し、子供の憧れの職業にもなっているYouTuber。そんなYouTuber業界の台風の目になっているのが架空のキャラクターがYouTuberになる「バーチャルYouTuber(VTuber)」だ。200万を超える登録者がいる「キズナアイ」を筆頭に、新たなトレンドになりつつある一方で、一見親和性の高そうな人気アニメのキャラクターがVTuberデビューしてもあまり目立っていない印象だ。週に100本以上(再放送含む)のアニメを見ている“オタレント”の小新井涼さんがその違いと謎を分析する。
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近ごろますます話題の「VTuber」ことバーチャルYouTuber界隈(かいわい)に、最近アニメのキャラが参戦し始めているのをご存じでしょうか。今期だと「音楽少女」の山田木はなこが、前のクールでは「ウマ娘プリティーダービー」のゴールドシップや「3D彼女」の伊東悠人が、以前アニメ化もされた作品からはハッカドールたちやすーぱーそに子が続々とVTuberデビューを果たしています。
ところが、キズナアイや輝夜月といった生え抜きのVTuberの人気と比べると、アニメキャラのVTuberはまだ認知度もあまり高いとはいえず、VTuber効果でアニメの人気が爆発的に上がるといったことも特にみられないように思えます。生え抜きのVTuberが、今やYouTubeを飛び出してテレビにライブにと活躍の場を広げている一方で、アニメキャラのVTuber化がイマイチ盛り上がりに欠けてしまっているように思えるのは、一体なぜなのでしょうか。
真っ先に思い当たるのは、「配信動画がVTuberの王道に忠実だから」ということです。
アニメキャラのVTuberが配信している動画は、主にクイズやゲーム実況、人気アプリの紹介など、アニメのPRというよりも、生え抜きのVTuberたちも配信している、ある意味VTuber動画の流儀にのっとった王道ものがほとんどです。これは一見、そのアニメやキャラを知らないご新規さんでも動画が楽しめる強みのように思えます。ところが一方で、動画の内容がアニメ本編とあまりにもかけ離れてしまっているため、動画は普通に楽しめても、そこから作品を知らない人たちが、「じゃあアニメ本編も見てみよう!」という気持ちになるのはなかなか難しいとも思うのです。
それでなくとも、ただでさえ普段2、3分の動画を見慣れている生え抜きのVTuberファンに1話30分のアニメを12話みせるのは、かなりハードルが高いことだと思います。VTuber効果でアニメの人気が爆発的に上がるといった現象を感じられないのも、こうした理由から、元々作品を知らなかったVTuberファンの人々を、新たな作品ファンとしてうまく取り込めていないことが原因の一つではないでしょうか。
もう一つの理由としては、アニメキャラのVTuberファンと生え抜きのVTuberファンとの「スタンスの違い」が考えられます。
アニメキャラのVTuber動画をチェックする人の多くは、そもそもVTuber以前にそのキャラが出ているアニメのファンです。よってそのスタンスも、VTuberだけに夢中というよりは、作品関連のイベントやアニラジなどと同じ“ひとつの派生展開”をチェックするかのような、どちらかというと受動的な印象を受けます。
一方で、生え抜きのVTuberファンにとっては、推しのVTuberこそがいわばアニメでいう「本編」にあたるため、その情熱は何よりもそのVTuber自身に注がれることになります。そのため彼らからは、推しのVTuberを「俺たちが盛り上げて大きくする!」という、苦楽を共にし、一緒に成長を喜ぶという能動的な熱量が感じられるのです。
「作品の派生展開の一つとして、一部の作品ファンが楽しむアニメキャラのVTuber」と、「新しい展開があるたびに、ファンが積極的に盛り上げる生え抜きのVTuber」とでは、やはり後者の方が熱量も大きくなるのだと思います。アニメキャラのVTuberと生え抜きのVTuberとの盛り上がりの差は、こうしたファンの温度差にあるのではないでしょうか。
こうしてみると、アニメキャラのVTuberが、単体で生え抜きのVTuber人気と同じような盛り上がりを見せるのは、まだまだ難しそうに思えます。先日も「ONE PIECE」のルフィとウソップがVTuberデビューし、それぞれの声優さんがモーションまで演じたことが話題になりましたが、それすらも元々の原作人気があるからこそ話題になった、“いち派生”感はなかなか拭えません。
VTuberそのものの数も増え続け、生え抜きのVTuber界隈も戦国時代に突入しつつある今、アニメキャラのVTuberが生え抜きのVTuber以上の動画数や再生数、チャンネル登録数を得るには、そもそもアニメ放送中の1、2クールだけの展開では到底足りないのではないでしょうか。もしも今後、アニメキャラのVTuber効果でアニメの人気が爆発的に上がるほどのムーブメントを起こそうとするならば、それにはまず番組放送中だけでなく、番組放送開始前から放送終了後まで、より長期的にVTuber展開を仕掛ける必要があるように思います。
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。
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