放課後カルテ
第10話(最終話) これからも健康でいてほしい
12月21日(土)放送分
鈴木亮平さん主演のNHKの大河ドラマ「西郷(せご)どん」に、一橋(徳川)慶喜役で出演している松田翔太さん。通称・革命編に突入した第26回「西郷、京へ」(7月15日放送)での再登場以降、回を増すごとに主人公・吉之助(鈴木さん)と敵対し、今やすっかりヒール(悪役)が板に付いた感もある慶喜だが、松田さんの胸中は? 演じる上では「将軍になれる立場の人間の強がりが、悲しく見える方がいい」と、「うつむいたり、悲しそうであるとか、影があるような感じは、自分からはやらないようにしている」と明かす松田さんに話を聞いた。
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慶喜は言わずと知れた“徳川家最後の将軍”。父・斉昭が「我が最高傑作」と自慢するほど英明誉れ高く、井伊直弼と対立して「安政の大獄」で謹慎処分となるも、のちに復権。将軍・家茂の後見職を担い、幕政に参画すると、家茂の死後は大方の予想を覆して第15代将軍の座に就く……。
2008年放送の大河ドラマ「篤姫」では、第14代将軍の家茂を演じていた松田さんは「『今度は慶喜なのか』と不思議な感覚がありました。家茂をやっていたとき、慶喜がすごくプレッシャーをかけてきて、それが原因で家茂が亡くなったんじゃないかっていうくらい苦しい思いをしたので(笑い)、慶喜には嫌なイメージがありましたね。ただ今回は、家茂が亡くなったあとの世界をどう見られるのかという期待はありました」と振り返る。
松田さんによると「西郷どん」における慶喜は「完全に悪役」。「僕が事前にリサーチした慶喜像というのは、しっかりとした政治家、戦略家というイメージ。今回は感情的で、乱暴なお殿様というか(笑い)、すべて『慶喜のせいで』みたいなことになっている」と苦笑いを浮かべる。
将軍職に目もくれず、いなせな町人風を決め込んだ“ヒー様”は今は昔。最近は命令したり、怒鳴ったりと感情をあらわにすることも多い。せりふの最後につく「!」に「『これはどういう意味なのか?』と悩むこともありますが、大河ドラマのように長い間、役として生きている中では、筋にこだわりすぎると混乱してしまうこともあるので、そこ(筋)はこだわらず。分からない部分を逆に楽しもうって感じでやっています。ここで笑ってみてほしいと言われれば、思いっきり笑ってみたり。そうしたら自分はどういう気分になるのかって、期待を持って現場に来ている感じです」とどこまでも前向きだ。
慶喜が「ダークサイドに落ちた」と言われているのが第26回のラストだ。側近が自分の身代わりとなり何者かに殺されたことから、態度をひょう変。これまでさんざんこき下ろしてきた薩摩の国父・島津久光(青木崇高さん)への謝罪の言葉を口にすると、吉之助の手を取り、「お前の熱い心を俺にくれ。西郷、信じておるぞ」と“ダメ押し”したシーンは話題になった。
このときの松田さんの顔に張り付いた笑顔には、「ヒー様の笑顔、お面みたいやった」「ヒー様、不気味だ」「一橋のひょう変ぶりが気持ち悪い」など、視聴者から困惑する声が上がったが、慶喜のひょう変ぶりや二面性について「扮装が変わればイメージも変わるっていうのはあるので、逆に演技は変えなかったですね。でも、変わったように見えたんじゃないでしょうか」とにやり。さらに「裏がありますよって分かりやすくするよりも、本当のことを言っているのか分からないようにしていったほうが、逆に見る人が考えてくれるんじゃないかなと思いました」と狙いを明かす。
以降、ヒールとして物語を盛り上げてきた慶喜は、第34回「将軍慶喜」(9日放送)でタイトル通り、第15代将軍の座に就くと、“起死回生の策”として、倒幕派をあざ笑うかのように、ついに大政奉還を断行した。
「ヒールを演じるのは好きだし、どこか同情できるというか、ヒールに思いを寄せるのも好き」と話す松田さんは、「幕末のような新しいことが起きるときは、自分の正しさを信じたやつの勝ち。これは間違っているかもしれないと思うような人間は歴史に名が残らないし、ある意味、全員が正しい。善悪ではない」ときっぱり。その上で「慶喜は、ああだこうだいろいろと言われながら、80歳近くまで生きているから。生き延びることが正しいのなら、彼は正しかったってことになりますよね」と結論づけていた。
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