獣になれない私たち:なぜ視聴者モヤモヤ? ドラマPが語るリアルな大人の恋

連続ドラマ「獣になれない私たち」のポスタービジュアル=日本テレビ提供
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連続ドラマ「獣になれない私たち」のポスタービジュアル=日本テレビ提供

 女優の新垣結衣さんと俳優の松田龍平さんがダブル主演する連続ドラマ「獣になれない私たち」(日本テレビ系、水曜午後10時)。理想の女性を演じるために身を削って努力している30歳の晶(新垣さん)と33歳の世渡り上手の毒舌男・恒星(松田さん)が、本気でぶつかり傷つきながらも自分らしく踏み出す姿を描く大人の「ラブ(かもしれない)」ストーリーだ。ここまでは「かもしれない」が続き、恋も仕事もどこか八方塞がりな状況の晶同様に、視聴者もすっきりしない状態に。果たしてこのモヤモヤ感の正体は何なのか? 以前、今作を「『現実の大人たちのリアル』に徹底的にこだわって描く新しいラブコメディー」と語っていた松本京子プロデューサーに制作意図を聞いた。

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 ◇リアルな大人の恋=「現実って、そうはならない」

 「獣になれない私たち」は、ヒット作「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」(共にTBS系)などで知られる野木亜紀子さんによるオリジナルストーリー。晶は、身を削るような努力をしながら、誰からも好かれる“愛され女”を演じている。恒星は、世渡り上手で人当たりがよくモテる敏腕会計士だが、実は誰も信用せず、無防備に人を愛せる性質ではない。そんな2人がクラフトビールバー「5tap」で出会った。

 従来のラブストーリーは、出会い、進展、障害、ハッピーエンドがセオリーだが、今作はそうはならない。第2話で、呉羽(菊地凛子さん)から「恋に落ちた瞬間、鐘の音が聞こえる」といわれ、晶と恒星が教会に鐘の音を聞きに行くが、鐘は鳴らずじまいだったというシーンがあったが、このドラマをある意味、象徴している。

 「現実って、そうはならない」ことを描きたいという松本さん。「野木さんと『大人になればなるほど恋に落ちづらくないか』ということを話していました。野木さんが職種、年齢層が違う女性たちから『恋ができない』『恋ってどう始めるんだっけ』などと聞いていた」と明かし、「“誰かと誰かがくっついていくラブストーリー”ではなく、“ラブがしたいのにどうしたらいいんだ”っていうことをテーマにしたラブストーリーをやりたいと思いました」と制作のきっかけを語る。

 ◇「視聴者の皆さんが思う一歩は“一足飛び”の一歩」 だが現実は…

 なかなか2人の恋が進まないことに、視聴者はモヤモヤとしたイメージを持っているが、「5tap」で晶と恒星の席の距離が近づきつつあり、2人のやり取りもくだけた言葉に変化している。また、晶が恋人の京谷(田中圭さん)と、京谷の元彼女・朱里(黒木華さん)について本音をぶつけ合うシーンなど、決して登場人物の男女関係に変化や進展が全くないわけではない。

 ただ視聴者が考える“一歩”と制作陣が考える“一歩”には、微妙なズレがあるようだ。松本さんは「もしかしたら、視聴者の皆さんが思う一歩は“一足飛び”の一歩なのかもしれないです」と前置きした上で、「人生には3歩進んで2歩下がることもある。うまくいったり、いかなかったり、その一歩一歩がこだわりであり、リアルじゃないかと考えています」と強調する。

 また、松本さんは晶や恒星みたいなタイプを「ドラマの主人公になりづらい人たち」と分類。「そんな立場の人たちをドラマにしたいと思いました」といい、「晶のように悩んでいる人はたくさんいる。(晶のように)人生には『うまくいかない』『ままならない』時期が必ずあると思います。登場人物たちは、一足飛びにうまくできない。悩み、あがきながら、今の自分を変えたいと頑張っています。その姿が自分に重ねられるとか、励まされる……となってくれたらいいなって思います」と期待を寄せる。


 10月31日放送の第4話では、京谷と呉羽が一夜を共にしたことを知り、晶がパニックに。「バカになれたら楽なのに……」と願った晶だが結局“バカになれず”……。そんな晶と恒星が、どんな小さな一歩を踏み出していくのかに注目したい。第5話は7日午後10時から放送。

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