東京電力福島第1原発事故を追った、ジャーナリストの門田隆将さんによるノンフィクション「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」(角川文庫)が、俳優の佐藤浩市さん主演、渡辺謙さん共演で映画化されることが20日、分かった。タイトルは「Fukushima 50(フクシマフィフティ)」(2020年公開、若松節朗監督)。佐藤さんと渡辺さんの映画共演は「許されざる者」(13年)以来で、佐藤さんは福島第1原発1、2号機当直長の伊崎利夫、渡辺さんは福島第1原発所長の吉田昌郎を演じる。
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2011年3月11日に東日本大震災が発生。巨大津波に襲われた福島第1原発は、外部電源を喪失したことで原子炉の冷却が不可能となり、原子炉建屋が次々に水素爆発を起こす。メルトダウンの危機が迫る中、1、2号機当直長の伊崎は第一線で厳しい決断を迫られ、吉田所長は現場の指揮を執りつつ、現場の状況を把握していない本社とのやりとりに奔走。映画では、死を覚悟して現場に残り続けた約50人の作業員“Fukushima 50”が、未曽有の大事故と闘い続けた姿を描く。
「沈まぬ太陽」(09年)などの若松監督がメガホンをとり、NHKの大河ドラマ「軍師官兵衛」の前川洋一さんが脚本を担当。製作代表は角川歴彦さんが務める。佐藤さんと若松監督は「空母いぶき」(19年公開)に続いてタッグを組み、渡辺さんと若松監督は「沈まぬ太陽」以来のタッグとなった。
「Fukushima 50」は今年11月末にクランクイン、19年1月末にクランクアップ予定。
佐藤さん、渡辺さん、若松監督、角川製作代表のコメントは以下の通り。
忘れることで前に進む、失敗をしても何度もトライをする、それは生き物の中で人間だけができることです。しかし絶対に忘れてはいけない、繰り返してはいけないことがあります。あの日あの時どういう状況に我々が、日本があったのか? そのことを思い出し、明日の、そして後世のための映画を若松監督、渡辺謙さんたちと一緒に確認をしながら作りたいと思います。
「許されざる者」の撮影中、浩市くんに映画100本目の時はどんな役でも参加するよと、約束してました。でも、気軽に参加する作品ではありませんでした。今もなお苦しみの続く福島の方々の思いを受け止めながら「沈まぬ太陽」以来の若松監督、そして浩市くん、素晴らしいキャストと共に緊迫感あふれる画(え)を積み重ねていきたいと思っています。ご期待ください。
2011年3月11日から15日にかけての福島第1原発を襲った事故は国内だけではなく世界の人々をも震撼(しんかん)させた。穏やかな海は荒れ狂う大津波となって原子力発電所の命綱である全ての電源を奪ってしまった。この映画は家族や生まれ育った町や村を守るために命を賭して未曽有の危機に挑んだ人々の話です。あの時、現場にいた者しか知り得ない真実を描いていこうと思っています。スタッフ、キャスト一同全力で準備を進めています。たくさんの方に注目していただける映画になるよう、強い覚悟で臨みます。
東日本大震災から早くも7年あまりの歳月が過ぎ去ろうとしています。あの日あの時、多くの日本人が感じたのは大自然への畏怖(いふ)であり、大自然の力がどれだけ人間の想定を越えたものであるか、科学がいかに大自然の前でははかないものであるかを突きつけられました。製作を進める中で、さらにその思いを深くしております。しかし、たとえ人間の力が及ばないとしても、実際にその状況で最善を尽くした人たちがいたことを忘れてはならない、無名の人々が報道では知り得ない努力をしていたことを伝えるべきだと感じ、今回のドラマの中核に据えました。そこには映画ならではの感動があり、皆さんにご覧いただくと共に、日本人として誇りに思うべき彼らの姿を、尊敬の念を持って後世に残したいと考えております。生々しすぎるという声もありますが、それを乗り越えて世界に発信していかなければなりません。角川映画には「金環蝕」「金融腐食列島『呪縛』」「沈まぬ太陽」という社会問題をテーマとした作品を製作してきた伝統があります。来たる2020年、“復興五輪”と銘打たれた東京オリンピック・パラリンピックを控えたこの時期にこそ、今一度、震災の記憶と向き合い、復興への思いを新たにする作品を世に問う、それこそが映画人の使命であると考えております。
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