コードギアス:源流に「男はつらいよ」 「復活のルルーシュ」に躊躇も… 谷口悟朗監督に聞く

劇場版アニメ「コードギアス 復活のルルーシュ」のビジュアル (C)SUNRISE/PROJECT L-GEASS Character Design (C)2006-2018 CLAMP・ST
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劇場版アニメ「コードギアス 復活のルルーシュ」のビジュアル (C)SUNRISE/PROJECT L-GEASS Character Design (C)2006-2018 CLAMP・ST

 劇場版アニメ「コードギアス 復活のルルーシュ」(谷口悟朗監督)が9日公開される。一旦完結した「コードギアス」シリーズの後日譚(たん)を描く完全新作だ。テレビシリーズは情報量の多さも話題になったが、谷口監督は「情報の上にさらに情報を乗せていく“邪道”なやり方をしている」といい、ストーリーとして成立させる上で「山田洋次さんの『男はつらいよ』を見て学んだことがプラスになっている」と語る。作品作りのこだわりや新作について聞いた。

ウナギノボリ

 ◇新作を作る上で「躊躇はあったが…」

 「コードギアス」シリーズは、ギアスという特殊能力を得た少年ルルーシュが、全世界を覆す反逆の戦いに身を投じる姿を描いたアニメ。第1期「反逆のルルーシュ」が2006~07年、続編「反逆のルルーシュ R2」が08年に放送され、劇場版「亡国のアキト」も公開された。17年10月~18年5月には、テレビアニメの第1期と続編の全50話に新作カットを加えて再構成し、テレビシリーズと同じキャストで新たにアフレコした劇場版3部作が公開された。

 谷口監督は、新作に作るに至った経緯を「『コードギアス』はもともとテレビシリーズが始まる時点で、シリーズ化できるプロジェクトとしてオーダーを受けていました。プロジェクトを始めて10年ほどたち、次のステップへ行かなければいけないという時に『反逆のルルーシュ』後の世界を出していかざるを得ないだろうと。それは、ルルーシュという人間がなし得た後の世界を描くことなので、きちんと私と大河内一楼(テレビシリーズで谷口監督と共にストーリー原案を担当。新作では脚本を担当)の中で作っておかないといかんだろう、ということになりました」と話す。

 新作に先駆けてテレビシリーズを再構成した劇場版3部作を製作したのには「テレビ放送当時は見る機会がなかった人たちも見ることができるように」という思いがあり、「3部作の延長として新作の『復活のルルーシュ』を製作することになった」という。

 新作では、「ゼロレクイエム」と呼ばれる主人公ルルーシュが命を落とす形で完結した物語のその後が描かれる。「躊躇(ちゅうちょ)はなかったか」と聞くと、「ありますよ。ありますけど、これは最初に立ち上げた人間の責任だろうと。裏を返すと、テレビシリーズの段階できれいに完結することを優先してしまった私のミステークですよね。完結させないほうが、やりやすかったはず。ただ、テレビシリーズを否定する気はないですから」と語る。

 ◇「男はつらいよ」から学んだ作品作り

 「コードギアス」シリーズは、長きにわたりファンに愛されているコンテンツだ。谷口監督に人気の理由を聞くと、「全然分からないです。私が聞きたいぐらいです」と言いながらも、「他の作品と違う作り方をしている部分というと、コードギアスは情報の上にさらに情報を乗せていくというやり方をするということですかね」と語る。「普通お客さんに見せようとすると、情報はもう少し全体的に交通整理をして、余分なところは排除する形をとる。その真逆のやり方をしているので、邪道なんです」と話す。

 たしかに、コードギアスはストーリーも人間関係も複雑だが、それゆえに先が読めない展開が多くのファンを今もなお引きつけているように感じる。谷口監督は「ややもすると、とっちらかってしまって、何がなんだか分からなくなる危険性がある作り方なので、作る側としてあまり心臓によろしくないんです」と説明する。

 普通であれば、失敗も招きかねないやり方でも「コードギアス」が成功した理由はなんだったのか。谷口監督は「誰のお話なのかを、そらさないということじゃないでしょうか。往々にしてやりがちなのは、ゲストが主人公の映画になってしまうこと。そうさせないためには、作り手側が最初にかなり強く意識しておかないと難しい」といい、「そういう意味では、山田洋次さんの『男はつらいよ』を見て学んだことはプラスになってます」と明かす。

 谷口監督は「男はつらいよ」が大好きで何度も見ているという。「『男はつらいよ』は各編でマドンナが出てきて、そのマドンナに恋をする男が登場する。新しいキャラクターのほうが初めての物語をしょっているから、(作り手は)そっちを掘りたくなるわけです。そっちのほうが面白いから。ただ、山田洋次さんのすごいところは、最低限同情できるラインまで見せたら必ず寅次郎に戻るんです。そうすることで『これは誰の話なのか』ということを、ものすごく腰の入った粘り強いやり方でやられている」と説明する。さらに「作り手が主人公をどの程度理解して、気に入っているか」も大切だという。

 そういったこだわりは作品のタイトルにも反映される。「『スター・ウォーズ』はこのタイトルだから、ルークを見ていても、ハン・ソロを見ていても、チューバッカを見ていてもいい。やはりタイトルに帰結することが大事だと思います。『コードギアス』はタイトルにルルーシュの名前が入っている以上、ルルーシュに帰結せざるを得ないんです」と語る。

 ◇10年越しで一つの答えを出すことができた

 劇場版3部作、そして新作を作り終えた今、谷口監督は「最初にシリーズを立ち上げた時の『シリーズ化してほしい』という宿題に対してやっと10年越しで一つの答えを出すことができたかな。仕事が一つ終わったな」と感じている。また、新作を作る上で「各キャラクターを久々に動かすのは楽しくもあり、苦しくもありという感じでした」と振り返る。

 新作の見どころを聞くと、「ルルーシュは果たしてどのような形で出てくるのでしょうか」と、公式で「登場する」としか明かされていないルルーシュについて笑顔で触れつつ、「今の技術でできるところで部分的にブラッシュアップしていますので、画面効果を楽しみにしてくれるとありがたいですね。あとは、とにもかくにも劇場で見てほしいんです。ゲド・バッカというナイトメアフレームが登場するのですが、この砲塔の音は劇場でないと楽しめない。画面に映らない部分がどうなっているのかも音で表現している」とアピールした。

 待望の新作「コードギアス 復活のルルーシュ」。その全貌をスクリーンで見届けたい。

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