解説:アニメ「ダンダダン」 心をつかむ映像とドラマ 怪異の裏にある悲しみを希望に

「ダンダダン」の一場面(C)龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会
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「ダンダダン」の一場面(C)龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

 集英社のマンガ誌アプリ「少年ジャンプ+(プラス)」で連載中の龍幸伸さんの人気マンガが原作のテレビアニメ「ダンダダン」。第1期がMBS・TBS系の深夜アニメ枠「スーパーアニメイズムTURBO」で10~12月に放送された。怪異との迫力のバトルシーンなど独特の演出による映像美が話題になり、妖怪や宇宙人といった怪異たちの背景、過去も描かれ、大きな反響を呼んだ。第2期が2025年7月から放送されることも発表されている話題作「ダンダダン」の第1期を振り返ると共に、多くの人の心をつかむ魅力を解説する。

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 ◇原作の“密度感”をアニメで再現 新鋭・山代風我監督のこだわり

 「ダンダダン」は、2021年4月に「少年ジャンプ+」で連載を開始したオカルティックバトル&青春物語。霊媒師の家系の女子高生・モモ(綾瀬桃)と、モモの同級生でオカルトマニアのオカルン(高倉健)が、次々と現れる怪異に立ち向かう姿を描く。アニメを手掛けるのは、サイエンスSARU所属の山代風我監督。「犬王」「平家物語」「映像研には手を出すな!」などに参加し、「ダンダダン」で初めて監督を務めることになった。

 そもそも原作は、オカルト、青春、ラブコメ、バトルと多くの要素が盛り込まれている。山代監督に取材をした際、「ダンダダン」をアニメ化する上で大事にしたのは「原作の“密度感”をアニメで再現する」ことだと語っていた。そのため、作中に登場する妖怪や宇宙人を調べ尽くし、「アクロバティックさらさらは左手に自傷痕がある」「フラットウッズモンスターは霧を発する、浮く」といったさまざまな“小ネタ”をちりばめた。さらに、原作から円谷プロなどの特撮作品の影響も感じ、その要素も加えることで、「原作の特徴であるごった煮感、ごちゃごちゃ混ざっている印象」をアニメで表現しようとした。

 個性的なキャラクターたちの怒涛の会話劇などテンポの良さも魅力だ。山代監督は、収録では声優陣に「メリハリをつけて情緒不安定のような感じが欲しいです」とオーダーしていたといい、会話の速度も「通常のアニメより1.25倍くらいの速度感で掛け合いをしていただいています」と語っていた。一方、「内面に迫るような会話はゆっくり読んでもらって落差が生まれるようにしています」という。

 さまざまな要素をちりばめ、ギャップ(落差)とテンポ感により、原作の読後感、印象をアニメで再現しようとした。

 ◇神回「優しい世界へ」の衝撃

 序盤のセルポ星人、ターボババアとの遭遇、フラットウッズモンスターとの戦い、ターボババアとの壮絶な鬼ごっこなどからバトルアクションの印象を強めた同作のイメージをガラッと変えたのは、第7話「優しい世界へ」だろう。第7話では、怪異のアクロバティックさらさらの目も覆いたくなるような悲しい過去が描かれた。SNSでは「神回」と話題になり、自身のオーラでアイラの命を救ったアクさらの姿は、多くの視聴者の涙を誘った。

 序盤のターボババアとの鬼ごっこの後も、星子の口から「ババアが現れるのは決まって理不尽な死をとげた少女の霊がいる場所だった。成仏できない少女たちをなぐさめて回ってたのかもしれねえ」とターボババアの背景が語られた。

 「ダンダダン」は、さまざまな怪異が登場する中で、その背景、過去にも触れる。原作者の龍さんもインタビューで「やはり、妖怪ものは、昔の悲惨な出来事から作られる要素が多いので、もうちょっとエンタメ寄りにしたい、楽しい感じにしたいという思いはありました。いろいろな怪談を聞いていても、化け物や妖怪は、元々人間だったし、なりたくてなったわけじゃない。だから、悪者って感じじゃないんですよね。葛藤を抱えている人たちなんじゃないか、と考えています」と語っていた。

 龍さんは「やっぱり希望がないと悲しすぎるじゃないですか。とにかくエンターテインメントなので、読んだ人に絶対に希望というものをちゃんと見せて終わらせたいと思っています」とも話しており、作品の根底に流れる希望がアニメでも丁寧に表現されている。

 迫力のオカルティックバトルと人間、怪異の深いドラマが絶妙なバランスで“ごった煮”されているからこそ、「ダンダダン」は多くの人の心をつかんでいるのだろう。

 第1期終盤の宇宙人との戦いを経て、第2期では、モモ、オカルンたちが謎が潜むジジ(円城寺仁)の家で新たな脅威に立ち向かうことになる。第1期を振り返りつつ、第2期が放送される来年夏に備えたい。

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