ダンボ:ティム・バートン監督に聞く 現代で実写映画化した理由

映画「ダンボ」のPRのため来日したティム・バートン監督
1 / 11
映画「ダンボ」のPRのため来日したティム・バートン監督

 ディズニーの名作アニメーション「ダンボ」(1941年)を実写化した「ダンボ」(ティム・バートン監督)が全国で公開中だ。サーカス団に誕生したダンボは耳が大きすぎて笑いものにされるが、魔法の羽で空を飛ぶことによって、母のジャンボを助けに行く……という物語。「アリス・イン・ワンダーランド」(2010年)などの作品で知られるバートン監督が、巨大セットを組んで夢だったというテーマパーク「ドリームランド」を作り上げたことも話題になった。来日したバートン監督が映画に込めた思いや撮影について語った。

ウナギノボリ

 ◇ダンボは純粋なもの

 バートン監督は「今作はリメークではない」と言い切る。「なぜなら、あのアニメーション版はあの時代によかったとしても、現在にそのまま持ち込むことはいろいろな要素でできないところがあります。そこであの作品が持っている感覚、自分が好きだったハート、感情的な部分をとらえるようにしたいと思ったんです。今、世の中が非常に混沌としている、そういう時代だからこそ、ストレートな感情をとらえることができればと思いました、伝える感情として、とても単純でリアルなものを表現したいと思ったんです」と話す。

 映画化する際に気をつけたことは「ダンボは純粋なものであるということ。動物ですから可愛らしいところもありますが、だからといって、あまり擬人化しないようにと思いましたし、単純な感情を伝わりやすいようにと思ってやっと出来上がったのがこういうものだった。純真さというものを出しました」と語る。

 ◇監督の夢を実現した撮影

 今回のダンボはCGアニメーションで作り上げた。撮影では「今回は素晴らしい役者陣とセットがあったけれど、肝心の主人公がそこに存在しないという状況がありました。そこにいるふりをするというのは映画の現場では普通のことですが、主人公がいないところに、ゾウの動きを研究している役者さんがスーツを着て四つ足歩行でゾウのふりをしてくださったこともあれば、テニスボールであったりと、必要に応じて(ダンボを)表現し、役者陣はそれを想像力を使って演じるという、それが楽しい作業ではありました。実際のゾウは使っていません」という。

 バートン監督作の常連ともいえるダニー・デビートさんやマイケル・キートンさんらが出演している。「彼らが参加してくれたというのが私にとって重要なんですね。この作品は、奇妙な、機能していない家族というものを描いている。今回、20年ぶりくらいにマイケル・キートンと仕事ができて本当に素晴らしかった。ダニー・デビートとは三つサーカスの作品を作っているので、私は彼に『サーカス三部作はこれで終結』と言いました(笑い)。そのほかにもエバ・グリーンとの仕事もうれしかったですし、コリン・ファレルとは初めてでしたがずっと前から知っていたような役者でもあったので、本当に家族のような形で集まってくださって、素晴らしい作品、特別な作品になりました。彼らだからこそこういう作品が出来上がったと思います」と喜ぶ。

 豪華なテーマパーク「ドリームランド」の造形は「自分で自分の遊園地を作りたいという願いが私の中でいつもあったのですが、あれはちょっと自分のスタイルを表現しているんです」という。

 ◇サーカスは好きじゃなかった

 バートン監督といえば個性的なキャラクターを描くことで知られるが、本人も「だからこそこの作品を作ったという部分はあります。自分自身、ダンボというキャラクターがとても理解できたんです。なぜなら、周りから奇妙とか、他とは合わないとか。他の人から見ると欠点のように見えるかもしれないものも、そこを肯定的に見て、逆にそれが美しさになるということに、とてもインスピレーションを受けたからです」と話している。

 今作はサーカス団が舞台になっているが、監督自身のサーカスに対する思い入れは? 「私は子供のころからサーカスが好きではありませんでした。動物はとらわれの身だとか、ピエロがとても怖いものだと思っていたし、やっている芸も緊張感のある怖いものだと感じていました。ただよく使われるフレーズで『こんな家から逃げ出して自分はサーカスの一員になるんだ』というのがすごく好きで、居場所のない人、異形の者、ちゃんとした仕事のない人が集まって、サーカスで何かを成し遂げるという発想はとても魅力的だと思いました」と明かす。

 ◇みんな羽を持っている

 ダンボは魔法の羽によって大きな耳を使って空を飛ぶことができる。バートン監督はこの映画で「みんな羽を持っているということを表したかった」という。

 バートン監督にとって「魔法の羽」とは? 「私は絵を描くのが好きでしたが、納得いくものが描けなくて。もういいや、とにかく楽しもうと切り替えてやってみたところ、それが“羽”になる瞬間となりました。そこから自分の内側のどこかにあったんでしょうけれど、なぜか自信が湧き出てきて、これが契機となって魔法になった瞬間がありました」と自身のエピソードを明かし、「皆さんにも、何かがきっかけで羽ばたくことができるという瞬間が、いつか訪れると思います」とメッセージを送った。

写真を見る全 11 枚

映画 最新記事