前田敦子:AKB時代を上回る年月 女優としての評価は? 黒沢清監督らの証言で振り返る7年

黒沢清監督(左)の映画「旅のおわり世界のはじまり」で主演を務める前田敦子さん
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黒沢清監督(左)の映画「旅のおわり世界のはじまり」で主演を務める前田敦子さん

 日本とウズベキスタンの初の合作映画「旅のおわり世界のはじまり」(黒沢清監督、6月14日公開)で主演を務める前田敦子さん。2012年8月に「AKB48」を卒業し、本格的に女優としての道を歩みを始めてから今年の夏で丸7年と、その月日は、アイドルとして活動していた期間を上回ろうとしている。「旅のおわり世界のはじまり」が3度目のタッグとなる黒沢監督をはじめ、山下敦弘監督、大根仁監督らの証言と共に、“女優・前田敦子”としての約7年を振り返ってみた。

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 前田さんは、AKB48在籍時の07年に成海璃子さん主演の「あしたの私のつくり方」で、優等生からイジメられっ子に変わってしまった少女・日南子を演じ映画デビュー。11年には岩崎夏海さんによる同名小説を実写化した「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」で映画初主演を飾った前田さんが、女優として確かな一歩を踏み出したのは、AKB48卒業を間近に控えた12年7月に公開された「苦役列車」だ。

 「リンダ リンダ リンダ」(05年)、「天然コケッコー」(07年)で評価を得たあと、一時期、長編映画から離れていた山下監督が、「マイ・バック・ページ」(11年)に続いてメガホンをとった同作で、前田さんは、映画オリジナルのヒロイン・桜井康子を演じた。「モテキ」(11年)、「バクマン。」(15年)などで知られる大根監督が、この作品を見て「個人的には原田知世が登場した時のようなインパクトでした。つまりは映画女優の誕生」とSNSで絶賛した通り、少し変わったところのある康子という人物は、前田さんにとって当たり役となった。

 その後、前田さんと山下監督は「もらとりあむタマ子」(13年)でも再タッグ。同作で前田さんは実家で自堕落な日々を送る主人公・タマ子を演じたが、もともと短編だった企画が劇場公開作品という形になった理由を、山下監督は当時「答えは簡単。それは“あっちゃんが素晴らしかったから!”の一言に尽きる」と語っていて、前田さんに絶大な信頼を寄せていたことがうかがえる。

 翌14年には、前田さんの4枚目のシングル「セブンスコード」のミュージックビデオから派生した作品「Seventh Code」が公開され、黒沢監督は「周囲の何ものにも頼らず、たった一人でその場所に堂々と存在することのできる、日本ではめずらしいタイプの俳優」と前田さんを評価。その後も「散歩する侵略者」(17年)で前田さんを再起用し「彼女なくして日本映画もまた存在しえない、そんな時代がやってきたようです」と惜しみない賛辞を送っていた。

 ◇黒沢清監督「独特の強さと孤独感を表現できる」 「舟を編む」の石井裕也監督作ではJKに?  

 その後も染谷将太さんとの共演作「さよなら歌舞伎町」や、男を狂わせる裏の顔を持つヒロインを演じた「イニシエーション・ラブ」(共に15年)、大泉洋さんと松田龍平さんのコンビで贈る人気シリーズの第3弾「探偵はBARにいる3」(17年)、「食」と「性」をテーマに8人の女たちの等身大な日常を描いた「食べる女」(18年)など作品のタイプや規模にとらわれず、さまざまな映画に出演してきた。

 そんな前田さんの最新主演作となるのが「旅のおわり世界のはじまり」。ロシアのウラジオストクで撮影した「Seventh Code」を経て、「彼女の非凡な個性は、日本ではない異国の土地でよりいっそう鮮烈に輝くに違いない」と確信した黒沢監督が、言葉の通じない異国で不安や緊張を持ちながらも、自分の道を模索する主人公・葉子(前田さん)の繊細な心の移ろいを見事にすくい上げている。

 「フレームに映っただけで独特の強さと孤独感を表現できるすごい女優」と前田さんを評する黒沢監督は、今回前田さんが、ほぼ全編出ずっぱりという作品を作り上げた。他に目を向ければ「舟を編む」(13年)の石井裕也監督が、安藤ゆきさんの同名マンガを実写化した「町田くんの世界」(6月7日公開)では、なんと女子高生役を熱演している前田さん。今後もスクリーンでの活躍は続きそうだ。

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