マンガ質問状:「青の島とねこ一匹」 「ぱすてる」作者の新作 読者が気持ちよくなれることを集める

小林俊彦さんのマンガ「青の島とねこ一匹」のコミックス第1巻
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小林俊彦さんのマンガ「青の島とねこ一匹」のコミックス第1巻

 話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は「ぱすてる」などで知られる小林俊彦さんの「青の島とねこ一匹」です。秋田書店の「ヤングチャンピオン」編集部の重兼嘉夫さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 --この作品の魅力は?

 瀬戸内海の小さな島で、都会を離れて女子高生がネコと同居生活するお話です。島のおいしいご飯や、都会で感じることのなかった時間の流れ、人の優しさに触れて毎日を生きて、ゆっくりとした豊かな気持ちになれる「島ライフマンガ」です。

 「ぱすてる」を描いた小林俊彦先生が少年誌では描けなかった世界を、青年マンガで挑戦しています。

 --作品が生まれたきっかけは?

 「ヤングチャンピオン烈」というお色気作品が多い媒体の中で、読者が読みたくなるポイントを探そうと模索しました。そんな中で、「読者が気持ちよくなれること」を集めていこうと、キーワードを探していったのがきっかけです。

 ・波の音が聞こえる場所で気持ちよく昼寝する。

 ・ネコが可愛くて懐いてくれる。

 ・女子高生が懸命に頑張っている。

 ・湯気が立つできたてのご飯がおいしい。

 ・ゆっくりとした時間の流れを感じられる島時間

 読んだ方がその島に行った気分、つまり疑似体験できる。そういうマンガにしようと始まりました。舞台は広島県出身の小林俊彦先生が、瀬戸内の小さな島を選びました。「ぱすてる」の舞台もその近くの尾道なので、「ぱすてる」を好きな読者の方にも愛してもらいたいと思っています。

 --編集の際、苦労した点、面白かったエピソードを教えてください。

 実際に現地に行って取材を重ねました。滞在して気づいたのは、こちらが思っているようなよいことばかりではないということでした。まさに地方の抱える過疎化などの問題だったり、生活レベルや老後へのさまざまな不安などがそこにはありました。

 一方で、瀬戸内海の島を盛り上げるための文化事業の懸命さ。海賊のお話や戦時中のお話、伝統行事など、魅力的なエピソードの豊富さ。そして人々の生活は、手をとりあった美しい共同体のそれでした。島の方から聞いて印象的だったのは、「乳製品と肉以外は全て交換なので買う必要がない」というお話。島外に出て行ってしまう島民が多い中で、その島に住み続けたいと思う主人公像は、そういう島民愛からできています。ちなみに作中によく出てくるのは岩城島の灯台周辺です。

  --今後の展開は?

 主人公の青が日々成長する10代の生き生きとした姿を描いていこうとお話ししています。3万匹に1匹といわれるオスの三毛猫・ミケのエピソードは人気があるので、もっと増やしていきたいと思います。

 そして、意外な別作品の人気キャラクターも今後、登場します。名字を見ていると気づく方もいるかもしれません。

 --読者へ一言お願いします。

 瀬戸内海の小さな島。きっと読み終わる頃にはそんな、風吹き抜ける島に住んでいるような爽快感をお届けします!

 ヤングチャンピオン編集部 重兼嘉夫

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