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河森正治EXPO:マクロス変形機構の秘密 幻の企画も 膨大な資料から見える独創性

アニメ
「マクロス」シリーズなどで知られる河森正治監督

 人気アニメ「マクロス」シリーズなどで知られる河森正治監督のプロデビュー40周年記念の展覧会「河森正治EXPO」が東京ドームシティ(東京都文京区)内のGallery AaMo(ギャラリー アーモ)で6月23日まで開催されている。河森監督の代名詞、変形ロボットのデザイン画のほか、ストーリー構成、企画書など約1300点の資料を展示。約40年間、独創的な作品を作り続けてきた監督の制作の裏側が明かされる。展示量があまりにも膨大で、貴重な資料を見逃してしまう人もいるかもしれない。河森監督の言葉を交えつつ、EXPOの見どころを紹介する。

 ◇21歳の「マクロス」メモ 「ダイアクロン」も

 河森監督の年表コーナーを見ると、その仕事量に驚かされるはずだ。約40年にわたってほぼ途切れることなくさまざまな作品、プロジェクトに関わり続け、同時期に最多で17本もの作品に参加したこともあったという。河森監督と言えば「マクロス」「アクエリオン」シリーズが有名だが、数々の作品を手がけ、挑戦し続けてきたことが分かる。

 1960年生まれの監督は、1979年放送のテレビアニメ「闘将ダイモス」のゲストメカデザインでプロデビューした。同時期に「トランスフォーマー」の起源になったとも言われるタカラ(現タカラトミー)の変形ロボット「ダイアクロン」シリーズのデザインも担当した。EXPOでも「ダイアクロン」のデザイン画が展示されている。

 監督の名を世に知らしめたのが1982~83年に放送された「マクロス」シリーズの第1作「超時空要塞マクロス」だ。企画に参加した当時は21歳の大学生。「とにかくやりたい!」という強い思いがあり、企画を出したり、イメージボードやデザイン画などを描きまくったという。EXPOでは、変形ロボット・バルキリーの伝説になった変形機構が生まれたラフ画、初期のストーリー構成も公開され、「マクロス」誕生の裏側を知ることができる。

 ◇呼吸をするように生まれる変形機構

 初監督作品(石黒昇さんと共同監督)となった1984年公開の劇場版アニメ「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」の資料は、テレビアニメ版と比較すると、描き込みの細かいことに気付く。「劇場の大きな画面で見せるためにどこまで描き込むのか? を考えていました。そもそも絵を描き始めたのが、ほかの人に比べて遅かったんです。仕事をする中で描くことに慣れていったところもあります」と振り返る。21歳だった若者がテレビアニメの経験を経て、成長していったことがうかがえる。

 河森監督と言えば数々の変形ロボットの複雑な変形機構を発明してきたことで知られる。バルキリーなどの変形機構を考える際に制作したペーパーモデルやレゴブロックも展示されている。変形機構について「参考にしているものはないんです。小2くらいから変形機構を考えていたので、呼吸をするようにできるんです。何から何に変形させると画期的になるのか? それを考えるのが難しいんです」と話す。

 ◇富野由悠季監督との幻の企画や「カウボーイビバップ」没デザインも

 「創聖のアクエリオン」のロボット・アクエリオンの特徴的な頭部が、いくつものラフを経て、デザインが固まっていくプロセスも見ることができる。

 「ガンダム」シリーズで知られる富野由悠季監督と制作予定だった「アステロイドワン」、玩具の試作品も作ったが、お蔵入りとなった「パラレルロード」など幻の企画の資料もお披露目。「カウボーイビバップ」のソードフィッシュIIなど没になったデザイン案など貴重な資料もある。「いろいろな作品を企画しているのですが、企画が全て通るものではなくて……」とも話す。ただ、没になった企画、デザインがほかの作品で生かされることもあるという。

 ◇旅の経験がアイデアに

 監督の作品は独創的だ。「他の人が作ったアニメや映画の影響を極力受けたくない」といい、常にこれまでにないもの、新しい作品に挑戦してきた。アイデアの源の一つになっているのが、世界中を旅した経験。「映像や写真で世界各地の風景に触れることもできます。ただ、映像や写真だけを参考にしたものをオリジナルと言えるのだろうか? 直接体験をベースにしたいので、どんなに忙しくてもなるべく時間を作って旅をしています」と語る。

 例えば、2002~04年に発売されたOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)の「マクロス ゼロ」で神としてあがめられている巨大な鳥の人は、タイの洞窟で見た壁画を参考にした。宮沢賢治の半生を描いた「イーハトーブ幻想~KENjIの春」は、宮沢賢治の出身地・岩手県花巻市を何度も訪れるなど徹底的に取材した。ロボットアニメのイメージが強い河森監督のキャリアの中では異色の作品で「自分にとって大切な作品」という。

 EXPOでは、中国、ネパール、インド、欧州など世界各地の旅の写真も展示されているが、これまで撮影した写真のほんの一部に過ぎない。「河森正治 旅の写真展」などという企画もあれば、見てみたいものだ。

 ◇「マクロスF」の音楽発注メモも

 EXPO会場には天井に届くほどの高さにまで大量の資料が展示されている。デザイン画を中心とした絵が目立つため、ストーリー構成、企画書などが展示されていることを見逃しがちかもしれない。中でも貴重なのが「マクロスF」で音楽を担当した菅野よう子さんへの発注メモだ。手書きメモで「具体的に曲のイメージを細かく書くこともあれば、もっとざっくりしたものもあります」といい、名曲の誕生過程を確認できる。

 「マクロスプラス」の企画書、「超時空要塞マクロス」のストーリー構成、「マクロスΔ(デルタ)」のキャラクターの裏設定なども至るところに展示されている。デザイン画に比べると派手さはないが、これらも貴重な資料だ。熟読すれば、河森監督の思考の一部を垣間見ることができるだろう。

 以前、監督に取材した際、「デザインマインドを大切にしている」と話していた。演出、脚本などにもデザインの技法が取り入れられているという。展示されているストーリー構成、メモなどを読み、ロジカルに思考を組み立てつつ、時に大胆に発想を飛躍させる「デザインマインド」を感じてみると、より展示を楽しめるはずだ。

 ◇学生時代に美樹本晴彦、細野不二彦と描いたマンガ

 同級生の美樹本晴彦さん、細野不二彦さんと学生時代、「機動戦士ガンダム」放送前に描いたパワードスーツが登場する合作マンガなど、歴史的資料はまだまだある。今後のプロジェクトに関する展示もある。「誰も見たことがない作品を作っていきたい」と語る河森監督。その創作意欲は尽きることがない。

 EXPO開催にあたり、監督は作品資料を大量に発掘したといい、展示されているのはほんの一部に過ぎない。第2、3弾……とEXPOが続き、まだ世に出ていない大量の資料が公開されることにも期待したい。

 「河森正治EXPO」は午前10時~午後8時(17日・月曜日は午後7時まで)に開催。前売り券は1800円、当日券は2000円。

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