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ヴィンランド・サガ×ゴールデンカムイ:幸村誠、野田サトル対談 第2回 共通点はおっさん!? 誕生秘話も

アニメ マンガ
「ヴィンランド・サガ」のコミックス第22巻(左)と「ゴールデンカムイ」のコミックス第18巻

 「月刊アフタヌーン」(講談社)で連載中の幸村誠さんのマンガ「ヴィンランド・サガ」と「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載中の野田サトルさんのマンガ「ゴールデンカムイ」。前者は7月にテレビアニメがスタートし、後者はテレビアニメ第3期の制作が発表されるなど共に人気作だ。バイキングの生き様を描く前者、明治時代末期の北海道を舞台にした金塊をめぐるサバイバルやアイヌ文化を描く後者は珍しいテーマを扱っているという共通点もある。互いの作品をリスペクトし合っているという幸村さんと野田さんの対談が実現。第2回は、それぞれの作品の誕生秘話に迫る。幸村さんは「暴力を描きたかった」と明かし、野田さんは……。

 ◇暴力、人の生き死を描く

 --「ゴールデンカムイ」と「ヴィンランド・サガ」との共通点を感じるところはありますか?

 幸村さん どうでしょう……。ありますか? あるといいなと思いますが。人がいっぱい死ぬことと、寒い地方が主な舞台だということかしら。あと……何かありますか?

 野田さん おっさんが格好いい。色気があります。毛深くてもゴツくて格好いいおっさんをもっとください。

 --「ヴィンランド・サガ」のテーマを選んだ理由、きっかけを教えてください。

 幸村さん 暴力を描きたかったのです。ある日なぜか描く必要があると感じました。暴力が日常的で文化に染み込んでいる、そんな世界観が物語を乗せる上で必要でした。それで。……必要必要って。こういうトコだよもう。遊び! 余裕! 大事! こういうやつなんですよ、僕は。しょうがないなあ。

 野田さん 僕も人の生き死を描きたかったです。警察が機能してない明治時代の北海道の山の中ですから、殺人行為なんてバレにくい。そんなところで生きるにはやはりそれぞれの宗教が大事な役割をしていたわけで「ウィンランド・サガ」でもそれぞれの宗教がしっかりと出ていますよね。ヴァイキングは戦って死ねば彼らの信じるヴァルハラに行けるので暴力が肯定されるため、殺人行為に罪悪感がない。あの時代、あの土地に生まれなくて心底良かったです。

 --「ゴールデンカムイ」のテーマを選んだきっかけは?

 野田さん 担当の大熊(八甲)さんが狩猟モノの小説を送ってくださって、とても面白かったんです。次回作を考えていて自分の曽祖父が北海道の第七師団所属で出征した日露戦争を書こうかと考えていたので、それをくっつけようと。そこからいろいろな北海道にまつわる面白いものを探して、肉付けしていきました。入れ墨が宝のありかになっているというネタはいろいろな作品でやられている。ということは、大した発想ではないんですね。特定の作品をオマージュにしたわけでもありませんし。でも「入れ墨が正中線で切り返してあるのは解体するように剥げという意味がある」という発想は、僕が狩猟を取材したおかげで思い付くことができたと思います。大したことのない発想を一手間加えることができました。取材って大事だって話ですね。「ヴィンランド・サガ」2巻のおまけマンガでアイスランドの取材されていましたよね。やはり民具にも注目しました。ソリのデザインとか農具のディティールも……。野営する時に鍋をつるすアーチ状のものとか。ああ、取材されたんだろうな、こういうの良いなと思って読みました。やっぱり現地へ行って気付くことってたくさんあると思います。最近ですと、僕は取材に樺太島と大陸のハバロフスクの方まで行ったんですけど、樺太アイヌとニヴフ民族とウイルタ民族の「違いと共通点」を明確に認識できて描くことができました。樺太アイヌとウイルタのソリの違いとかほとんどの読者は見ていないようなとこだと思うんですけど。分かってくれるとうれしいんです。

 ◇アイヌの要素を描くからにはしっかり描く

--「ヴィンランド・サガ」「ゴールデンカムイ」は共にこれまであまりマンガになっていないテーマを描いています。幸村さんは描く上で大変なことはありますか?

 幸村さん アシスタントさんと世界観のビジュアルイメージを共有することがちょっと大変です。今のスタッフとは長いので、もう慣れていて、みんな頑張ってくれています。「ゴールデンカムイ」でもご苦労なさっていると想像しますが、現代の日本以外の舞台を描くのはやはり大変だと思います。「ここにアイヌコタンを描いてください」と言ってもどんな家なのか、何が置いてあるのか。資料があってさえ、やすやすとは描けないと思います。だからウチには飛び込みのアシスタントさんはいません。1日2日の飛び込みではあまり仕事になりません。

 野田さん 確かに「ヴィンランド・サガ」は特殊な背景なのに画面の隅々に幸村先生の意識が行き届いている感じですね。アシスタントさんが描いているであろうものにきちんとキャラとのタッチが合っているので、とても統一感がある。「ゴールデンカムイ」は週刊連載なので作画カロリーを減らして、いかに合理的にやるか常に考えますので、作品全体の絵のバランスを統一させるのは難しいです。でも月刊スケジュールでも「ヴィンランド・サガ」みたいに、描き込めるかって言ったら絶対無理なんですけど。幸村先生の画力はもちろんとして、さらにアシスタントさん方とすごく濃密に関係を保って仕事されているんだろうなと感じます。

 --「ゴールデンカムイ」も大変そうですが……。

 野田さん 大多数の読者が知らないことを描くので、見向きもされない危険性があるということですね。前作はアイスホッケーマンガだったんですけど、人気がなくて……。例えばRPGとか戦国時代とかのテーマを描けばそれだけ受け入れる読者層も大きい。だからといって娯楽と割り切ってファンタジーを描きたいわけじゃない。デタラメなものを描けばその分野に精通してる方からツッコミがきますんで。「ヴィンランド・サガ」も歴史や民俗学を調べながら大変な思いで描かれているんだろうなと。「ゴールデンカムイ」もアイヌ、ウイルタ、ニヴフそれぞれの分野において日本国内で第一人者というすごい方たちに意見を伺いながら描いてます。たとえばニヴフの丸木舟を調べて描いた時、監修の方から「この舟は東海岸のもので西海岸は板張りの舟です」とツッコミをいただいて単行本で直したり。アイヌのことに関しては繊細なテーマなので、当初はこの作品で出すこと自体やめようという声もありましたが、そこは担当さんが戦ってくれました。アイヌの要素を描くからにはしっかり描こうと。いまも常に気を付けて描いてます。僕は和人なんで、その狭間(はざま)で常に中立で居続けようと努力してます。そんな具合にとにかく大変です。いかに谷垣源次郎を裸にするかチャンスをうかがっている作者と思われてますけど。

 ◇とにかく現地へ行ってみて感じることが大切

 野田さん 取材で大変だったこともあればお聞かせ願いたいです。北の荒涼とした土地が好きなんでアイスランドとか。北ヨーロッパの方にも行ってみたいです。

 幸村さん とにかく現地へ行ってみて感じることが大切だと思い、ヨーロッパ各国へ取材に出かけましたが、取材対象の国が多く、ノルウェー、デンマーク、アイスランド、フランス、イギリスとあちこち飛ばねばならないのがなかなか骨でした。お金もかかりましたし。もうじきカナダにも飛ばねばなりません。なんでもっと近い国のお話にしなかったんだ……と、少し後悔しております(笑い)。なるべくリアルな資料もほしいので原寸大の模型を作ったりもするのですが、その制作でスケジュールが圧迫されたりもします。取材、大変ですよね。「ゴールデンカムイ」がどうして週刊であんなにも調査の行き届いた仕事ができているのか、魔法としか思えません。本当にお疲れ様です!

 --「ヴィンランド・サガ」は7月にテレビアニメがスタートしました。アニメに期待していることを教えてください。

 幸村さん アニメは既に完成した第4話までを視聴しております。もう、もう「作るの大変だったでしょうね!」という、なんだか得も言われぬ申し訳なさでいっぱいです(笑い)。既に期待をはるかに上回っていますので、あとはもう僕からは、制作スタッフの皆さんが無理をしてお体を壊さないよう祈るのみです。

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