ムロツヨシ:古田新太が評価した「“笑われる”という才能」 ビンタシーンにも透ける美学

古田新太さんのとダブル主演ドラマ「Iターン」について語ったムロツヨシさん
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古田新太さんのとダブル主演ドラマ「Iターン」について語ったムロツヨシさん

 「まさか自分が、20年前、古田新太の舞台を見ていた自分が、20年後、(古田さんと)ダブル主演するなんて思っていないですから」。テレビ東京のドラマ「I(アイ)ターン」(金曜深夜0時12分)で、古田さんとともにダブル主演を務める俳優のムロツヨシさん(43)。劇中では、古田さんからムロさんへのビンタシーンが登場するが、これは古田さんから「唯一褒められた」という才能がいかされたという。そんなムロさんに、古田さんとのエピソードや役者業への思いを聞いた。

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 ◇「20年前、古田新太の舞台を見ていた自分が…」

 19歳から演劇をやっているムロさんにとって、古田さんは「すごく大きい先輩」「怖い先輩」「厳しい先輩」という印象で、「一緒に舞台に立つことなんて、一緒にお芝居することなんてない……という人」だった。

 「20年ぐらい前の自分は、バイトしかない。目の前に何もなかった。かたや古田さんは、大きい劇場で自分の劇団を持ちつつ、バリバリやっていて。『俺は間に合わないのかな』と思っていたりしたのに、その人とこういう形(ダブル主演)で共演できるというのは想像もしなかったです」としみじみと振り返る。

 そんな“雲の上の存在”ともいえる古田さんが、数年前、ムロさんが出演する舞台「モンティ・パイソンのスパマロット」を観劇。古田さんは、ムロさんが共演者の皆川猿時さんから殴られるシーンを見て「笑っていた」といい、「ムロはいくらいじめられる役をやってもお客さんに笑われるというすごくいい才能を持っています」と、ムロさんを評価してくれたという。

 「古田さんって、普段全然褒めないんですけど」と話すムロさんだが、「『普通あんなに年上の男が年下のお前を殴っていたら痛々しくて笑えないはずなのにお前は笑える。お前は殴られて笑われる、その才能はあるな』と。唯一褒められたのがそこでした」と明かす。

 ◇“ビンタシーン”を自ら志願 「面白くなってもらえれば」

 劇中には、古田さんから、「パーン」と音が鳴るほど激しいビンタをされるシーンも。内田英治監督も「レベルの高いビンタシーン」と表現するほどの激しさだが、「(古田さんは)プロですから、そんなに痛くなかったんですよ」と話す。古田さんがムロさんを殴るシーンは自ら「結構“入れて”ください」と監督にお願いしたといい、「古田さんに殴られる狛江・ムロが、僕が視聴者だったら見たいと思ったので、思いっきりいってくださいと(古田さんに)お伝えしました。そこでみんなが面白くなってもらえればいいなと」とこだわりを明かす。そこには「面白さ」にひたむきなムロさんの美学も垣間見える。

 ◇「ほめられることを目標にしない」

 役者という仕事を「楽しい」と話すムロさんは、「いろんなことを言われる職業でもある」と話す。そんな中、「あえて“ほめられる”ということを目標とするのではなく、自分の中で“これをやろう”と思ったことをやれるかどうかだと思う」と持論を語る。「ほめられるようにやっていい評価をされても、自分にとって全然プラスにならないと思う」からだ。

 原作には、人生を「一冊の本」に例える場面が登場する。ムロさんに“これから登場してほしいページ”を聞いてみた。「どんな困難というか、目の前に何が起きても、しっかりそれを受け止め、笑いに変えられるか。笑い声に変えられるか、もしくはプラスに変えられるか、は試したいので、どんなページが来てもしっかり読み込める自分でいたいなと思いますね」。

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 ムロさんは、1976年1月23日生まれ、神奈川県出身。19歳で役者を志し、入学したばかりの東京理科大学を中退し、役者の養成所に。99年に上演した独り舞台で俳優としての活動をスタートさせた。本広克行監督の「サマータイムマシン・ブルース」(2005年)で映画初出演を果たすと、その後、福田雄一監督の映画「大洗にも星はふるなり」(09年)に出演するなど、徐々に頭角を現してきた。08年から自身が作・演出・出演した舞台「muro式」を定期的に上演。映画やドラマ、CMなどで活躍している。

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