刈谷仁美さん:「なつぞら」で話題の若手アニメーターの“横顔” 先輩たちの「1本の線」に感銘

NHK連続テレビ小説「なつぞら」台本表紙絵 (C)ササユリ・NHK
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NHK連続テレビ小説「なつぞら」台本表紙絵 (C)ササユリ・NHK

 女優の広瀬すずさん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「なつぞら」。全編アニメーションで描かれたオープニングのタイトルバックの監督・原画・キャラクターデザインを手掛けているのが、1996年生まれの若手アニメーター・刈谷仁美さんだ。劇中アニメの絵コンテ、原画、動画なども担当。日本のアニメの草創期に生まれた名作たちを彷彿(ほうふつ)させる絵柄で多くの視聴者を喜ばせている。果たして、刈谷さんはどんなアニメーターなのだろうか? その“横顔”に迫った。

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 ◇昔の絵から感じた「独特の品の良さ」

 刈谷さんは2017年、専門学校在学中に短編アニメ「漫画から出てきちゃった話」を制作。同作品でインター・カレッジ・アニメーション・フェスティバル観客賞3位、その後、第6回新人アニメーター大賞受賞、東京アニメアワードフェスティバル2019でアニメオブザイヤー部門個人賞受賞。今回の「なつぞら」では題字も描いている。

 刈谷さんを抜てきしたのが、かつてはスタジオジブリに在籍し、「なつぞら」ではタイトルバックのプロデュースほか、多くのドラマに携わっている舘野仁美さん。「ほとんど勘、直感だった。ほかにもたくさん絵が上手で若いアニメーターを知っているんですけど、最初から彼女以外考えられなかった」と振り返る。

 一方、刈谷さんは「実際に描いてみますと、やはり『その時代の絵柄』という壁を感じました。昔の時代の絵にどう自分が寄り添えるのか、そことの折り合いで、いろいろと苦労はしたかなとは思います」と告白する。

 「当時のアニメーターの画集を見てまねしてみたりとか、絵の雰囲気をつかむために練習はしました」と明かす刈谷さん。「私自身、今の絵柄がどういったものなのか、必ずしも理解しているわけではないんですけど、昔の絵には独特の品の良さがある。柔らかくて、シンプルで、でも立体感がある。その印象を、当時活躍されていた方々の画集から受けまして。シンプルなんですけど、すごく洗練されている。たくさん描いてきた中で、見付けることができた1本の線なんだろうなっていうのも感じました」と話している。

 ◇アニメーターを目指そうと思ったきっかけは…

 そもそも刈谷さんはどんなアニメーターなのだろうか? 東京・西荻窪のササユリカフェで開催されていた初の個展「かりや展」では、刈谷さんが学生時代に描いたというイラストを多数紹介。中には、高橋留美子さんの人気マンガが原作のアニメ「うる星やつら」「らんま1/2」のキャラクターイラストもあった。

 「アニメーターを目指そうと思ったのは高校生の時。たまたま金曜ロードショーでやっていた(スタジオジブリの)『魔女の宅急便』を目にしたのがきっかけ」と話す刈谷さん。最初に惹(ひ)かれたのは、アニメの動きうんぬんではなく、ジブリ作品のイラスト的な色味で、「色使いが独特で、色が鮮やかなんですけど、すごく上品。絵の具で塗ったセル画の、あの独特の雰囲気に興味を引かれて、そこから昔に見ていたアニメを見返すようなって、徐々に動きにも興味が出てきたんです」と明かす。

 次に惹かれたのは「個性の強いキャラクターが、テンポ良くアニメーションの世界で動き回り、見ていて楽しいなって思える作品」といい、「高橋留美子さんの作品にも通じる部分で、『うる星やつら』や『らんま1/2』は個人的に大好きです」と笑う。

 半年ほど前まで、クラウドファンディングで成り立っている新人アニメーターの寮で暮らしていたという刈谷さんは、「『なつぞら』を見て、アニメーターに興味を持ってもらえるのは、個人的にうれしいんですけど、その半面、今のアニメ業界は新人が食べていけないという問題がある」と明かす。その上で、「業界に興味を持ってもらえる人がこれから出てくる中で、待遇の改善に多少なりとも力になれたらな」と語った。

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