かぐや様は告らせたい:原作者・赤坂アカが思う“最強のマンガ家”とは? 実写映画の平野紫耀&橋本環奈のキャスティングは…

映画「かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~」の原作者で原作・映画に登場する「ペンタン」の着ぐるみ姿の赤坂アカさん
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映画「かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~」の原作者で原作・映画に登場する「ペンタン」の着ぐるみ姿の赤坂アカさん

 人気グループ「King & Prince」の平野紫耀さんが主演する映画「かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~」(河合勇人監督)が9月6日から公開される。映画は秀才が集う秀知院学園を舞台に、人気グループ「King & Prince」の平野紫耀さん演じる白銀と女優の橋本環奈さん演じる四宮かぐやの“恋愛頭脳戦”を描いた作品だ。実写映画化は「信じていなかった」と明かす原作者の赤坂さんに、映画化への思いとともに、原作が生まれた背景や、発想のもとなどマンガの制作秘話を聞いた。

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 ◇実写映画化は「信じていなかった」

 「かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~」は、マンガ誌「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載中の赤坂さんの人気ラブコメマンガが原作。プライドが高く「自分から告白したら負け」と互いに考えている生徒会長の白銀と副会長のかぐやが、いかに相手に告白させるかに知略を巡らせる姿を描く。今年1~3月にはテレビアニメも放送された。映画では生徒会会計の石上優役で佐野勇斗さん、かぐやから恋愛相談を聞かされる柏木渚役で池間夏海さん、生徒会書記の藤原千花役で浅川梨奈さん、かぐやを支える近侍・早坂愛役で堀田真由さんらも出演する。

 実写映画化の話を聞き、「最初はうそ、うそ、と信じていなかった」と赤坂さん。当時アニメ化は決定していたものの、実写化はにわかに信じがたい話だったという。だが話は進み、主演が「King & Prince」の平野さん、かぐや役を橋本さんという豪華な顔ぶれと知らされた。「『またまた、できもしない約束を』と思ったんですが、撮影の日が決まったと伝えられ、『ん? 本当にやるの?』と。最初は信じていなかったので、大ごとになってきて焦りました」と当時を振り返る。

 ただ、実は平野さん、橋本さんのキャスティングは思い描いていた通りでもあったという。赤坂さんは「主人公とヒロインの比重が大きい作品なので、この2人は『お可愛い人』を選んでください、と言わせていただきました。もともと『できれば平野くんとか橋本環奈ちゃんとかでやりたいですね』と言っていたので、予定がブレていないんです(笑い)」という。「平野くんの印象は、面白い子だな、と。橋本さんは、利発で賢いし、可愛いし、最強じゃん、と思っていました。もともと2人の好感度は高かったんです。平野くんの名前は作中にも出していましたし、僕としては言うことないです」と語る。

 オリジナル要素もあるが、原作でもおなじみのエピソードが多く盛り込まれており、もちろんかぐやの決めぜりふ「お可愛いこと」も健在だ。「あれはおのおので言い方に特徴が出る。橋本さんの『お可愛いこと』は、橋本さんの特徴が出た、橋本さんにしかできない『お可愛いこと』だったなと思います」と感想を明かす。完成した今作については「ちゃんと笑える作品になっていてよかったな、と。クスリとも笑えないというのなら謝りますけど、笑えるから大丈夫です」と太鼓判を押す。

 ◇読者の反応は“誘導”できる ヒットの要因は…

 原作の「かぐや様は告らせたい」は、生徒会室を主な舞台にした、白銀とかぐやの告白を巡る攻防が基本路線だ。シンプルだが、毎回そこに異なる状況や思惑が入ることでさまざまな展開が繰り広げられている。アイデアのもとは、どのように生まれるのか。赤坂さんは「誰かしらが焦っている、という特徴があるんです」と説明する。「どういう焦りなのか、毎回、微妙に種類が違うんです。たとえば、インタビューが終わった後にICレコーダーが壊れたら焦りますよね。インタビューを聞いていた2人が『とりあえずどういう話をしていたか書いてみよう』とやっても、『言っていることが食い違っているじゃん!』となると、焦る。それで1本、18ページいけるんです。“焦り”というのは作りやすいテーマではありますね」と発想のもとを明かす。

 作品が生まれたのも、「焦り」や「マイナスの感情」を笑いに変える、という発想からだ。「人間の悪感情を笑いにできるんじゃないか、と。悪いことをしている人がしっぺ返しをくらうと面白かったりもしますし、悪意って、角度を変えれば笑いになる。人間の持っている悪感情を描くことは、視点を変えればコメディーになる。『この男を思い通りに操作してやるわ』という悪感情も『どうしてうまくいかないの!?』となれば、笑いになります。今はそれを描いている最中なのかなと思います」と赤坂さんは話す。

 そんな同作がアニメ化、実写映画化され、累計発行部数は800万部を数える大ヒットに。赤坂さんは「『かぐや様』という作品は、ラブコメと打っていますが、恋愛をテーマにして“いじっている”作品なんです。そういうところは、ちょっと新しかったのかなと思います」とヒットの要因を分析する。「あと基本的に、ギャグマンガって売れないんです。そうした中で、伏線を張るなどして『これはギャグマンガじゃない』と思わせる努力をしたことが一つにはあるのかな、と。ギャグなのにバリバリ伏線を張りまくっている作品なんです」と続ける。

 ちなみに、影響を受けた作品は「今日から俺は!!」でも知られる西森博之さんのマンガ「天使な小生意気」だという。深夜アニメにハマるきっかけにもなった作品で、その面白さに「どっぷりハマった」とか。赤坂さんは「ロジカルな部分は、西森作品から影響を受けていると思います。こんなにせりふが多くてもいいんだ、と」と明かす。

 そんな赤坂さんが描くのは、「あくまで自分のやりたいこと」。自分の中の読者像に向けて描いてはいるが、読者の意見が作品に影響を及ぼすことはない。赤坂さんは「読者がどう思うかは、こちらが誘導できるんです」と断言する。

 「例えば、AちゃんとBちゃんがいて、普通に描いていたら人気が二分されるはずですが、Bちゃんに人気を集中させることも可能なんです。キャラクターの好き嫌いや、読者の『こういうふうになってほしい』という感情も誘導できる。その誘導する力が、“演出”と呼ばれるものなのだと思います。究極は、読者の感想を一つにしたい。みんなが同じ感想しか言わないぐらい統一させたい。自分が思い描いている通りの反応が返ってくるように描ける人が“最強のマンガ家”だと思います」と理想のマンガ家像を語る。

 今後は「青春のすべてを描きたい」と赤坂さん。「一つの学生生活を描きたい、という気持ちでやっているのかなと思います。このマンガも、青春を送れなかった人にとっての代用品になるような作品でありたい。ちゃんと青春を描きたいですね」と語った。

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