名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
2019年7月に公開された、劇場版アニメ「君の名は。」で知られる新海誠監督の最新作「天気の子」。天候の調和が狂っていく時代に、東京にやってきた家出少年、帆高と不思議な力を持つ少女、陽菜が運命に翻弄(ほんろう)されながらも自らの生き方を「選択」するという物語で、興行収入140億5000万円を突破するなど大ヒット。5月27日にはブルーレイディスク(BD)とDVDが発売されることも決定している。公開から半年近くが経過し、「今作るべき映画を作ることができてよかった」と心境を明かす新海監督に、改めて「天気の子」に込めた思いや制作秘話、気になる次回作などについて聞いた。
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「天気の子」は興行収入140億円を超える大ヒットを記録。公開から半年近くが経過し、1月18日に行われた新海監督による講演会「『天気の子』-物語の起点-」(公式サイトhttps://youtu.be/kIKhS9BBBU4で一部映像公開中)の後、「作るべき映画を作ることができた、と思えるようになりました」と新海監督は胸中を明かす。「“正しくない物語”を作りたいという気持ちが強かったんです。世界を救わない物語を作りたい、と。ただ、正しくないゆえに、ちゃんと楽しんで見ていただけるかという不安はぬぐい切れなかったんですが、振り返ってみれば、賛否両論の部分も含めて楽しんでもらえたんじゃないかという手応えがあります」と晴れやかな表情で語る。
前作「君の名は。」の大ヒットを経た上での「天気の子」。世界が少しずつ狂っていき、日常が壊れ、非日常が日常になる。主人公は大切な人を思うあまり、時に法を外れた行動も取る。こうした内容を新海監督は「正しくない物語」「見ようによっては反社会的な物語だと見られる要素も含んだ作品」と表現し、「君の名は。」の成功があったからこそ作ることができた作品だったと振り返る。
「『君の名は。』がなければ、こういう内容の映画を作ろうとは思わなかったと思います。『君の名は。』で今までとはケタの違う数の観客と出会うことができて『この映画が好きだ』とたくさんの人に言ってもらえた。この観客の“ベース”があれば、少し大胆なことができるんじゃないかと思ったんです」と新海監督。「『君の名は。』があって『天気の子』ができた。この逆はあり得なかったと思います」と語る。
「君の名は。」の大ヒットは観客のベースを作ったと同時に、自身がやりたいことの“輪郭”も教えてくれた、という。前作は社会現象となるほどの大ヒット作ゆえネガティブな感想も多かったというが、新海監督は受けた批判を一つ一つ改善していくような方向とは逆に舵(かじ)を切った。「逆にもっと批判されるような映画を作りたいと思い切ることができたんです。帆高が社会からちょっとずつ外れていってしまう話で、道徳的ではない。見ようによっては反社会的な物語だと見られる要素も含んだ作品。でも『自分がやりたいのはこっちなんだ』と思い切ることができたのは『君の名は。』で受けた批判があったからこそです。批判は、痛みはあるんですが、同時にやりたいことの輪郭を教えてくれるんです」と語る。
新海監督は、「君の名は。」を制作したときのことを「自分たちにバトンが回ってきた、という感覚が本当に強かったんです」と回顧する。それは「天気の子」を作り始めたときも同様だったというが、今は「バトンってなんだっけ、という気持ちです」と笑う。
「あのとき思っていたバトンは、40代前半のころだけに感じることができた何かだったような気がしています。あのころはチャレンジャーで、それが『天気の子』までつながっていったような気分だったのですが……。『君の名は。』を作り始めたころから6年ぐらいたち、立場や見られ方、期待のされ方も変わってくる。そうすると『今が自分たちの順番なんじゃないか』という気持ちはどうでもよくなり、考えなくなりました。今は、どうやって面白いと思ってもらえる作品を作るべきか、作品作りの本質の部分しか気にならなくなってきました。見られ方や自分自身のポジショニングから興味が外れてきたのかもしれないですね」
そんな新海監督に、今だからいえる制作エピソードを聞いてみると、それは小栗旬さんが声優を務めた須賀圭介のキャスティングだったという。「実はすごく難航していたんですよね。ギリギリまで決まっていなかったんです。すごく大事なキャラクターなので、誰に背負ってもらえるんだろうと……結果的に小栗さんと巡り会えたんですが、本当にギリギリで。小栗さんに会えて良かったです。会えなかったらどうなっていたか……」と苦笑いで打ち明ける。
5月に満を持してBDとDVDも発売される。BDのコレクターズ・エディションでは、新海監督が「作品の最終的な設計図」というビデオコンテも収められる。「ビデオコンテには、監督としてできることのすべてを詰め込んでいるつもりです。絵や音楽の設計図であり、役者さんのお芝居の設計図のつもりでもある。ビデオコンテを作りさえすれば、仕事の大半はクリアできたような気がするんです」と新海監督。
また、フリーアナウンサーの有働由美子さんとの対談映像も収録されており、「もっと高い可能性を込められたんじゃないかと反省している部分もあるんです。本来のターゲットとは少し外れる年代の人にももっと楽しんでほしかったし、できることはもっとあったんじゃないか、と……。その話を有働さんに聞いてもらっています(笑い)」と語る。
「君の名は。」に続いて「天気の子」も大ヒットした今、気になるのはやはり次回作の構想だ。新海監督は今、どのような新たな物語を構想しているのか。最後に尋ねてみると、「考えていることはあって、方向性も『なんとなくこっちかな』とぼんやりとは思っているんですけど、まだとても言えないです。今は焦っていますね」と話す。
「君の名は。」は2016年8月に公開され、その約3年後に「天気の子」が公開された。となると、次回作も3年後の公開に期待がかかるが……。「3年に1本ぐらいのペースで公開できれば、観客も見放さずについてきてくれるかな、と思うんですが(笑い)。3年後にできるかは、ちょっとまだ分からないです。頑張りたいと思います」と率直な思いを語った。
BDコレクターズ・エディション(4K Ultra HD Blu-ray入り5枚組み初回生産限定)は1万2000円(税抜き、以下同)。BDスタンダード・エディションは4800円、 DVDスタンダード・エディションは3800円。
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