橋本愛:“怒り”で主人公に共感 主演ドラマ「パレートの誤算」で「自分の思想に近いものがあった」

WOWOW連続ドラマ「連続ドラマW パレートの誤算 ~ケースワーカー殺人事件」で主演を務める橋本愛さん
1 / 5
WOWOW連続ドラマ「連続ドラマW パレートの誤算 ~ケースワーカー殺人事件」で主演を務める橋本愛さん

 女優の橋本愛さんが主演を務めるWOWOWの「連続ドラマW パレートの誤算 ~ケースワーカー殺人事件」が3月7日から放送される。ドラマは1人のケースワーカーが福祉や市政、医療を取り巻く闇に巻き込まれていく姿を描くヒューマンミステリー。橋本さんは市役所の嘱託職員で、先輩ケースワーカーの死をきっかけに事件に巻き込まれる牧野聡美を演じる。橋本さんに同作や演じる主人公への思いを聞いた。

ウナギノボリ

 ◇主人公との共通点は“怒り”

 ドラマは、映画「孤狼の血」などで知られる柚月裕子さんの社会派ミステリー「パレートの誤算」(祥伝社文庫)が原作。市役所の福祉課に勤める新人嘱託職員・聡美はある日、生活保護利用者と向き合うケースワーカーの仕事を命じられる。不安を抱く聡美をベテランの山川(和田正人さん)が励ますが、後日、山川はアパートの火災後に他殺体で発見される。周囲では山川が何らかの不正に関わっていたのではないかという疑念が膨らみ、聡美は生活保護を巡るさまざまな人生模様に巻き込まれていく……というストーリー。

 生活保護利用者と直接向き合うケースワーカーを演じる橋本さん。生活保護については「もともと不勉強で何も知らなくて、親近感がなかった」と言うが、撮影を重ね、ミステリーとして謎を追いつつ制度の実態も知っていき「事件の真相と同様に日本という国の闇や課題と自然と向き合っている自分がいて、すごくいい作品だなと思いました」と語る。

 劇中では、組織で大部分の利益をもたらしている2割の人間を外すと、残りの8割の中から2割の人間が新たに利益を生み始めるという「パレートの法則」が重要な意味を持って語られる。橋本さん自身、かつて「2:8の法則」と名付けて同じようなことを考えていたといい、「高校生のとき、基本的に全部『2:8』になると思ったんです。そもそも日本列島自体が東京とそのほかの地域で何か質量的に『2:8』くらいになるんじゃないかと思って、そこから考えると、大体の事象に応用できるな、と。そう思えたら、すごく楽になったんです。一つの指標になった、というか」と話す。

 「企画書を読んだ時、『2:8』という割合についての言及があって……。そのとき『えっ』と思って。自分の思想とすごく近いものがあったので、これはすごいぞ、やるべきだな、と思いました」と当時驚いたことを振り返り、「私は8割の人間だった。でも2割に憧れて、死に物狂いで移動した。その経験から、込められるものがあるかもしれないと思いました」と胸中を明かす。
 
 演じる聡美は、不安を抱えながらも生活保護利用者と向き合い、事件の真相に踏み込んでいく。橋本さんは、そんな聡美について「同じくらいの年齢なのに切り込んでいく力があって尊敬しますし、演じながら、自分もこんなふうに人と向かい合えたら、と思うことはたくさんありました」と敬意を表す。

 聡美と自身とは“怒り”を持っている点で重なるといい、「生きる上で一番原動力になる、物事を動かす力は“怒り”という感情だと思う。それを聡美はちゃんと持っているし、私自身も持ちながら生きているから、その部分は遠くない、重なる部分かなと思いますね」と共通点を語る橋本さん。「私、怒らないんですよ。まったく人に対して怒らないんです。けれど、怒りは持っていて。普通に生きていて『なんで?』と思うことはいっぱいあるし……口が悪くなるんで、あまり言わないですけど(笑い)」と冗談めかしつつ思いを明かす。

 ◇今は「すごく楽しいし、ありがたい」

 聡美は、人気グループ「NEWS」の増田貴久さん演じる同僚・小野寺淳一と共に行動するシーンが多い。橋本さんは、演技について2人の間に決めごとは一切なかったといい、「小野寺さんと聡美は、シーンによって心の距離感がすごく変わるんです。小野寺さんは最初は自分より経験値の高い先輩で、徐々に同志になっていき、その後、距離が生まれてしまって。他の方とはあまり動かない距離が、小野寺さんとだけは“ギュインギュイン”と動くから、面白いですね。2人の関係は面白いと思います」と語る。

 今作ではケースワーカーを演じ、昨年10~12月に放送された連続ドラマ「同期のサクラ」では建設会社で働く女性役を演じた。社会人役が増えていることについて、橋本さんは「単に年齢(現在24歳)だと思うんですが」と笑いつつ、「最近は、自分の時間もパワーも、意義のあることに使えているという実感がある。すごく楽しいし、ありがたいなと思います」と充実ぶりを明かす。
 
 今作がWOWOWの連続ドラマ初主演となった橋本さん。昨年は「同期のサクラ」のほか、NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」などにも出演し、活躍の幅を広げている。今後は、どのような挑戦を見せてくれるのか。「今までにやりたくてもやれなかったことの貯蓄がいっぱいあるので、それを小出しにしていこうと思っています」と楽しそうに笑い、「話すとチープになる気がするので、見てのお楽しみ、ということにしていただければ」とちゃめっ気たっぷりに語っていた。

 「連続ドラマW パレートの誤算 ~ケースワーカー殺人事件」は、WOWOWプライムで3月7日スタート。毎週土曜午後10時に放送。全5話で第1話は無料放送。

写真を見る全 5 枚

テレビ 最新記事