魔術士オーフェン:原作重視で再アニメ化 色あせない普遍性

「魔術士オーフェンはぐれ旅」の一場面(C)秋田禎信・草河遊也・TO ブックス/魔術士オーフェンはぐれ旅製作委員会
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「魔術士オーフェンはぐれ旅」の一場面(C)秋田禎信・草河遊也・TO ブックス/魔術士オーフェンはぐれ旅製作委員会

 人気ライトノベル「魔術士オーフェン」の新作テレビアニメ「魔術士オーフェンはぐれ旅」。1998~2000年にテレビアニメ化されていて、シリーズ誕生25周年を記念した企画の一環として、約20年ぶりに新作が制作された。新作は「テニスの王子様」などの浜名孝行さんが監督を務め、「カレイドスター」「ガールズ&パンツァー」などの吉田玲子さんがシリーズ構成を担当。豪華スタッフが集結した。20年以上にわたって愛され続けている名作を2020年に再アニメ化するにあたり、浜名監督は原作を重視しようとしたという。浜名監督と吉田さんに制作の裏側を聞いた。

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 ◇根本を変えずに シンクロ、共感できるように

 「魔術士オーフェン」は、秋田禎信さん作、草河遊也さんイラストのライトノベル。モグリの金貸し兼魔術士のオーフェンが仲間と旅をする姿が描かれている。新作テレビアニメは、1月からTOKYO MX、WOWOWほかで放送中。

 「魔術士オーフェン」は、長く愛されている作品だ。浜名監督は再アニメ化にあたり、原作を重視しようとした。

 「これまでもアニメ化はされていますが、その続編ではなく、原作重視ということで動いています。ファンの方も多い作品ですが、最初はあまり考えずに、原作をいかに映像にするかを考えていました。話数を重ねることで、プレッシャーがどんどん大きくなり、深さを痛感するところもあったのですが」

 原作が誕生したのは25年以上前だが、今も色あせない魅力がある。吉田さんは「普遍性」を感じたという。

 「オーフェンが過去と向き合う話。普遍的なテーマなので、そこを中心にすれば、今も若い方にも見ていただける。キャラクターにシンクロ、共感できるようにしようとしました。主人公が何を考えて行動するかを分かりやすく描けば、キャラクターに寄り添って見ていただけるはず。設定が複雑ではありますが、初見でそこを理解できなくても、気持ち、行動を理解できるようにしたかったんです」

 浜名監督も「オーフェンの心情、思いは普遍的で時代に流されない部分なので、今の若い人も楽しめる」とうなずき「魔術を繰り出すところなどは、今風に格好良く、派手にやりたい。ただ、根本は変えないようにしました。世界観、設定だけでなく、気持ちの部分を大切にしながら、実はこの世界は大きく、深いことに気付いていただける構成にしたかった」と語る。

 ◇オーフェンの魅力 人間くさいところも

 主人公・オーフェン自身も普遍的な魅力を持ったキャラクターだ。浜名監督は「ただ、クールな男ではないですし、シリアスじゃない部分も描かないといけない」、吉田さんは「グズグズしたところがいいんですよね。自信満々で力を誇示するのではなく、自分に常に問いかけていて、そこが人間くさくて、魅力的なんです」と語る。

 長く愛されている作品ということもあり、思い入れが強いファンも多いはず。アニメでもオーフェンを魅力的に見せるために、浜名監督は「ファンの方には、なくしてほしくないせりふがあります。シナリオは、かなり長い時間をかけました」、吉田さんは「どこを大切にするのかを考えながら、そぎ落としていきました」と作品に向き合った。

 ◇微妙な緊張感、距離感が成立するせりふ

 吉田さんは「カレイドスター」「ガールズ&パンツァー」などを手がけてきた人気脚本家だ。吉田さんが普段、心がけているのは「空気感を意識して書きたい。ただ、キャラクターがいるだけでなく、微妙な緊張感、距離感が成立するようなせりふ」だという。

 浜名監督は、吉田さんの脚本の魅力を「気持ちを丁寧に描いていて、共感できる」と話す。

 「言葉選びも素晴らしいのですが、何よりも僕自身がやりやすいんです。想像力をいただけるライターさんで、信頼しています。画が浮かぶ脚本がいいとも限らなくて、画が浮かばないことで、悩んでいい画作りができたりもします。吉田さんはすごくバランスがいいんです」

 「魔術士オーフェンはぐれ旅」もまた、キャラクターの心の動きが丁寧かつ繊細に描かれているから、ファンの心をつかんでいるのかもしれない。

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