東宝演劇が、新プロジェクト「TOHO MUSICAL LAB.」の第1弾として、7月11日から新しい短編オリジナル・ミュージカル2本をライブ映像配信する。そのうちの1作「Happily Ever After」(脚本・演出:根本宗子さん)に出演するアイドルグループ「乃木坂46」の生田絵梨花さんが作品にかける意気込みを語った。
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オリジナルのミュージカル作品は本来、1年以上の時間をかけて準備、製作するのが通例。しかし今回は新型コロナウイルスの感染拡大の影響に伴い、東宝演劇初の試みとして、演出家へのオファーから1カ月弱、けいこは2週間と異例のスピードで行われてきた。
生田さんが出演する「Happily Ever After」は、出会いから刻々と心情が変化する約30分間の会話劇。「静寂の中で繰り広げられる2人芝居です。私が演じるマリアという女の子は、現実に希望を見いだせなくて、普段は日記に自分の心のうちを書いて、気持ちを整理しています。現実ではそうなってしまっているけど、想像の中では、いろんなところに行ける。いつか自分を理解してくれる人に出会いたいと思っていた矢先、夢の中で同じような思いを抱える男の子に出会い、物語が始まっていきます」
舞台に上がるのは、生田さんのほかにミュージカル俳優の海宝直人さん、ダンサー、ピアニストのみ。けいこも最少人数で、歌唱練習などはビニールの仕切り越しに行われたという。「根本さんの演出が面白いのは、セリフを台本で一人で読んだ時に比べ、実際に相手と向き合った時、そこに宿る心の動きやシーンの意味合いが何倍にも広がって変わっていくところです。私たちもやればやるほど発見があって楽しいし、歩み寄ったりすれ違ったり……といった距離感の変化や言葉の裏側を見る方も想像しながら見ていただけたら、きっと何倍も楽しめると思います。静寂の中であふれ出る喜び、音楽の優しいふっとした瞬間をしっかり表現できればいいなと思います」
スタート時は、無観客・ライブ配信が前提となっている。生田さんは「劇場空間から生配信をするのが最大の醍醐味(だいごみ)です。舞台上の緊張感や高揚感が、モニター越しに見てくれる皆さんへ伝わるようにエネルギーを込めてやりたいです。見てくださった方も、作品を楽しんでもらいつつ、『また劇場に足を運びたい』『この作品を生で体感したい!』と思ってもらえたら一番幸せです。そういうふうに感じてもらえるものをお届けしたいです」と意気込んだ。
生田さんが所属する乃木坂46は、6月17日に新曲「世界中の隣人よ」の配信をスタート。西野七瀬さんや生駒里奈さんら多くの卒業メンバーも出演し、各メンバーの自撮り映像をつなぎ合わせたミュージックビデオが話題になった。それでも生田さんは約2カ月間、「グループの活動はほとんどできなかった」と話し、「(自粛が)明けてからもリモートでつなぐとか、全員そろうのは無理だから人数を減らして距離を置いて、という形で活動しています。ステージ上でなにかをやる、というのはまだできていません」と話す。
そんな生田さんは「皆さんに私の姿や思いをお届けできるのがありがたいです。(舞台鑑賞などを)楽しみにしてくださっていたお客様の中にも、私と同じようにがっかりしたり、寂しい思いをしたりしたという方々がいらっしゃると思います。作品を通じて、少しでも多くのメッセージを届けたいです」と作品への思いを語る。
また、作品タイトルにちなんで、この苦しいコロナ自粛の間に、“ハッピーを感じた瞬間”をたずねると「少し前から保護犬を引き取っていて、家族で見ています。犬種はロングコートチワワです。私の仕事が忙しいときは、家でなでることはあってもお散歩につれていくことができませんでした。だけど緊急事態宣言が解除された後、一緒にお散歩に行ったり、わんわん広場に行ったりしました。何気ない日常がうれしかったですし、癒やされました」と笑顔をこぼした。
「TOHO MUSICAL LAB.」は、コロナの感染拡大防止に伴い、3月から休演を余儀なくされた直営劇場「シアタークリエ」(東京都千代田区)を「LAB.」(実験室)に見立て、最も旬の劇作家、キャストによる新しい短編オリジナル・ミュージカルを創作する。第1弾となる今回は、「Happily Ever After」と「CALL」の新作2本を、7月11日より無観客・ライブ映像配信で展開。7月下旬からは、観客を入れての公演もスタートする予定。
ライブ配信は、イープラスの「Streaming+」で行われる。視聴券の販売期間は7月13日午後4時まで。視聴券料金は3800円。(取材・文・写真:桜井恒二)