福山あさき:異色の経歴の新人声優 紆余曲折経てつかんだ主演 「カラミティ」で大抜てき 

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 今夏公開予定のフランス、デンマークの劇場版アニメ「カラミティ」の日本語吹き替え版で、主人公のマーサ・ジェーンの声優を務める福山あさきさん。「東京アニメアワードフェスティバル2016」でグランプリを受賞した劇場版アニメ『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん」のレミ・シャイエ監督の最新作で、新人声優の福山さんが主演に大抜てきされた。福山さんは、高校2年生の時に声優を目指し、養成所に入るが、一度は夢を諦め、インスタグラマー、YouTuberなどを経て、声優になった。異色の経歴の福山さんに、声優としての活動への思いを聞いた。

ウナギノボリ

 ◇一度は諦めた夢 それでも挑んだ原動力 

 福山さんは「感染×少女」「ロストアーカイブ」などのゲームに出演経験があり、「月刊少年エース」(KADOKAWA)で連載中のラブコメディーマンガが原作のテレビアニメ「女神寮の寮母くん。」にも出演するなど今後の活躍が期待されている新人声優の一人だ。声優という仕事を意識し始めたのは小学生の頃だった。

 「小学生の時に、自分の声をバカにされたんです。傷ついて、見返してやる!という気持ちもありました。特徴的な声なのかな?と自分の声に興味を持ち、声優という仕事を知り、やってみたい!と思っていました。演じることが好きで、家で一人でシリアスな演技をよくしていたんです。『なんで死んでしまったの……』とか。病んでいたのかな? 誰に見せるわけでもなかったのですが」

 高校2年生の時に声優を目指して、養成所に入る。声優は、プロになれるのは一握りの厳しい世界だ。福山さんも一度は夢を諦める。

 「4年ほど養成所に通っていました。高校生の時、自分は特別だ!と思っていたのですが、現実はうまくいかず……。演技が好きで続けているのか、声優になる!と周囲に言ってしまったから、義務で続けているのか……。分からなくなってしまい、養成所を辞めて、演技から離れました」

 それでも声優になることを諦めきれなかった。その道のりは紆余(うよ)曲折があった。

 「就活もせずに、ちょっとしたモデルをやったり、なんとなく過ごしていたんです。写真をインスタグラムにアップしたところ、フォロワーさんが増えて、インスタグラマーとして活動をしていました。でも、声優になりたい!という思いが捨てきれず……。その時は、インフルエンサーの事務所に所属していて、YouTubeで声を扱った動画を載せてみて、チャンネル登録者数も増えたのですが、このままでは声優にはなれない……と悩みました。これでは後悔する!と2019年末に、今の事務所のオーディションを受けて、ご縁があったんです」

 声優になろうと思って、誰もがなれるほど甘くない。一度挫折したこともあり、よく分かっているはずだ。それでも、再び挑もうとした原動力とは?

 「高校生の時、全力で挑めていたのか? 養成所に入ったことに満足して、なんとなく過ごしていたんじゃないか? あの時、本気でやっていたら……というモヤモヤした気持ちがあったんです。自分に言い訳するのがイヤだった。言い訳できないくらい、ちゃんと向き合おうとしたんです。新しい世界が見たい!という思いが強くて」

 ◇寄り道も悪くなかった 全て経験

 福山さんは、2020年に公開された劇場版アニメ「マロナの幻想的な物語り」の日本語吹き替え版に通行人役として出演。「カラミティ」の日本語吹き替え版で主人公マーサ・ジェーン役に大抜てきされた。

 「びっくりですよ。信じられません。プレッシャーが大きかったですし、初めてのことばかりですが、伸び伸びと演じることができました。やっぱり演技が好き。違う自分になれるのが楽しい。養成所に入ってから7年、いろいろあったけど、寄り道も悪くなかったのかもしれません。それも全て経験になるので」

 「カラミティ」は、伝説の女性ガンマン、カラミティ(厄介者)のマーサ・ジェーンの少女時代を描く。「マーサが自分らしく生きる姿が魅力的。叫ぶシーンが多く、声がかれないようにずっと練習していました。頑張ったところなのでぜひ見てほしいです」と笑顔で語る福山さん。目指すのは「柔軟に対応でき、必要とされる声優」だ。今後のさらなる活躍が期待される。

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