放課後カルテ
第10話(最終話) これからも健康でいてほしい
12月21日(土)放送分
ドラマからドキュメンタリー、バラエティー、アニメまで、さまざまなジャンルのテレビ番組を放送前に確認した記者がレビューをつづる「テレビ試写室」。今回は、7月23日からテレビ朝日系で放送される、俳優の斎藤工さん主演の連続ドラマ「漂着者」(金曜午後11時15分)を紹介する。
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「漂着者」は、海岸に“漂着”した謎の男(斎藤さん)が、世間を騒がせる事件を次々と解決に導き、“教祖”のようにあがめられていく……というストーリーだ。
スプーン曲げに端を発する1970年代の超能力ブームから、かれこれ半世紀近くたつ。当時の子供たちは、スプーンを片手にテレビを食い入るように見ていた。大人になれば「そんなことあるわけない」と疑ってかかるようなことも、子供は無邪気に信じるものである。しかし、“大人”になっても、私たちはときに「あるわけないこと」を本気で信じる可能性があるのではないか……。本作を見るときっとそんなことを考えるはずだ。
本作は、女子高生たちが、海岸に漂着した謎の男の写真をSNSにアップするところから幕を開ける。後に男にある超人的な“能力”が備わっているという噂が流れ始めると、SNSでもワイドショーでも、男は一躍“時の人”になっていく。
ドラマの注目ポイントの一つは、男がいとも簡単に“時の人”として話題になっていくところだ。女子高生の興味本位の投稿が、あっという間に世の中の“大人”たちの関心を引いていくところに、SNS社会の“恐ろしさ”を感じてしまうことだろう。今や誰もがSNSを利用できる時代ならではの、“気味の悪さ”を存分に楽しんでほしい。きっと私たちはいつだって、不可解な現象に心を強く引かれてしまう可能性を持ち合わせているのだ。
本作を語る上で忘れてはならないのが、「あなたの番です(あな番)」(日本テレビ系)や、「愛してたって、秘密はある。」(同局系)で知られる秋元康さんが、原作を手掛けるということだ。“秋元康原作ドラマ”といえば、「あな番」や「愛してたって、秘密はある。」はまさに代表例であるが、視聴者にさまざまな考察の余地を残して、毎週の放送を楽しみにさせてくれる点が魅力だ。
だが、「漂着者」に関しては、もはや何をどう考察すればいいのか分からないくらいに、“何が起こっているのか分からないドラマ”であり、ある意味で、“秋元康原作ドラマ”史上、最難関のストーリーと言えるかもしれない。本作では奇妙な出来事が第1話から続々と登場するが、それらに一体どういう意味があって、どう結びつくのかが、さっぱり分からない。だからこそ、考察好きのドラマファンにとってもなかなか“骨の折れる”物語になっていることだろう。
そんな奇妙な世界で、“真実”を追い求め続けるヒロインが、白石麻衣さん演じる新聞記者・新谷詠美だ。詠美は、謎の男を調べていくことになる記者なのだが、詠美のモットーは自分の目で見たものだけを信じて、“真実”を追求すること。きっと多くの視聴者が詠美のあり方に共感できることだろう。しかし、公式の人物紹介によると、詠美もまた、謎の男の力に次第に「魅入られていく」ことになるのだという。SNS時代の光と闇を通して、何かを狂信して、踊らされていく人間の姿を描く本作が楽しみで仕方ない。
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