トクサツガガガ:小芝風花の出世作 攻めの姿勢と愛あふれる作り込み いまだ変わらぬ人気のワケ

NHKの連続ドラマ「トクサツガガガ」で主演を務めた小芝風花さん
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NHKの連続ドラマ「トクサツガガガ」で主演を務めた小芝風花さん

 女優の小芝風花さん主演で、丹羽庭さんの同名マンガを実写化した2019年のNHK連続ドラマトクサツガガガ」の全7話が、7月25日深夜から2夜連続で一挙再放送される。シリアスからコメディーまで、幅広い演技で視聴者を魅了する小芝さんにとって、とりわけ「コメディエンヌ」としての評価を一気に高めた出世作の一つだ。放送終了から丸2年。ことあるごとに続編への期待の声が上がる本作の、いまだ変わらぬ人気の理由に改めて迫ってみた。

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 ◇「ニチアサ感ハンパない」特撮パート 細部までこだわって“再現”

 ドラマは、特撮オタクの主人公・仲村叶(かの、小芝さん)が、日々の生活でさまざまなピンチに陥ると、本人にしか見えない特撮ヒーローが出現し、その言葉に勇気付けられ、次々にピンチを切り抜けていく……という内容で、小芝さんのほか、倉科カナさん、木南晴夏さん、寺田心さん、「カミナリ」の竹内まなぶさんらが出演。2019年1月期に放送された。

 当時、大きな話題となったのが、「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」シリーズで知られる東映の協力で撮影された特撮パートのクオリティーだ。

 ドラマの初回は、劇中ヒーロー「獅風怒闘ジュウショウワン」のシシレオー、トライガー、チェルダが、敵対するゲンカ将軍や部下の戦闘員と戦いを繰り広げるシーンからスタート。本格すぎる作り込みに対して、視聴者からは、仮面ライダーやスーパー戦隊が放送されている“日曜の午前(朝)”を引き合いに「すげーガチ! ガチのニチアサ感」「ニチアサ感がハンパない」との声が続々上がるなど、特撮ファンの心をがっちりとつかんだ。

 以降も、主人公が小さい頃に見ていた特撮ヒーロー番組という設定の「救急機 エマージェイソン」のエマージェイソン、「ジュウショウワン」の追加戦士・セロトルといったマンガの中の特撮キャラが、“本家・ニチアサ”と遜色ないクオリティーで三次元化・映像化。

 ジュウショウワン、エマージェイソンのスーツデザイン・製作は「太陽戦隊サンバルカン」(1981年)をはじめ、数々のスーパー戦隊を手がけてきた「レインボー造型企画」が担当し、実際の撮影では、使用するカメラから映像のスピードまで、東映が普段からやっている手法を取り入れ、質感や加工の部分含めて、細部までこだわって“再現”した。

 ◇妄想特撮オタク女子の興奮から葛藤まで… 小芝風花が熱演

 本作を語る上で、もう一つ忘れてはならないのがキャスト陣の熱演だ。中でも小芝さんの主演女優として確かな演技力なくして、ドラマの成功はなかったといえる。

 小芝さんが同作で扮(ふん)した主人公は、妄想がちで一人語りが多く、表情も豊かで動きもコミカルと、一歩間違えれば見ている側が“寒く”感じてしまうようなキャラクターでもあった。しかし、小芝さんは持ち前の愛らしさを、役にきっちりと染み込ませ、隠れ特撮オタクとしての興奮から葛藤まで体現。見た目は清楚(せいそ)な叶=小芝さんが特撮ヒーローに悶絶(もんぜつ)したり、ノリツッコミする姿に胸が“トゥクン”としてしまった人も多かったのではないだろうか。

 また、特撮嫌いの母(松下由樹さん)との直接対決が描かれた第6回では、小芝さんが「周囲に言えないからといって自分の趣味を否定されたくない娘」、松下さんが「娘の幸せを願うあまり、自分の考えを押しつけてしまう母」として息詰まる攻防を繰り広げ、視聴者から「さすがに心臓が痛い」「心臓がエグられた」「つらすぎて泣いた」といった声が上がったほど。女優としての振り幅を見せつけた。

 ◇共感必至の名言の数々 肯定感に満ちた「スキなモノはスキ」

 そのほかオタクたちの生態に迫る“あるあるネタ”や、「大事なことはすべて特撮が教えてくれる!」に代表される共感必至の名言の数々、他局のパロディーも取り込んだ演出、「仮面ライダーBLACK」(1987~88年)をはじめ、数々の特撮作品に携わってきた“レジェンド”スーツアクター・岡元次郎さんの起用(エマージェイソンとゲンカ将軍役)と、人気の要因は多岐にわたるが、どれも“攻めている”というのが特徴だ。

 さらにいえば、そのまま「商品として売りに出せるようなクオリティー」を目指したという精巧すぎるフィギュアや食玩パッケージ、劇中の子ども向け雑誌「テレビきっず」やポスターといった印刷物など、特撮パート以外にも至る所で“愛あふれる作り込み”を感じることができるも本作の魅力。肯定感に満ちた「スキなモノはスキ」という作品のメッセージを再確認してもらえればと思う。

 「『トクサツガガガ』2021年夏 一挙再放送決定!」は、第1~3回が7月25日深夜1時1分~同3時15分、第4~7回が7月26日深夜0時11分~同3時9分に放送。

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