薬屋のひとりごと
第35話 狩り
3月21日(金)放送分
人気映画「スター・ウォーズ」シリーズのアニメプロジェクト「スター・ウォーズ:ビジョンズ」が、動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」で配信をスタートした。日本のアニメ制作会社が全9作のオリジナル短編アニメを制作するプロジェクトで、神風動画、キネマシトラス、サイエンス SARU、ジェノスタジオ、スタジオコロリド、TRIGGER(トリガー)、プロダクション I.Gが参加した。プロダクション I.G制作の「九人目のジェダイ」を手掛けたのは、「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(S.A.C.)」シリーズなどで知られる神山健治監督だ。同シリーズのファンという神山監督は「『スター・ウォーズ』愛を試されるような感覚」と制作に臨んだ。神山監督に制作の裏側を聞いた。
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神山監督にとって「スター・ウォーズ」は特別な作品だったという。
「創作したいという動機を与えてくれた作品です。それまで映画、アニメが大好きでしたが、作り手になりたいと初めて意識したのが『スター・ウォーズ』だったんです。だから、今回のお話は、心の中では踊り出したいくらいの喜びがありました。それを表には出さず粛々と作らせていただきましたが、世界中の『スター・ウォーズ』を愛す方々が見ると思うと、プレッシャーがあります。『スター・ウォーズ』愛を試されるような感覚ですね」
「九人目のジェダイ」は、辺境惑星ヒ・イズランに住む少女・カーラが、セーバースミスの父・ジーマにライトセーバーを託され、ライトセーバーを待つジェダイたちの元に向かう……というストーリー。「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」へのリスペクトが込められている。
「『新たなる希望』の辺境の星から名もなき主人公が旅立っていくジュブナイルの基本のような物語に心を打たれたので、そこを描きたいというのが大きな発想の一つでした。誰も知らないエピソード……ということで、過去ではなく未来を描こうとしました」
短編としての見心地を追求し、ミステリーの要素を取り入れた。
「短いエピソードの中でオチ、驚いてもらう部分が必要だと考えたので、ミステリーの構造を取り入れました。『スター・ウォーズ』は冒険ストーリーなので、あまりミステリー的な展開はなかったので、そこが従来の作品にはないのかもしれませんね」
近年、フル3DCGアニメを多く手掛けていた神山監督だが、「九人目のジェダイ」は、手描きが中心だ。神山監督が手描き中心のアニメを制作したのは2017年公開の「ひるね姫 ~知らないワタシの物語~」以来、約4年ぶりだった。
「IGの優秀な作画チームと組んで作る機会をいただけたので、可能な限り日本のアニメの魅力を出していこうとしました。スピーダー・バイクの疾走シーン、後半のライトセーバーを駆使したアクションシーンは本当に素晴らしかったです。こだわった部分でもあるのですが、カーラがスピーダー・バイクから飛び降りた後の氷上の映像などは、特に想像を超えていました。過去の『スター・ウォーズ』にはないシーンになっていたと思います」
“実写的”と感じるシーンも多い。
「僕のほかの作品を含めた演出スタイルなのかもしれません。本来は人間ができないアクションもリアルに見せようとする。構図、レンズの画角を意識しながら作っていて、狙ったところでもあります。ライトセーバーを使ったバトルシーンは、もっとアニメ的なけれん味も出せるけど、できるだけ人間のアクションに近い動きにしました。カメラワークも細かくカット割りをしていない。そこも実写的なのかもしれません」
音楽は「攻殻機動隊 SAC_2045」「ULTRAMAN」で神山監督と組んだ戸田信子さん、陣内一真さんが担当した。神山さんが作品の制作にあたり、真っ先に声をかけたスタッフだったという。
「戸田さんは自身が代表を務めるフィルム・スコア・フィルハーモニック・オーケストラでも毎年ジョン・ウィリアムズさんの楽曲を演奏されているなどジョン・ウィリアムズに造詣が深い方です。この企画は決まった時に、絶対に戸田さんにお願いしたい!と最初に声を掛けました。『スター・ウォーズ』らしい楽曲になり、映像も『スター・ウォーズ』らしくなりました」
「スター・ウォーズ」に愛を込めながら新たな表現に挑戦した「九人目のジェダイ」。神山監督ならではの独自の映像表現に注目してほしい。
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