田中敦子:「攻殻機動隊」草薙素子を演じて27年 「素子がいなければ今の私はいない」

「攻殻機動隊SAC_2045 持続可能戦争」に出演する田中敦子さん
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「攻殻機動隊SAC_2045 持続可能戦争」に出演する田中敦子さん

 士郎正宗さんのマンガ「攻殻機動隊」が原作のアニメ「攻殻機動隊 SAC_2045」を劇場版として再構成した「攻殻機動隊SAC_2045 持続可能戦争」が、11月12日から2週間限定で公開される。「SAC_2045」は、3DCGによる新しい「攻殻機動隊」として注目を集め、草薙素子役の田中敦子さんをはじめとしたオリジナルキャストが再集結したことも話題になった。田中さんが初めて草薙素子を演じたのは1994年で、約27年前にさかのぼる。田中さんは「素子がいなければ、今の私はいなかった」と特別な存在になっているという。田中さんに「攻殻機動隊」、草薙素子への思いを聞いた。

ウナギノボリ


 ◇私ではないかも… 「SAC_2045」出演に喜び

 「攻殻機動隊」は、近未来の電脳化社会を舞台に、架空の公安組織の活躍を描いたマンガで、1989年から展開されている人気シリーズ。押井守監督が手がけた劇場版アニメ「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」「イノセンス」のほか、「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(S.A.C.)」シリーズ、「攻殻機動隊 ARISE」シリーズなどが制作されてきた。スカーレット・ヨハンソンさん主演で実写化した2017年公開のハリウッド映画版も話題になった。「SAC_2045」は「S.A.C.」シリーズの神山健治さんと「APPLESEED」の荒牧伸志さんが共同監督を務め、全12話のシーズン1が2020年4月からNetflixで配信されており、シーズン2の制作も発表されている。

 草薙素子役の田中さん、バトー役の大塚明夫さん、トグサ役の山寺宏一さん……。「SAC_2045」で、公安9課のそうそうたるオリジナルキャストが再集結することが発表されると、ファンが歓喜した。田中さんは「SAC_2045」の制作が発表された際は「私ではないかも……」と感じていたという。

 「新作ができるというウワサは前からうかがっていて、大塚さん、山寺さんと『私たちじゃないよね……』と話していたんです。その後、イリヤ・クブシノブさんのキャラクターデザインを見て、可愛らしい素子になっていましたし『やはり私ではないかも……』とも思っていました。『オリジナルキャストで』というお話をいただき、また収録できる喜び、ワクワクもありましたし、ブランクもあったのでプレッシャーや緊張感がありました」

 「SAC_2045」のキャラクターデザインは、田中さんが話すようにこれまでにない草薙素子のイメージを打ち出したこともあり、大きな反響があった。また、シリーズで初めてフル3DCGアニメとして制作されるなど表現も変わった。演技にも変化はあったのだろうか?

 「オリジナルキャストをキャスティングしていただいた以上、生まれ変わったキュートなキャラクターデザインに合わせて演じ方を変えたりはしていません。大塚さん、山寺さんもそうだと思うのですが、今まで通り演じるのがベストだと感じていました。3DCGになってデザインも変わり、質感、動きも違います。かといって、演技自体には影響はありませんでした」

 「SAC_2045」は、リアリティーにこだわり、キャラクターの動きは、モーションキャプチャーをベースとした。

 「モーションキャプチャーの方が演じられたお芝居があり、その口の動き、ブレスに合わせていくことになりました。収録では、その音声の音量を絞りながら、ブレスの位置を確認しました。映画や海外ドラマの吹き替えとは違い、日本語なので、芝居が引っ張られないように音量を絞ったんです。リアルなだけに、モーションキャプチャーの方の演技に合わせていくように注意しました」

 ◇素子のゴーストが降りてくる

 田中さんが初めて草薙素子を演じた劇場版アニメ『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』が公開されたのは1995年。同作の収録が行われた1994年から約27年がたった。田中さんにとって「攻殻機動隊」、草薙素子は「素子がいなければ、今の私はいなかっただろうと思っています」と特別な存在になっている。

 「素子に支えられ、30年近く歩んできました。素子は近い存在ですし、“田中敦子と言えば戦う女性”というキャラクターが確立されたことも大きいです。30年近く前は、手探りで演じてきましたが、今では演じるとなると、素子のゴーストが降りてきます。私は生身の人間なので、バイオリズムもありますし、その日の調子によっては、私の中に素子がまだいないと感じる瞬間もあります。でも、スタジオに入って収録していると、段々素子とシンクロしていく自分を感じます。9課のメンバーと会話していると、素子が降りてくるんです。シャーマンですかね(笑い)」

 オリジナルキャストは「家族を超えたつながりのようなものがありますね。しばらく離れていても、メンバーがそろえば、すぐに9課になれるんです」という思いがある。

 「SAC_2045」の劇場版について「ただ単に編集したのではなく、いろいろと面白いアプローチがあります。シーズン1を観た方も楽しんでいただけますし、シーズン2がより楽しめる編集になっています」と話す田中さん。「攻殻機動隊」はまだまだ続く。劇場版、シーズン2、そしてさらに先へ……。今後の展開も期待される。

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