12月にアイドルグループ「乃木坂46」を卒業する寺田蘭世さん。2013年に2期生としてグループに加入し、これまで約9年間にわたって活躍。10月28日開催のラストライブを経て、「悔いなく出し切りました。今はすごくスッキリしています」と晴れやかな笑顔を見せる。11月9日には数年前からの大きな目標だったというファースト写真集「なぜ、忘れられないんだろう?」(集英社クリエイティブ)を発売する寺田さんに、写真集のこだわりや、これまでの9年間への思いや今後について考えていることなどを聞いた。
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写真集は「“大切な人”との旅」をテーマに、寺田さんのピュアな素顔からあどけない笑顔、ドキッとするような大人っぽい顔つきまで、さまざまな表情を切り取った一冊。「すごくいい記念。うれしいです」と喜びを語る寺田さん。ただ、発売にはプレッシャーもあったという。
「数年前は写真集を出すことを一番の大きな目標に掲げていたんです。でも最近、いろいろなメンバーが出すようになって、どんどん重さを感じちゃって……。写真集って、みんなが出せるわけじゃないし、いいタイミングもあると思うから、時がたてばたつほどどんどんプレッシャーで……。『どうしよう、出すことになっちゃったら』という気持ちが強くなっていた時期に『出すよ』と言われたんです(笑い)。だからうれしいだけではなく、プレッシャーもありました」
衣装は寺田さんのセルフプロデュースで、私服も多く披露している。「先輩たちにも私服をほめていただく機会が多かったんです。それがきっかけで私服を多く取り入れたのが、ほかのメンバーの写真集と違う部分かなと思います。結構、大変でした。仕事の合間に買い物に行ったり、部屋のクローゼットの中を全部ひっくり返したり(笑い)」と語る。
ロケ地は神戸、淡路島、鳴門、鳥取と国内のさまざまな場所を選定。寺田さんのお気に入りカットは、自身の希望で訪れた大塚国際美術館での一枚だとか。
「すごく行きたかったんです。どこに行きたいかと家族会議したときに、みんな『大塚美術館はいいと思う』と言っていたこともあって。うれしかったし、インパクトのある写真かなと思います」
撮影は、グループ卒業を発表するよりも前に行われていた。それから卒業発表やラストライブなど多忙な日々を過ごした寺田さんは、写真集を見て「もう、すでに幼いと思いました」と笑う。「撮ったときは22歳だったんですけど、そこからさらに、お仕事でもいろいろな経験を重ねたので。ちょっと雰囲気は変わったのかな、と思います」としみじみ語る。そんな写真集を「22歳のぜいたくな思い出作り(笑い)」とおちゃめに笑う寺田さん。「いっぱい意見を言わせてもらって、どれもすごくすてきに撮ってもらえて。何年もたった後に、私自身がすごく楽しめるのかな、と思っています」と手応えを明かした。
ファースト写真集を発売し、ラストライブも終え、グループ卒業が近づいている。改めて現在の心境を聞くと、「不思議な気分です」と寺田さんは明かす。「今も乃木坂46のメンバーなんですけど、今日(の取材)も一人ですし、これからもみんなとの仕事って少ないと思うんです。みんなは今、ドーム(東京ドーム公演)やベストアルバムの発売に向けて一丸となっているところですけど、私はもう、その制作やリハーサルには参加していないので……。不思議な気分ですね、実感もまだないです。不思議です」と赤裸々に心境を吐露する。
卒業を意識したのは1年以上前だったという。「すぐに卒業、というわけではないけど、何回かふと、思うことが増えていて。実は『私が卒業したいと思ったら、それはたぶん本当に卒業したいのだと思うから、卒業したいと言ったら、後ろ髪を引っ張ったりしないで送ってください』と10代のときに話していたんです(笑い)。ふざけてですけど一回言った記憶があって、本当にその流れになりました」と振り返る。
ラストライブの日は、昨年卒業した白石麻衣さんの卒業ライブと同じ日だった。「白石さんの卒業ライブに参加したとき、自分も『来年の今ごろには、そう(卒業)なのかな』と感じでいて……そうしたら、まったく同じ1年後にアンダーライブの最終日だったので、1人で『おおー』って思っていました」と笑顔で語る。
9年を振り返り、特に印象深かったことには「輝く!日本レコード大賞」受賞の思い出を挙げる。
「今でもはっきり覚えているんですけど、受賞したら銀テープみたいなものが上から、ぱーっと降ってきて、あの景色が忘れられなくて。私は『すがすがしい』気持ちが勝っちゃって、泣かなかったんですけど(笑い)、お姉さんたちが泣いている姿を見て、こんな瞬間に立ち会えて幸せだな、と。卒業したメンバーも多い年だったので、そういうメンバーのことを思ったりもして。本番中に踊りながら、『本当に乃木坂っていいグループだな』って思っていました。本当に貴重な経験だったなって思います」
卒業を目前に控え、今は「すごくスッキリしています」と充実感をにじませる。「もちろん、欲を言えば『もっとこういうことをしたかったな』ということもあるとは思うんですけど、それすらもいい思い出、と思えるぐらい、今はすがすがしくて。悔しいことや楽しいことも、その経験がなかったら今の私の思考にはなっていないと考えると、『全部よかったな』と思えるようになりました」と胸を張る。
アイドル活動を完走したあと、寺田さんは次のステージに何を選ぶのか。卒業後の進路について聞くと、まずは「アイドル活動しかしていないので、いろいろなものを見たい」と明かす。
「『人生の夏休み』を取りたいな、と。14歳の時から乃木坂46として、アイドルとしてこういう世界にいるので、学生生活もちゃんとは送っていないし、ここでは先輩かもしれないけど、違うところにいったら社会人1年目の年齢。もっといろいろなものを見てから『こういうことをしたいな』と思ってもいいと思うんです。新しいものに出会って、そこでもう一回、イチから学びたいなと思ってもいいと思う。そういう期間は欲しいなと思っています」と寺田さん。
「高校生とか大学生ぐらい(の年齢)になってから入ってくる後輩メンバーを見ていると、私は本当にアイドルしかしていないので、価値観や持っているものが違うな、と思う。コンプレックスではないんですけど、もったいない気がしていて……。ないものねだりだと思うんですけど、いろいろなものを補いたい、という気持ちが強くなっています。いろいろなものを見たいなと思います」と声を弾ませる。
寺田さんにとって、9年間を過ごした「乃木坂46」とはどのような存在だったのか。最後に、改めてそう聞いてみると、「人生の半分ぐらいはいることになっちゃうので、心配です。乃木坂46が自分の中からなくなったら、どうなるんだろうって。『乃木坂46の寺田蘭世です』というのが、自分の中で定型文みたいになっているから」と不安な本音ももらしつつ、「本当に大切な場所でした。育ててくれた、もっと大人にさせてくれた場所だと思っています」と感慨深い表情を浮かべる寺田さん。最後に、「これからも『負けないぞ!』という存在ではいたいなと思います」とほほ笑んで前向きな思いを語ってくれた。