小山力也:「絶対に忘れられない作品」 「マトリックス」吹き替えへの思い

「マトリックス レザレクションズ」の日本語吹き替え版に出演する小山力也さん
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「マトリックス レザレクションズ」の日本語吹き替え版に出演する小山力也さん

 人気SF映画「マトリックス」の新作「マトリックス レザレクションズ」(ラナ・ウォシャウスキー監督)が12月17日に公開される。日本語吹き替え版は、小山力也さんが主人公・ネオ(キアヌ・リーブスさん)の声優を務める。小山さんは1999年公開の第1作「マトリックス」の日本語吹き替え版でもネオの声優を務め、その後も「コンスタンティン」「ザ・ウォッチャー」「スキャナー・ダークリー」などでもキアヌ・リーブスさんの吹き替えを担当してきた。小山さんに「絶対に忘れられない作品」という「マトリックス」への思いを聞いた。

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 ◇僕の人生とリンクしているところも

 小山さんは「24-TWENTY FOUR-」のジャック・バウアー(キーファー・サザーランドさん)のほか、ジョージ・クルーニーさんらの吹き替えでも知られる“吹き替えの名手”だ。アニメでは「名探偵コナン」の毛利小五郎役、「Fate」シリーズの衛宮切嗣などで知られ、2011年声優アワードで「その年最も声優という職業を世の中に浸透させた功労者」に贈られる富山敬賞に選ばれるなど大活躍している。1999年公開の「マトリックス」は、小山さんにとって特別な作品になっているという。

 「当時はドラマ『ER』の吹き替えをやらせていただいていましたが、『マトリックス』は最初に大作映画の吹き替えをやらせていただいた作品でした。『自分でいいのか?』という不安、喜びがない交ぜになっていました。自分のキャリアの中で絶対に忘れられない作品なんです。こうしてまた『マトリックス』をやらせていただけるなんて、ただただありがたいです。僕の人生とリンクしているところもあるので」

 「マトリックス」は世界中で大ヒットした伝説の映画だ。小山さんは今も「マトリックス」を見直すことがあるという。

 「時々見ます。反省する点もあるのですが、これはこれでよかったと思うところもあります。キアヌさんと僕は、ほとんど同い年なんです。キアヌさんも若かったけど、僕も若かった。収録のこともよく覚えています。ディレクターが優しい方でしてね。音には厳しい方ですが。丁寧に必要最小限の言葉で細かくアドバイスをいただきました。自分の表現のつたなさに戸惑ったところもありました。もっとできるはずなのに……と。(ヒロイン・トリニティーの吹き替えを担当した)日野由利加さんと励まし合っていました。僕が励まされてばかりでしたが」

 ◇吹き替えはオリジナルを汚してはならない

 小山さんはこれまで数々の映画でキアヌ・リーブスさんの吹き替えを担当してきた。吹き替えを担当する中で、キアヌ・リーブスさんはどんな役者に見えているのだろうか?

 「子供がそのまま大人になったような方だなと思います。とても素直で、誰に対しても裏表がなく、心のキレイな方。ちょっとした変化なども自然なんですね。今回の映画も心の移り変わりが非常にリアルで、そこにもひかれました。吹き替えでは、汚い日本語でキアヌさんの演技を潰さないようにしたいと考えました」

 吹き替えは、字幕とはまた違った魅力があり、吹き替えのファンもいる。“吹き替えの名手”の小山さんは「オリジナルを汚してはならない」という思いがあるという。

 「吹き替えの方が、情報量が多く、分かりやすいというのは、言わずもがなですが、吹き替えの伝統として、日本語ならではの芝居が大事になります。自分もその歴史の上に立ってやらせていただいています。ガイドにならないように、日本語のドラマとして成立するようにしつつ、オリジナルを汚してはならないし、日本語なりの血が入ってないといけないと思っています。その混ぜ具合が微妙なところなんです」

 小山さんは吹き替えだけでなく、アニメでも大活躍している。アニメと吹き替えでは、違うところもあるという。

 「吹き替えの場合、映画やドラマの完成品があるので、どれだけリスペクトできるか、日本語なりの面白さをどう加えるかが大切です。素晴らしい役者さんであればあるほど、申し訳ない気持ちがあったり、『やったね!』と思ったりするところもあります。男前だし、芝居がうまいし、素晴らしい。悪いけど、せりふをもらっちゃうよ。その代わり、失礼のないようにやりますから、許してね……という気持ちがあったり。アニメの場合は、後から声に合わせて絵を描き直してくださることも増えています。現場でどれだけ遊べるかが、重要になることがあります。自分が準備してきたものとは、違うものが生まれることもあって、偶発的に起こったことが面白いんです」

 ◇俳優さんを大事にしようという気持ちがどんどん強く

 第1作「マトリックス」の公開から20年以上がたった。小山さんは数々の作品に出演する中で変化したこともあったという。

 「吹き替えでたくさんの作品に出演させていただき、俳優さんを大事にしようという気持ちがどんどん強くなりました。人間ですから、我欲があるのですが、俳優さんを見ていると、その俳優さんのことが好きになりますしね。好きになると、楽しくなり、感謝しながら演じることを実感できるようになりました。俳優の皆さんが素晴らしいので、説明的な日本語で固めてしまわないようにしたり、失礼のないようにしたりしないといけませんから」

 「マトリックス レザレクションズ」の収録は「丸4日リハーサルをして、試写会をして、2日間かけて収録しました。ぜいたくでした」と丁寧に行われた。そんな新作について「びっくりしますよ」と語る。

 「映像、設定もびっくりしますし、考えさせられることもあります。人間を信じなきゃいけないんですよね。自分も信じないといけない。未来に対する不安が大きい中、どうするか?といったら、やっぱりなんとか信じるしかないんだ……。そんなテーマを突きつけられているように感じました。もちろんエンターテインメントなのですが、それを超えたところで、人の心に残るものがあります」

 吹き替え版は、小山さんの演技も「心に残る」ものになりそうだ。

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