となりのチカラ:脚本家・遊川和彦に聞く、松本潤の“すごさ” 挑戦的な主人公「MJしかいなかった」

連続ドラマ「となりのチカラ」の一場面=テレビ朝日提供
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連続ドラマ「となりのチカラ」の一場面=テレビ朝日提供

 松本潤さん演じる思いやりと人間愛にあふれる主人公・中越チカラが、問題を抱えた隣人たちの問題解決に奔走する姿を描く連続ドラマ「となりのチカラ」(テレビ朝日系、木曜午後9時)。松本さんのクールなイメージとはかけ離れた、挑戦的ともいえるチカラのキャラクターが話題になっている。脚本と一部演出を手掛ける遊川和彦さんは、松本さんがチカラを演じることに「最初は合わないんじゃないかなって不安が大きかった」と振り返るも、今は「“MJ(松本さんの愛称)”しかいなかった。この人しかチカラくんはいない」と思っていると話す。遊川さんに、今作に込める思いや、松本さんについて話を聞いた。

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 ◇受けるかは“半信半疑”も、今だからこそ

 松本さん演じる中越チカラは、困っている人を放っておけないが、いざ手を差し伸べようとすると、あれこれと余計なことを考えて中腰になってしまう人物。いつもニコニコしていて、特技は人の話をいつまでも聞けること。妻の灯(上戸彩さん)と2人の子どもと共に、東京郊外のマンションに越してきたが、同じマンション内の住人たちは問題を抱えた人物ばかり。チカラは頼まれてもいない中で、住人たちの悩みを解決していく。

 第1話では「家庭内暴力」、第2話では「ヤングケアラー」、第3話では「外国人労働者問題」と、現実の社会問題に切り込んでいる今作。舞台は、近所付き合いも希薄な都会の閉鎖的なマンションだが、遊川さんはそのマンションこそ、さまざまな問題を抱えている現代社会の「縮図」だと解釈。その中で一人、問題解決のために奮闘するチカラは“異質”な存在に映るが、その人物像には遊川さんの“希望”が込められていると明かす。

 「現代社会にはいろいろな問題がありますが、問題が多すぎて、『自分のことだけを考えればいいや』っていう方が増えている印象を受けます。人間関係も希薄になっていますが、人は人と触れ合うことによって何かが起きる。なので、一人では抱え込まずに、自分には何もできないって思ってほしくない。そういう思いが少しずつ広がっていったら、幸せは少しずつ広がっていくのでは。老婆心ながらにそういったことを考えていた時期があり、そこでチカラくんというキャラクターが生まれました」

 そして、「こういった話がどれくらい受けるかは半信半疑ではあったのですが、“今”だからこそやるべきではないかと思いました」と力を込めた。

 ◇松本潤に白羽の羽を立てた理由

 そんな“異質”なチカラ役に、松本さんを選んだ理由は何だったのか? 松本さんといえば、金持ちの御曹子、チョコレート王子、鋭い観察力を持つ弁護士など、クールな役のイメージが強い。一般的に考えると、チカラのイメージとは違うように思えるが……。

 「柔和な人が心優しい役をやるよりも、キリリとしている人が心優しい役をやった方が、優しさって際立つと思います」と遊川さん。続けて「松本さんが悩みまくる姿をドラマにしたら面白いな。かっこ悪い役をやらせたいな(笑い)」という思いもあったという。

 だが、撮影序盤では不安もあった。「松本さんが普通に演じてしまうと、やっぱりかっこ良くなってしまうんです。止まっていても、かっこ良くみえちゃうから、『ずっとおどおどしていてほしい』とリクエストしましたし、声も『高くしてくれ』としつこく言いました」。

 松本さん自身も「『普段演じる役と正反対の人間だ』って苦労していました」と明かしていた。しかし、回を重ねるごとにチカラへの“シンクロ率”を高めていき、身近でその姿を見守っていた遊川さんは、松本さんの緻密な芝居に驚いたという。

 「感情的な演技も議論で構築して、徹底して正確さを求めています。映っていないシーンでも、モノをどのタイミングで拾うとか、役になりきって全てちゃんとやろうとする。また、それが、理屈っぽい芝居になるかと思ったら違っていて、エモーショナルな芝居になるんです。全てをきちんと計算しつくした上で、計算とは見せない演技を見せていただいています」

 続けて、「批判の声があることも初めから想定内でしたが、彼の頑張りによって、ドラマが形になっているなと感謝しています。彼がチカラくんを演じてくれて本当に良かったなって思っています」と話していた。
 
 現在、第3話まで放送されているが、今後の見どころを聞くと、「中盤あたりでレギュラーの人たちの問題を解決していった“先”が見どころです。チカラ君が周りにどんどん頼られていくようになっていき、“ちょっといい気”になった時に、家庭だったり、自分の中の大きな問題に直面します。後半はドラマの色もちょっと変わりますね、その分、松本さんのせりふ量も多くなり、どんどん大変になるのですが、頑張ってもらっています(笑い)」と明かす。チカラのこれからに注目だ。

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