2021年4～6月に放送されたテレビアニメ「オッドタクシー」で、アイドルグループ「ミステリーキッス」のメンバー・三矢ユキを演じた村上まなつさん。2018年にデビューした新人声優で、今年1月にスタートしたテレビアニメ「CUE！」「明日（あけび）ちゃんのセーラー服」にも出演するなど大活躍中だ。「オッドタクシー」ではテレビアニメの初レギュラーながら、真っすぐでピュアだが、謎も多いユキを見事に演じきった。「オッドタクシー」は「映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」（木下麦監督）が4月1日に公開されることも話題になっている。村上さんに「オッドタクシー」の熱演の裏側を聞いた。

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　◇誇張せずにナチュラルに　間を使うことも意識

　「オッドタクシー」は、タクシー運転手の主人公・小戸川が乗せる癖のある乗客とのやりとりが、一人の少女の失踪事件につながっていく……というストーリー。キャラクターは、可愛らしい動物ではあるが、実は本格的なミステリーで、テレビアニメが放送されると、先の読めない展開、複雑に張り巡らされた伏線、癖の強いキャラクターなどが話題になった。テレビアニメの最終回に驚かされた人も多かったはず。オリジナルアニメで、先が読めないこともあり、村上さんは、収録の前に展開について説明されたという。

　「ほかの方がどうだったかは分からないのですが、収録の前にプロットのようなシナリオをいただきました。ミステリー、サスペンスが好きなので、楽しんで読んでいて、こうなるの！？と驚きました。キャラクターもみんな個性的ですよね。ユキちゃんは最初、デザインを見て、可愛い！となりました。シナリオを読んで、自分に対してピュアで真っすぐな子なんだ！と感じました。ほかにも、言いたいことはあるのですが、ネタバレになるので（笑い）。気になったキャラクターは柿花です。守ってあげたくなるんです。よくないところもあるけど、純粋な気持ちがあり、見ていると母のような気持ちになります」

　「オッドタクシー」は、テンポのいい会話劇が魅力だ。先に声を収録してから映像を作るプレスコで収録した。村上さんが演じるユキは、見た目は可愛らしい黒猫だが、どこにでもいる女の子のような自然さがある。村上さんは「会話の自然さ」を意識して、ユキを演じた。

　「アフレコが始まる前、最終的な展開、キャラクターデザインの意味などを教えていただきましたが『それは気にせずに収録してください』というお話でした。動物ですし、最初はデフォルメしたしゃべり方なのかな？とも考えていましたが、『動物だけど、会話の自然さを重視して、普段のしゃべり方に近い感じ』というお話もあり、誇張せずにナチュラルに演じようとしました。プレスコで、仮の尺はあったのですが『あまり気にしないでいい』ということでした。プレスコは初めてですし、最初は、尺に合わせようとしすぎて『もっと自由でいい』とディレクションいただき、そこも意識していました。最後の方は、元の尺の1.5倍くらいでしゃべったところもあります。間を使うことも意識しました。新鮮でした」

　◇三森すずこ、小泉萌香は「すごく優しいんです！」

　村上さん演じるユキが所属する「ミステリーキッス」は、メジャーデビューを控える3人組アイドルグループ。三森すずこさんがセンターの二階堂ルイ、小泉萌香さんが市村しほをそれぞれ演じる。

　「序盤はミステリーキッスの3人で一緒に収録できました。私が一番後輩ですし、三森さん、小泉さんとは初めて会うので、緊張していたのですが、すごく優しいんです！　私が緊張していたことに気付いていただいていたみたいで……。いろいろお話していただけて、緊張が和らぎました」

　劇中の「ミステリーキッス」はギクシャクしているようにも見え、そこが生々しい。声優ユニット「DIALOGUE＋（ダイアローグ）」のメンバーとしても活躍する村上さんの目にはどのように映ったのだろうか？

　「アニメで、表面上仲良くしようとしている3人ですが、本音が出てくるところが新鮮でした。そんなこと言っちゃうんだ！？って（笑い）。面白いですよね。タクシーに乗っているシーンにもびっくりです。私はあんなことを言わないですよ！　一人じゃなくてみんなで移動しています（笑い）」

　劇中歌のアイドルソングのレコーディングにも挑戦した。

　「『超常恋現象』はとにかくアイドルソング！　可愛さを全押ししようとして、語尾を極端に上げ、やりすぎ！というくらい可愛さを出そうとしました。ユキちゃんはアイドルへの憧れが強いので、レコーディングできていることがとにかくうれしいはずですし、興奮する気持ちを込めていこうとしました。ブルーレイディスクボックスの特典用にも1曲歌わせていただきまして、レコーディングしたものの、発売されることがなかった曲……という設定で、これも斬新です。ラップ調なんです！」

　劇場版は、テレビアニメのエピソードを再構成し、衝撃の最終回の“その後”も描かれる。村上さんは、劇場版が公開されることを「最初は驚きました。また演じられるんだ！という喜びがありました」とうれしそうに語る。

　「一視聴者として、続きがあるの！？　早く台本を読みたい！という気持ちでした。新規収録したところも結構あるんです。証言というパートがあり、アニメでは語られなかった行動原理が明らかになります。新しい切り口で事件を見ることができ、より作品を深く知ることができます。テレビシリーズを見ていた方はもちろん、初めて見る方も楽しめる作品になっています」

　◇主人公の幼なじみの役をやってみたい！

　村上さんは「CUE！」で新人声優の九条柚葉、「明日ちゃんのセーラー服」で主人公・明日小路（こみち）などでも注目を集める新人声優だ。「オッドタクシー」では「プレスコが初めてで、自由度が高いので、どうすればいいんだろう？と悩むところがありました。決めすぎずに臨むことで、柔軟に演じることを勉強しました」と挑戦もあった。

　活動の中で、大切にしているのは「真っすぐさ」だという。

　「『オッドタクシー』のユキちゃんのように夢をかなえるための真っすぐさが大切だと思っています。難しいかも？と思ってしまうことも多いですが、私も目標に向かってがむしゃらに努力していきたいです。たくさんのキャラクターを演じ、作品、キャラクターに向き合っていきたいです。よりキャラクターを好きになっていただけるような声優になることができれば、うれしいです」

　「いつか、主人公の幼なじみの役をやってみたいです。主人公が好きなのだけど、報われない子……というのが、けなげで好きなんです。報われなくても笑顔でいるようなキャラクターを演じてみたいです」と語る村上さん。今後のさらなる活躍も注目される。