オリエント:Da-iCE花村想太&Lil’ Fang、梶原岳人 テレビアニメOP&ED制作秘話 「常識をぶち破る」

(左から)「オリエント」の第2クール「淡路島激闘編」のエンディングテーマを担当する梶原岳人さん、オープニングテーマを担当するLil’ Fangさん、花村想太さん
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(左から)「オリエント」の第2クール「淡路島激闘編」のエンディングテーマを担当する梶原岳人さん、オープニングテーマを担当するLil’ Fangさん、花村想太さん

 「マギ」で知られる大高忍さんのマンガが原作のテレビアニメ「オリエント」の第2クール「淡路島激闘編」が7月からテレビ東京ほかで放送されている。5人組男性アーティスト「Da-iCE(ダイス)」の花村想太さんとガールズ・ユニオン「FAKY(フェイキー)」のLil’ Fang(リル ファング)さんがオープニングテーマ(OP)「Break it down」を担当し、尼子勝巳役で出演する声優で歌手の梶原岳人さんがエンディングテーマ(ED)「色違いの糸束」を担当することも話題になっている。音楽で第2クールを盛り上げる花村さん、Lil’さん、梶原さんの3人に制作の裏側を聞いた。

ウナギノボリ

 ◇「オリエント」に共感 つまずいても立ち上がる 限界を超えていく

 --花村さんは、Da-iCEが担当した第1クールのOP「Break out」に続き、第2クールのOP「Break it down」も担当することになりました。

 花村さん 僕にとっては、2期連続なのですが、作品に携わらせていただけるのは、本当に幸せですね。「オリエント」に対しては「壊す」「常識を打ち破る」というイメージがあったので、第1クールの「Break out」から第2クールの「Break it down」では「Break」は残したまま、Lil’とより高い壁をぶち壊して行こうと思いました。

 --「Break it down」は花村さんが作曲し、歌詞は花村さんとLil’さんの共作です。Lil’さんは、OPを担当することが決まった時の率直な感想は?

 Lil’さん 私、普段から空き時間は全部アニメを見ているぐらいアニメが大好きで! 「オリエント」ももちろん原作を読んでいたので、めちゃくちゃうれしかったです。さらに尊敬している大先輩の想太さんと一緒に歌うなんて、プレッシャーの嵐で! 尋常じゃないぐらい手汗をかきました。

 --梶原さんは、声優としてアーティストとして「オリエント」に関わることになりました。

 梶原さん 僕もめちゃくちゃうれしかったです。ただ、演じている側でもあり、歌っている側でもあるということで、両方で作品を支えられるのか、自分の中ですごくプレッシャーもあって。そこを乗り越えていいものを出したいなと、一生懸命やらせていただきました。

 --「オリエント」の魅力は?

 Lil’さん バトル系の作品は、最初に主人公がチートスキルというか、特別な力を得たら、そこからスムーズに進む展開もあるじゃないですか。でも、「オリエント」は主人公たちが何度でもつまずいて、何度でもゼロからやらなきゃいけない。その葛藤の中で、確実に成長している。全員が勝ちじゃないし、全員が負けじゃないところに熱くなります。痛みを抱えながら戦っている姿を見ると、「もっと真剣に生きよう」という気持ちにさせられます。

 花村さん 僕は、序盤で主人公の武蔵が「武士になりたい」という夢を口に出せない葛藤を描いているのがすごく印象的で。生きていく中で夢を追い求める時に、誰かに夢をバカにされたり、止められたりという邪魔が入ってくるんですけど、一番最初に邪魔をしてくるのって、自分自身だなと思っていて。僕も小学校の時に自分の夢は歌手だと言えなくて、パン屋だと言っていたんです(笑い)。

 --「Break it down」にも「間違いと笑われた夢」という歌詞があります。

 花村さん 多くのマンガの主人公って、すぐに夢を宣言して突き進んでいくけど、「オリエント」は夢を語る葛藤を描いて、やっと夢を口に出したところからスタートする。その部分は、僕自身も影響を受けましたし、そういうものを音楽で描けたらいいなと思って「Break out」や「Break it down」を作りました。ほかの曲でも夢への思いが変わりました。

 梶原さん 僕はやっぱり自分が演じる尼子勝巳の目線で物語を見ていて、彼の気持ちがすごくよく分かるんです。彼は尼子武士団の当主の子息なので、団員たちの前では、強い自分でいなきゃいけない。自分の実力不足が分かっていても、それを外に見せるわけにはいかないし、苦しいけど笑顔でいなきゃいけない。そういう部分は、僕の仕事にも通ずる部分があるなと思って。僕自身、自分の限界は一番知っているけど、その限界を超えていかなきゃいけない。だから、すごく感情移入しやすい作品だなと思って読んでいました。

 ◇強さ、弱さ、優しさを込めた「Break it down」 一番やばいデュオに

 --OP「Break it down」はどのように制作されたのですか?

 花村さん 1番の歌詞は自分が作って、2番はLil’に書いてもらったのですが、すごくバランスよくできたかなと思いましたね。僕が書いた1番の歌詞をLil’に渡して、それを見てLil’が2番を書いてという、リレー形式で作っていきました。

 --Lil’さんは、花村さんが書いた歌詞を受け取ってどう感じましたか。

 Lil’さん すぐにオープニングのアニメーションが思い浮かぶぐらい作品と合っていて、テンションがめちゃくちゃ上がるような楽曲だなと思いました。それに、私と想太さんは歌って踊るという同じジャンルで活動していて、想太さんから「同じように戦っていきたいやん」という話をいただいていたんです。歌詞を読み返した時に、そういう思いも含まれているんだ、深いなと思って。

 花村さん Lil’から受け取った歌詞からは、力強さの中にちょっともろい部分も混じっていました。僕が知ってるLil’は、すごく明るくて、ずっとムードメークしている感じがしていたんですけど、歌詞を読んだ時に「あ、家では暗そうだな」とか(笑い)。力強い中にも後ろ向きな部分を感じたので、それをもう少しオブラートに包みながら一緒に支えあえるような歌詞に変えていけたらなって。Lil’は、すごく自信なさそうに歌詞を提出してくるんですよ。

 Lil’さん バレていました?(笑い)。

 花村さん もっと自信を持って書けばいいのにと。Lil’が書いてくれた歌詞と合わせて、強さも弱さも優しさも詰まっているような歌になりました。

 --作曲でこだわったところは?

 花村さん 普段は、楽曲制作の際に女性パートを決めたら、その3、4度下のキーで男性パートを歌うんですけど、今回はそれをやめたんです。いろいろなアーティストに「このデュオが一番やばいな」と思ってほしいなと思って。武蔵たちも自分より強い人たちを見ながら「負けねーよ!」と向かっていくじゃないですか。その気持ちは大事だなと思って。今回は女性のキーを決めたら、それを僕が歌って、その3度上をLil’に歌ってもらおうと思ったんです。だから、かなり高い。女性同士が歌っても高いぐらい、難しい曲になっています。

 --「Break it down」は、二人の歌声がぶつかり合うようなパワフルな曲になっています。梶原さんが楽曲を聴いた感想は?

 梶原さん すごすぎてため息しか出なかったです。爆弾と爆弾がぶつかるみたいな感じでした。声の圧力もそうだし、歌詞も刺さるし、とにかくエネルギー量がすごいと思いました。ここまでのエネルギーを声に乗せるって、本当に大変だと思います。めちゃくちゃ見習いたいと思いました。

 花村さん ぜひ、ファンの皆さんに「やばいぞ」と言ってもらえたら(笑い)。

 梶原さん やばいですよ!

 ◇梶原岳人の歌の説得力 花村想太が歌声から性格を分析?

 --EDの「色違いの糸束」では、「糸」をテーマに人と人の絆が描かれ、梶原さんの優しい歌声が印象的でした。

 花村さん 温かい歌ですよね。

 --最初に楽曲を聴いた時に感じたことは?

 梶原さん 自分のパーソナルな部分に合っているなと思いました。僕は、力強い曲があんまり歌えないんです。というのも、自分の中で表に出る気持ちよりも、内側にとどめている気持ちのほうが強いと感じていて。自分の芯はあるんですけど、外側に感情を出すことはあまりないので、そういうところが曲の雰囲気や込めているものにリンクしました。だから、思い切り歌い上げるというよりは、そっと押すような感覚で歌う曲だなと思いました。

 --「オリエント」の世界観を感じるところも?

 梶原さん 歌詞の「色違い」が「オリエント」で描かれる魂の色と通ずるような気がしました。「オリエント」では、自分が置かれた人生のレール上で過ごさなければならなかったり、生まれ持った色で戦わなければならない状況が描かれていて、それは現代で生きている僕たちにも通じる部分があるなと思いました。

 --花村さんとLil’さんは、梶原さんの歌を聴いて感じたことは?

 花村さん 優しさがすごく出ているなというのと、歌詞が本当に一つ一つ聞き取りやすかったです。やっぱり声優さんは言葉の立て方がきれいだなと感じました。エモーショナルな部分もあったので、梶原さん自身が気が強い部分もあるのかな?と、すごくギャップを感じました。秘めている感じがすごく伝わってきて、欲求がしっかりしているけど、大人なんだろうなっていう印象を受けました。

 梶原さん それは当たってます。大人かどうかは分からないですけど(笑い)。

 Lil’さん 想太さん、歌占いができそうですね(笑い)。私は梶原さんの歌を聴いて、すごく物語性を感じました。やっぱりお芝居をされている方ならではというか、抑揚の付け方であったり、1曲を通した説得力が段違いだなと思いました。自分が「オリエント」を実際に見ることを想像した時にオープニングの「Break it down」から始まって、ストーリーがあって、エンディングでこの曲が流れた時に全てを包み込んでくれるんだろうなって。答えをくれるような曲だなと思いました。

 --最後にファンへ向けてメッセージを。

 花村さん 「Break it down」を聴いて、ずっと折れない心を持ち続けてほしいなと思います。目標に向けて頑張っていると、ゴールって常に遠くなっていくんです。ゴールだと思っていたものが実は通過点だったと思う瞬間がたくさんあると思います。でも、そういうことも楽しく感じられるような曲になっていると思うので、ぜひ聴いてほしいです。

 Lil’さん 「オリエント」にも、この楽曲にもすごく教えられたなと思っています。皆さん、いろいろ悩みを抱えてらっしゃると思うし、生きていたらいろいろあるじゃないですか。そんな時に本当にきれいごとじゃなく、支えてくれる曲だなと思います。

 梶原さん 「オリエント」は、現代の世界とは違うバトルアクションではあるんですけど、キャラクターが思っていることや、置かれている環境は僕らの世界にも通ずる部分がたくさんあると思います。だから、エネルギーを皆さんに受け取ってもらえるようなものがアニメで出せたらいいなと思っています。それぞれ感じるものは違うと思うんですけど、何か受け取ってもらえるものがあればいいなと思っています。

 「オリエント」は、2018年に「週刊少年マガジン」(講談社)で連載をスタート。今年2月に「別冊少年マガジン」(同)に移籍した。突如、戦国時代に鬼神が飛来してから150年後の日ノ本を舞台に、武蔵と小次郎が“最強の武士団”結成を夢見て鬼神に立ち向かう。

 アニメは「ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~」などの柳沢テツヤさんが監督を務め、「湾岸ミッドナイト」などのA・C・G・Tが制作する。第1クール「安芸旅立ち編」が、テレビ東京ほかで1~3月に放送された。第2クールはテレビ東京ほかで放送中。

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