平川大輔:アニメ「永久少年」 豪華声優との共演は「濃厚」 20代“崖っぷち”経験も

「永久少年 Eternal Boys」に出演する平川大輔さん
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「永久少年 Eternal Boys」に出演する平川大輔さん

 “おっさん”がアイドルを目指す姿を描くオリジナルテレビアニメ「永久少年 Eternal Boys」が、10月10日からフジテレビほかで放送される。平川大輔さん、小西克幸さん、福山潤さん、浪川大輔さん、森川智之さん、佐々木望さんといった豪華声優が、アラフォーアイドルグループ「永久少年(エターナルボーイズ)」のメンバーを演じることも話題になっている。“崖っぷち”の元サラリーマンの真田健太郎を演じる平川さんに、豪華声優陣との共演、自身の“崖っぷち”の経験について聞いた。

ウナギノボリ

 ◇どういうこと? アラフォーアイドルは無理無理無理

 「永久少年 Eternal Boys」は、さまざまな成功や挫折を味わってきたおっさんたちが、年齢や体力の壁を乗り越えアイドルを目指す姿を描く。「HUNTER×HUNTER」などに参加してきたmigmiさんが監督を務め、ライデンフィルムが制作する。

 おっさんとキラキラしたアイドルという斬新な組み合わせに驚かされた人も多いはず。平川さんも「どういうこと?」と驚いたという。

 「最初、企画を拝見したのはオーディションの資料をいただいた時でしたが、おっさんがアイドルをやる……ということで、まず単純に、どういうこと?って思ったんです。あえて“おっさん”と書いていますし(笑い)。紆余(うよ)曲折あったアラフォーのおっさんたちがアイドルを目指すことになるということで、これは面白そうだ!何とかオーディションに受かりたい!と思いながら、サンプルを収録しました。ああでもないこうでもないと録(と)り直したことを覚えていますね」

 メンバーはいずれもアイドル経験があるわけではないというのも斬新だ。

 「若い頃からずっとキラキラでアイドルをやっていて、アラフォーにさしかかってるっていうリアルなアイドルの方々って、実はたくさんいらっしゃるじゃないですか。だから、全然おかしくはないんだよなとも思いつつ、若い頃からアイドルをやってきた方々ではなく、ここからのスタートなので、なかなか無謀なチャレンジだよね……とも思いました。僕がもし『あなた今日からアイドルやりなさい!』と言われたら、いやいや無理無理無理……となっちゃいます。そこに前向きに向かっていくおっさんたちが格好いい、すてきなんです。いつからでも、どんなことでも始められるというコンセプトは、自分の実年齢を考えても共感が持てます。単純に面白かったです」

 平川さんが演じる真田は、17年間働いた会社が倒産し、就職活動をするが不採用が続く。間もなく失業保険が切れるという崖っぷちのおっさんだ。

 「『どのキャラを受けていただいてもいいです』という感じだったので、真田のほかにも何役か受けさせていただいたのですが、この中で、真田が一番自分に近そうな気がするなあ……とも思いつつ、ほかのキャラクターでも全然面白いと思っていました。真田に決めていただいて、とてもありがたかったですし、うれしかったです」

 平川さんは、真田の印象を「とても真面目な人」と話す。

 「17年間、一つの会社で働き続けて、係長までなって会社のために働いてきたという自負もあったと思うんですよね。とにかくすごく真面目な人というイメージが強かったので、お芝居でも自分なりにそこを守っていこうとしました。会社がなくなってしまった後、就職活動を続けていく中で、年齢のこともあって、なかなか次の会社が決まらなかったのかもしれないですけれども、そこでどんどん後ろ向きになって、どうにかしなきゃいけないけど、どうにもならないんだ……と諦めがあったと思うんです。そういう部分をどういうふうに表現しようか?演じようか?とディレクターさんと相談してる時に『しゃべり始めの言葉、語頭に力がない感じでやってみませんか?』と言っていただきました。なんで、真田は面接に受からないんだろう?と考えた時、この人は覇気がなくて、真面目すぎるが故に段々、後ろ向きになってるのかな?と考えました。特に最初は、言葉に力が入っていないことを意識しました。PVを録(と)った時に『もっと抜いて!もっと抜いて!』となり、大丈夫かな?と思いながら収録していました(笑い)」

 ◇共演者が濃ゆい! 一番薄いのは僕かも?

 小西さんが元教師の石田直樹役、福山さんが戦力外通告を受けた元サッカー選手・浅井悠役、浪川さんが売れない演歌歌手だった今川剛役、森川さんが芸能事務所のマネジャーからアイドルに転身した山中大輔役、佐々木さんが元ナンバーワンホストの柿崎誠役として出演する。おっさんを演じる声優も個性的だ。

 「濃ゆい!ですよね。皆さん、すごくぴったりです。でも、もしかして、あんまりこういうイメージのキャラクターは見たことないかも?という方もいらっしゃったりして、キャストの方を拝見して一番薄いのは僕かも?と思いました(笑い)。そういう意味でも真田っぽくて、合ってるんじゃないかな?と自分に言い聞かせてスタジオに行きました。今川、浅井はキャラクターとして濃いですし、浪川大輔君、福山潤君のお芝居もすごく前に出ていきます。当たり前ですけど達者な方々ばかりなので、せりふにないところ、行間、言葉と言葉の間をつなぐ呼吸一つ、ちょっとした息のアドリブとかで、キャラクター感をすごく出しているんです。皆さんが、それぞれのキャラクターの濃度を思う存分表現している中で、僕は、この中では一番普通の人をやらなきゃいけない。メイン以外ほかのキャストの方々も濃いです。全体的に濃厚な作品です」

 個性的なおっさんたちが集まるとどうなるのか……も気になるところだ。

 「社会経験といっても、いわゆるサラリーマン経験があるのは真田と、山中くらいで、あとはJリーガーだったり、元子役さんとか、違う人生を歩んできてる人たちなんです。もっと若い人たちだったら、もっとぶつかるし、反発し合うし、殴り合いのけんかのシーンがあって、仲良くなる……ということもあるのかもしれないけど、アラフォーなので、そんな体力もないですし(笑い)。相手の様子をうかがうことができる人もいるから、小さないざこざはありますが、意外とみんながちょっとずつ気を使いながら、集団生活ができるのかもしれません。僕はやりたくはないですけど(笑い)。もしやらなければならないのなら、通いでお願いします!」

 同世代のキャストと共演する中で刺激を受けている。

 「同年代の方々と、これだけ集まる作品はそんなにないのかもしれません。僕は、年齢はちょっと上なんですけど、キャリアでいうと、多分一番下なんですよね。この中で、ジュンジュン(福山さん)と同じくらいのキャリアかな? 僕はウィキペディアに1997年デビューと書いてあるんですけど、1998年デビューなんです。収録は、単純にすごく楽しいですよ。お芝居のことについて、ここのカットが……などと演者同士でしゃべることはないんです。ただ、お互いが持ってきたものをその場で出して、出てきたものを聞いて、返す……というラリーは、恐ろしく楽しいです。昨今のコロナ禍の分散収録で、少人数や単独で収録することが多かったので、ラリーが特に楽しいんです。みんな、うまいなあ!と思います。気持ち悪いくらいうまいんです(笑い)」

 “うまい”キャストだから表現できるものもある。

 「皆さん、キャラクターよりも若干、年齢が上ですが、キャリアも積んで、修羅場もくぐってきてらっしゃる方々なので、さまざまな経験をお芝居に取り入れています。遊び心のある方々がそろっていますし、ミックスされた時の言葉の重みと軽さのバランスがすごくいい案配なんです。勢いのある作品ももちろん楽しいのですが、ふとしたせりふがボディーブローのように、ジーンと効いてくるようなところもあったりします。みんなでワー!と盛り上がり、バカやっているところもありますし、その案配が素晴らしいんです。この役者さんたちだからできたことなんですよね」

 ◇諦めることを諦めた20代 背水の陣で

 平川さんは「ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース」の花京院典明、「鬼滅の刃」の魘夢(えんむ)、「Free!」の竜ヶ崎怜、「School Days」の伊藤誠など数々の人気作に出演してきた人気声優だ。しかし、20代の頃は順風満帆だったわけではなく、真田のように“崖っぷち”だった経験があるという。

 「30歳までにこの仕事で食えなかったら、諦めようって思っていたんです。30歳が迫って、でも全然食えなくて、諦めることを諦めました。この仕事を辞めることを諦められなかったんです。当時、所属していた事務所の社長さんに『いくつになった? バイトを辞めろよ』と言われ、売り言葉に買い言葉みたいなところも半分くらいあったのですが、『分かりました!』とバイトを辞めたんです。食べられるほどではないけど、バイトでお休みをいただくこともあった時期で、ご迷惑をおかけしていた部分もあったので、辞めました。ある意味崖っぷちでしたが、その後くらいから少しずつ仕事をいただけるようになったんです。背水の陣でした。当時の社長には感謝しています」

 アラフォーになると新たなチャレンジに尻込みしてしまうこともあるかもしれない。真田のようにアラフォーでもチャレンジしようとする姿勢に感じるところもあった。

 「毎日が試験みたいなものなので、そういう意味ではチャレンジをずっと続ける仕事なのかもしれません。ただ、仕事から離れた時、新しいことにチャレンジしてるか?というと、やっぱりちょっと尻込みするところもありますね。体力的なこと、年齢的なことを考えてしまいます。今から? 無理無理?と、どこか否定から入ってしまうんでしょうね。この作品では、そこを超えていこうとします。たまたま集められた人たちで、凸凹していて、きれいな円ではないんですけど、そのいびつな形がうまくはまっていくんです。この作品を見て、新しいことにチャレンジできるんじゃないか?と思っていただけたらうれしいですね。そう思っていただけるように、頑張っています。

 「永久少年 Eternal Boys」は、チャレンジしたくてもできない人の背中を押すような作品になっているようだ。

 「同世代の方にも見ていただきたいですいね。おっさんたちの楽しみは、夜に合宿所で飲んだくれることなんです。そういうシーンも僕らの年代に刺さります(笑い)。精いっぱい頑張って、その後においしくビールやハイボールを飲む姿がほほ笑ましいんです。共感していただける部分もあるはずです」

 チャレンジに年齢は関係ない。アラフォー以外にも幅広い層も楽しめる作品になっているはずだ。設定は斬新だが、普遍的なテーマが描かれているのかもしれない。おっさんたちの活躍、そして平川さんら豪華声優陣の熱演に期待したい。


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