人気アニメ「ガンダム」シリーズの劇場版「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」(村瀬修功監督)のテレビエディションの第1話にあたる「1/4『ランディング・グラウンド』」が、MBS・TBS系の日曜午後5時のアニメ枠“日5”で1月15日に放送される。「閃光のハサウェイ」は、1989~90年に富野由悠季監督が発表した小説が原作。「映像化不可能」とも言われていたが、小説の発表から約30年たち、2021年に劇場版が公開されると、映像美が話題になった。公開当時、スタッフを取材する中で「映像的なチャレンジだった」「『ガンダム』にとって一つのターニングポイントになった」という声を聞いた。スタッフの証言を基に「閃光のハサウェイ」の映像美を解説する。
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「閃光のハサウェイ」は、宇宙世紀0105年を舞台に、第二次ネオ・ジオン戦争で苦い別離を経験したブライト・ノアの息子ハサウェイが、新型モビルスーツ・Ξ(クスィー)ガンダムを駆って、地球連邦政府に反旗を翻す姿を描く。アニメは「虐殺器官」の村瀬さんが監督を務める。全3部で、第2部「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ『サン オブ ブライト』(仮題)」が制作中。テレビエディションは全4話。
「閃光のハサウェイ」は「映像化不可能」とも言われてきた。同作に登場するΞガンダム、ペーネロペーの形状が複雑で、モビルスーツ(MS)戦の表現が手描きでは難しいのが、理由の一つだった。小説は、森木靖泰さんがメカデザインを手がけ、約30年前のデザインではあるが、今見ても魅力的だ。ただ、アニメとして動かすのが難しい。例えば、Ξガンダム、ペーネロペーには袈裟(けさ)のようなパーツが付いており、アニメで動かそうとすると整合性がとれないこともあるという。
「ガンダム」シリーズは、手描きのMS戦が魅力の一つではあるが、「閃光のハサウェイ」では、3DCGと手描きを融合して、「映像化不可能」とも言われた複雑な形状のΞガンダム、ペーネロペーを表現した。Ξガンダム、ペーネロペーはミノフスキー・フライトと呼ばれる飛行技術によって重力下で動き回る。3DCGによって手描きでは難しい微妙な動き、パースの変化を表現したのに加え、光源による影の変化にもこだわった。
アニメを手がけるバンダイナムコフィルムワークスの小形尚弘プロデューサーに取材した際に「日本のアニメは手描きの技術が優れています。それをさらに生かすために3Dも使っていかないといけません。『UC』の時は手描きの頂点を目指しましたが、これまでやってきたことを一度壊して、新しいものができたと思います」と自信を見せていた。
手描きを中心としたMS戦の最高峰とも呼ばれる「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」など、これまでも最高を更新してきたが、「閃光のハサウェイ」は、手描きと3DCGを融合させることによって“さらにその先”を表現したようにも見える。
市街戦も印象的だ。巨大なMSが街に現れ、戦いを繰り広げる。戦いに巻き込まれた人間の視点でもMS戦が描かれ、没入感があり、戦争の恐ろしさを感じる。「ガンダム」シリーズではこれまでも戦争に巻き込まれる人々を描いてきたが、「閃光のハサウェイ」は圧倒的な映像美、リアリティーによって表現をアップデートしたようにも見える。リアリティーも「閃光のハサウェイ」の映像の魅力の一つになっている。
小形プロデューサーは、村瀬監督の作品への向き合い方について「実写志向と言いますか、現場も途中からアニメを作る感覚ではなかったです」と話していたのが印象的だった。
村瀬監督に取材した際、「リアリティーを高めたいと考えたというよりも、画(え)から得られる情報量を上げるには、そうするしかない」とも話していた。「閃光のハサウェイ」では、実写映画のように、せりふで説明するよりも、画で説明したという。キャラクターだけではなく、背景でも状況を説明したといい、「実写ではそういうこともしますが、アニメの場合、せりふで説明してほしい人もいるかもしれません。テレビでやろうとすると、せりふで説明しないと、誰も気付かないかもしれない。映画だからできたことです」と話していた。
「閃光のハサウェイ」は、アニメで常識とされていることに捕らわれず、大胆な手法で作られた。“壊す”ことは勇気が必要だが、その決断をしたからこそ、映像美を実現したのだろう。
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