俳優の北村匠海さんと中川大志さんがダブル主演を務める映画「スクロール」が2月3日に公開された。映画は、音楽ユニット「YOASOBI」の大ヒット曲「ハルジオン」の原作者でも知られる橋爪駿輝(はしづめ・しゅんき)さんの同名小説(講談社文庫)が原作。国内外で数々の受賞歴を持つ清水康彦さんが監督・脚本・編集、米津玄師さんやあいみょんさんらのミュージックビデオ(MV)を手掛ける川上智之さんが撮影監督を務めている。今作で〈私〉役を演じる女優の古川琴音さんに、役作りや共演者の印象、役者として活躍が続く現状、今後の展望を聞いた。
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本作は、理想と現実のギャップにもがきながら、社会や自分と懸命に向き合う若者らの姿を描く青春群像劇。SNSに思いをアップすることで自分を保つ〈僕〉(北村さん)と、毎日を刹那(せつな)的に生きるユウスケ(中川さん)は、学生時代の友人の死をきっかけに、“生きること”や“愛すること”を見つめなおしていく。そんな〈僕〉の書き込みに共鳴し、特別な自分になりたいと願う〈私〉と、ユウスケとの結婚が何もない心を満たしてくれると信じる菜穂(松岡茉優さん)の時間が交錯していく……。
本作の印象を、「監督も『物語は自分たちの物語』『みんなの物語だ』とおっしゃっていましたが、社会に出ていろいろな壁にぶち当たっている私たちの物語だなと感じました」と話し、「読んでいて周りの友達や兄弟など、たくさんの人のことを思い浮かべながら読んだ台本は初めて」と驚きを明かす。
作品の共感性の高さを強調する古川さんは、自身が演じる〈私〉について、「すごく好きな役。自分がどう生きていくか。何をこれから大切にしていくかを、登場人物の中で一番、分かっている人だと思いました」と語る。
役作りで意識したことを聞くと、古川さんは、「〈私〉という存在、役に自分がほれ込んでしまったので、〈私〉は素晴らしい人だという気持ちが一番の役作りになった」と明かす。
本作に限らず、「どの役も基本、この役のこういう部分が好きとか共感できると思えるところから広げていき、どんどん深掘りしていく」と自身の役作りのスタンスを説明。今作で役柄に強くのめり込んだといい、「今回は特にその役が好きという気持ちが強く、特に好きなキャラクター」だったと話す。
演じていても、「強い人だなと思いました。妄想はできても実際に行動にできないことを彼女はしていくので、やりながらパワーをもらったような感じがしました」と撮影を振り返り、「演じていて気持ちがいいです(笑い)。自分が彼女になれたのが、すごく楽しかった」と笑顔を見せる。
劇中でたびたびアグレッシブな行動を見せる〈私〉は、自分の気持ちに正直だが、古川さん自身は、「好き嫌いを説明しづらいのもあるし、思っていても周りの人には言わない」といい、「〈私〉は何でも表明している印象ですが、『こういう人間だ』とやろうとしてやっているのではなく、周りの刺激に対する反応みたいなもの。そのときに周りの環境に流されず、『私はこうだから』と言い切れるのはすごい」とうらやんだ。
古川さんは昨年、初頭に上演されたミュージカル「イントゥ・ザ・ウッズ」を皮切りに、NHKの主演ドラマ「アイドル」、同局の人気シリーズ「岸辺露伴は動かない」など、多くの作品に出演。今年も「スクロール」のほか、NHK大河ドラマ「どうする家康」にも今後登場するなど、活躍が続く。
「初挑戦のことがたくさんあって、飽き性なので(デビューして)4年くらいで飽きるなんて言ったらよくないですけど、そんな暇はなかったです(笑い)。次のステージに行けば行くほど新しいステージがあることを身をもって感じましたし、ワンランクアップしたようなイメージです」
役者として求められている状況については、「すごくうれしい」とにっこり。「オファーしてくださる役も一つの色に限らずいろんな役をいただいていて、ある意味『自分のカラーが決まらない』のは役者としてすごく得だし、いろいろな役をやることが自分の糧にもなっている。いろいろなイメージにチャレンジさせてもらえて幸せ」と充実感をにじませる。
デビューから5年を迎え、自身の成長した部分を、「その場になじむようになったこと」と切り出し、「この仕事を始めたとき“正解”があると思っていた。だから自分で演じるとき、こうしたいとか何が何でもこうと思っていたけど、芝居だと不自然なことに気がついた」とも告白。
その結果、「自分が用意していたとしても、そこで動いた気持ちに正直になることが大事な部分もあることも分かってきて、仕事を始めたときよりも自由になりました」と語った。
そんな古川さんは現在26歳。30歳までにやっておきたいことを聞くと、「肉体面や覚えられることを“貯蓄”したい。技術として体に入れられるのは20代が一番いいと思うので、やってみたいことは何でも挑戦したいし、自分にはできないとか自分の世界観とは違うと思うものにもチャレンジできるのが20代では。あまり拒まずやってみたい」と意気込んだ。(取材・文・撮影:遠藤政樹)
※クレジット(敬称略)
ヘアメーク:伏屋陽子(ESPER)/スタイリスト:藤井牧子
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