ドラゴンボールDAIMA
第6話 イナヅマ
11月18日(月)放送分
声優で歌手の青山吉能さんの初のアルバム「la valigia(ラ ヴァリージァ)」が3月8日に発売される。青山さんの魅力は圧倒的な歌唱力だ。青山さんに歌への思い、アルバムについて聞いた。
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アルバムタイトルの「la valigia」は、イタリア語で「旅」「旅支度」「スーツケース」という意味がある。青山さんはアルバムでさまざまな表情を見せる。可愛いらしく歌ったかと思えば、自分自身を赤裸々にさらけ出し、クールで格好いい歌声も聴かせる。特に印象的なのがリード曲の「透明人間」だ。同曲は、シンガー・ソングライターのヒグチアイさんが作詞作曲を手掛けた。
「元々、ヒグチさんをすごく尊敬していたんです。だからといって、曲を書いてもらおうとはあんまり考えたことはなかったのですが、元々、私のアーティスト活動に携わってくださっているプロデューサーの方が、ヒグチさんがデビューの時から数年間担当されていた方だったんです。私は音楽に詳しいほうではないのですが、そんな私にとってヒグチさんは大事なアーティストですし、ひょっとしたら何かの縁、運命なのかもしれない……と勝手に感じていました。私が初めて作詞をする時も『ヒグチはこうしていたよ……』というお話を聞いていました。そういう縁もあり、曲をお願いできたんです」
ヒグチさんがアルバムに参加することになったのは運命だったのかもしれない。楽曲制作にあたり、青山さんは、ヒグチさんに自分自身をさらけ出し、ヒグチさんはそれを受けて、曲を作った。
「生半可な気持ちでは歌えない曲です。デモテープをいただき、仮歌、演奏も全てヒグチさんが一人で録(と)ったものでした。最初、デモをいただいた時は、ヒグチさんの新曲にしか聴こえなかったんです。どうしよう!?という気持ちも正直ありました。この曲は私の内面、あんまり人に言いたくない、人に見せてはいけないと言われている部分を出さなきゃいけない曲です。ちょっとでも自分の魂と違う部分があったら、拒否反応が起きてしまいます。でも、完璧に私なんです。私が書いてるわけでもないのに。例えばサビに『透明人間でいさせて』という歌詞があるのですが、ヒグチさんとお話しした時、私は『私、透明人間になりたいんです』と言ったわけではありません。私がベラベラと自分の人生について話した中で、このワードが生まれてきたんだ……と感動しました。私が、ヒグチさんを好きになったのは、感情を言語化しているところだったのですが、この曲で私の人生をヒグチさんに任せたら、こんな素晴らしい曲を作っていただけたんです」
“完璧に私”の曲になったのは、編曲を担当した木原良輔さんの力も大きかった。
「デモは、ピアノとヒグチさんの声のみでした。私は、ピアノバラードでしっとり、だけど激情的に歌うのかな?と思っていたら、ヒグチさんは『この曲はもっとギターがギャンギャンしていたほうがいい』とおっしゃっていました。木原さんにアレンジしていただき、バンドサウンドになり、青山吉能の曲として持ち上げていただきました」
同曲の「いまだ旅の途中」という歌詞もアルバムタイトルにつながっていて、アルバムを象徴する曲に仕上がった。青山さんは「青山吉能の名刺のような曲です。私ってこういう人なんです!とうそ偽りなく描かれています」と自信を見せる。
青山さんは「moshi moshi」「Page」「たび」では作詞に挑戦した。「たび」はパッケージ版のボーナストラックで、配信されない。同曲にも特別な思いがあった。
「『Page』がソロデビュー曲なのですが、実は『たび』は、その前にできていたんです。2021年12月に私がプロデュースしたライブがあり、そのライブのために作った曲です。ファンの方にファンレターの返事がなかなかできなくて、いつもそれがもどかしくて、お手紙を返したい気持ちを曲にしました。『たび』は、そのライブを見に来てくださった方しか知らない曲です。特別な曲ですし、あえてボーナストラックにして配信しないことにしました」
「たび」で初めて作詞に挑戦したが、一筋縄ではいかなかった。青山さんは「二度とやりたくない。前向きにやりたくない」と振り返る。
「2021年12月のお披露目に向けて、9月くらいから書き始めました。12月までの3カ月間、心ここにあらずで、ずっと作詞のことを考えていました。小学生の作文みたいな歌詞しか浮かばないけど、せっかく作詞するんだから、格好いいものにしたい。抽象的でよく分からないものも書きたくない。ファンの皆さんへの気持ちといっても、そもそもファンの皆さんとは?といろいろなことを考えすぎちゃうタイプなので、全然できなくて。声優としてのお仕事をやりながらも、心のどこかにいつも『作詞終わってないよね』という気持ちがありました。寝る前に『今日は頑張ったな!』となっても『いやいや、頑張ってないじゃん! 作詞!』となったり。精神衛生上、全くよろしくなかったんです」
歌詞が完成したのは締め切りギリギリだった。
「締め切りの直前になって1文字も浮かばなくて、才能ないな……と落ち込んだけど、もうほかの方にお願いできるタイミングでもなかったんです。だから自分でなんとかしなきゃいけない。深夜にファンレターを入れている箱をひっくり返して、読み直しました。私はなんで歌おうとしたのか?と原点回帰しようとしたんです。お手紙の言葉が自分の中で広がっていくようで、私はみんなのために歌いたいし、だから自分の言葉で届けよう!という思いが湧き出てきました。できたのは朝5時でした」
「やればできるんじゃないですか」とも感じるが……。
「そう思われたんです。『まだまだできますよね!』と言われて『違う違う違う!』と否定しました。『この3カ月の下積みがあったからできたんです!』と話したのですが、なかなか分かってもらえなくて……。結果的に『Page』ができたからよかったんですけど、それは結果論であって、作詞をしていると、本当にいろいろなものに支障が出まくるんです。インプットしたものを上手にアウトプットできる方もいらっしゃいますが、私はインプットがままならないから、元々あるものを削るしかない。かつお節みたいに、削って削って、チョロッと出てくる。すごく燃費が悪いんです。すごい人は、燃費がいいんだと思います。私にはできません。削ったものが癒えないとできない。癒えた時がきたら、またやってみたいのですが」
青山さんが“削る”のは歌も同じだ。ライブで青山さんの歌を聴いたことがある人なら分かるはず。魂を込めて歌っている。
「不器用なんです。歌うのはすごく好きだし、楽しいのですが、ほかの人が“1”の力でできることが“3”くらいかかるんです。それが積み重なって、“2”でできることが“6”、“3”が“9”となっていくと、その分、力が必要になります。ただ、全ての曲に対して妥協なしで向き合いたいし、自信を持ってやりたいんです」
全ての曲に対して“1”の力でできることを“3”の力を込めて向き合った。
「今まで自分らしく歌うことはあんまりなかったんですね。キャラクターソングは、自分を出し過ぎるのが嫌で、キャラクターを象徴する曲として歌います。アルバムで、自由に青山吉能として歌う中で、台本をいただいてキャラに寄り添うように、曲に寄り添おうとしました。今回のアルバムも頭の3曲の『Sunday』『あやめ色の夏に』『moshi moshi』だけ聴いても、3曲とも違う人みたいです。『Sunday』を表現できる歌はこれだ!というように、それぞれの曲に寄り添おうとしました」
青山さんは小学校、中学校、高校とコーラス部で活動してきた。歌うことがずっと好きだった。
「小学生の時は、目立ちたがりだったし、コーラス部に入ったらすごく楽しかったんです。私の歌のうまさにみんながひれ伏してしまう!くらいの自信を持ってやっていました。なぜか全てに自信があったんです。ニコニコ動画の黎明(れいめい)期で、踊ってみた、歌ってみた、とかが流行していて、私がやっちゃったら無双しちゃうな?と思っていたり」
中学生になって変化があった。コーラス部で歌唱力を培っただけでなく、人間としても成長できた。
「コーラス部が強い中学校に行きたいと思って受験しました。すごい強豪校、全国大会で入賞して当たり前みたいな学校だったんです。才能もあり、人格もできている人しかいなくて、私のように中途半端に目立ちたい人なんていないですし、そんな人は淘汰(とうた)されてしまいます。それに、実力主義だったんです。実力がないと、生きていけない……と気づいたんです。でも、ここで折れるような人間ではない!とも思っていて、何とか食らいつこうとしました。中学校の部活で得たものは今の人格形成にもつながっています。先生、先輩方、みんなに出会っていなかったら、絶対に声優になれていなかったと思います」
ずっと歌うことが好きだったが、一人で歌ってきたわけではない。
「小中高とコーラス部で、みんなと一緒に歌うことがすごく好きでした。みんなで歌うことで生まれるハーモニー、崩れない音圧などのとりこになっていたんです。みんなで作るものにすごく意味があると思っていて、高校の途中からユニット(Wake Up,Girls!)に参加させていただくことになり、ユニットもみんなで作ることがすごく楽しかったんです。だから、一人だったら絶対できないと思いながら、楽しく活動していました」
今後の活動にますます注目が集まる青山さん。最後に今後、アーティスト活動で挑戦したいことを聞いた。
「ライブをやりたいと思って、進んできたソロプロジェクトなので、いつかはアルバムの曲を披露するライブをやってみたいです。これまでも青山吉能名義でライブもやらせていただきましたが、自分の曲は数曲しかなくて、基本はカバーだったんです。アルバムが完成し、11曲もあるので、ほぼ自分の曲でライブができます。一体どうなってしまうんだろう?と初めてのことに直面します。年を取れば取るほど初めてのことはなくなっていくものですが、26歳にして生まれて初めての経験ができることにワクワクしています。不安も期待もあるのですが、頑張っていきたいです」
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