りんたろう監督:山中貞雄監督に捧げた新作 サイレントアニメ制作の経緯 「新潟国際アニメーション映画祭」で語る

「第1回新潟国際アニメーション映画祭」の「山中貞雄に捧げる漫画映画『鼠小僧次郎吉』」のトークイベント
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「第1回新潟国際アニメーション映画祭」の「山中貞雄に捧げる漫画映画『鼠小僧次郎吉』」のトークイベント

 新潟市内で開催中の長編商業アニメの映画祭「第1回新潟国際アニメーション映画祭」で、アニメ「銀河鉄道999」「幻魔大戦」などで知られるりんたろう監督の約14年ぶりとなる新作アニメ「山中貞雄に捧げる漫画映画『鼠小僧次郎吉』」が上映された。1933年に公開された山中貞雄監督の映画「鼠小僧次郎吉 江戸の巻」をりんたろう監督がサイレントアニメ化した。「AKIRA」などで知られるマンガ家の大友克洋さんがキャラクターデザインを手がけ、小山茉美さんが弁士役として出演する。上映後、トークイベントが開催され、りんたろう監督、アニメを手掛けたスタジオM2の丸山正雄プロデューサー、声優の小山さんらが登壇した。

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 りんたろう監督は山中監督との“出会い”を「山中貞雄という名前を知ったのは20代の頃。テレビアニメの創世記、大人のアニメをテレビでやりたいということで、石ノ森章太郎さんと時代劇をやったんです。時代劇をやるから考証のために監修を付ける。松田定次さんに監修に付いてもらいました。松田さんとお茶を飲んでいる時『実はすごい監督がいるんだ』と、山中貞雄の名前を聞いた。映画祭で『人情紙風船』を見たけど、日本では見るチャンスがなかなかない。DVD、VHSの時代にやっと見られるようになった」と振り返った。

 丸山プロデューサーは、りんたろう監督がアニメを制作することになった経緯を「何とかりんたろう監督のアニメを見たい。何を言ったら、やってくれるだろう? 山中貞雄だ。引き出すには山中貞雄だったんです。山中貞雄のすごさを残して、伝えていきたい。アニメーションで何を残せるか? 僕らのような年寄りがやるしかない」と説明した。

 りんたろう監督は「告知で14年ぶりとなっているけど、浦島太郎のようだった。久しぶりにアニメの現場で、全てが変わったと思った。自分なりにやれるとしたら……と丸山と作ろうとした。自分たちのスタイルでやる。日本の映画の大元に戻ろうとした。それで作ったのがこの作品です」と制作に臨んだ。

 サイレントアニメとして作ることになり、りんたろう監督は「今の若い人にとって、サイレンはお呼びじゃないかもしれない。自分の趣味だけど、せりふをバラバラしゃべるのが苦手。ストーリーをしゃべっているものも多い。せりふじゃなくても画(え)で表現できるのがアニメーション。ただ、山中貞雄のフィルムがない。どうやろうか? 脚本を使いながら、今風に変えるのではなく、山中貞雄の気分を表現しようとした」と思いを込めたという。

 りんたろう監督は、小山さんに弁士役をオファーした。小山さんは「丸山さんとはアニメーションを始めた頃、『大空魔竜ガイキング』でヒロインをやらせていただき、『幻魔大戦』『カムイの剣』……と数え切れないほどお世話になりました。今回は弁士ということで、びっくりしました。無理です!とお話ししたんです。『そのままやるんだったら頼まない』『考えて』とおっしゃって、本当に悩みました。私が芸能界でデビューしたのは10代で、無声映画だったんです。ドラマ、アニメ、洋画の吹き替えをやらせていただいて、久々の無声映画です」と引き受けた。

 りんたろう監督は、小山さんの演技を「素晴らしい! 音楽は本多俊之さんで、すごくバランスがよくて、マッチした」と絶賛し、小山さんは「冒険、実験で新しい試みになって感謝しています。セッションみたいな感覚でした」と笑顔で語った。

 トークイベントには、大友さんがサプライズで登場したのに加え、スタッフが壇上に上がり、同作への思いを語った。

 「第1回新潟国際アニメーション映画祭」は、長編アニメのコンペティション部門を設けたアジア最大の祭典を目指し、新潟から世界にアニメという文化を発信していくのが狙い。「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」「機動警察パトレイバー」などで知られる押井守監督が審査委員長を務めることも話題になっている。3月22日まで。

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