佐藤元×千本木彩花×山村響:「天国大魔境」の衝撃 コロナ禍の分散収録が作品にリンク

「天国大魔境」の一場面(C)石黒正数・講談社/天国大魔境製作委員会
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「天国大魔境」の一場面(C)石黒正数・講談社/天国大魔境製作委員会

 「それでも町は廻っている」などで知られる石黒正数さんの人気SFマンガが原作のテレビアニメ「天国大魔境」が4月1日からTOKYO MX、MBSほかで放送される。原作は、2018年から「アフタヌーン」(講談社)で連載されており、「このマンガがすごい!2019」(宝島社)のオトコ編1位に選ばれた話題作。人食い(ヒルコ)と呼ばれる異形の化け物が巣食う日本を舞台に、東京・中野で便利屋を営むキルコは、とある女性から「この子を“天国”に連れて行って」という謎の依頼を受け、少年・マルと共に“天国探し”の旅に出る。アニメは、Production I.Gが制作し、佐藤元さんがマル、千本木彩花さんがキルコ、山村響さんが壁の中の世界で暮らすトキオを演じるなど豪華声優陣が出演する。佐藤さん、千本木さん、山村さんに謎多き同作について聞いた。

ウナギノボリ

 ◇異常に見える世界も演技は素直に

 --原作を読んだ印象は?

 佐藤さん これは何だ!? 何がどうなっているの?と不思議な感覚になりました。見たことがない世界が広がっていて、混乱から始まるという初めての体験でした。徐々にいろいろなことが分かってくると、最初に戻って読み直して、そういうことなんだ!となったり。謎解き要素も強いのですが、それだけではないところもあります。

 千本木さん 私も謎が多いまま読み進めました。天国側は特に分からないことが多く、どういうつながりがあるんだろう?と読み進め、最初に戻りました。いろいろなところに伏線があり、読み応えがあって、何度読んでも面白いし、新しい発見があります。

 山村さん 私も最初に読んだ時の衝撃がすごかったですね。第1話からすごく引き込まれて、続きが気になり、どんどん読み進めました。最初に戻って読み直すのもすごい面白いのですが、最初に読んだ時の衝撃が大きすぎて、アニメを見る時は、記憶を消して真っさらな状態で見たくなりました。

 佐藤さん すごく分かります!

 山村さん アニメから入る人が羨ましい……。知識がない状態でアニメを見ると、また違う面白さがありそうなので。

 佐藤さん 皆さんがアニメを見て、どう感じるかを知りたいです。

 --演じる中で意識したことは? トキオは謎も多く難しいキャラクターだと思うのですが……。

 山村さん 原作以外の情報は知らないまま収録していて、トキオは、ニュートラルな立ち位置のキャラクターなので、自分の中から出てきた感情を素直に出して、ウソのないお芝居をしていようと心がけました。難しそうなキャラクターに見えるかもしれないですが、私は素直に演じようとしました。

 千本木さん キルコはいろいろな事情がある子ですし、分からないことも多いのですが、人間の本能で何がしたいのか? 何が楽しいのか?を考えました。深く考えるんですけど、そこを表現するのはまた違うので、自分の中に落とし込んで、気にせずに演じようとしました。

 佐藤さん マルは、自分自身が何者かを知らないところから始まるので、困りましたね。とりあえず美少年であること、行動や言動、性格などは分かるんですけど……。人間は多面性があり、そこに至る過程があるものですが、あまりに素直だから、自分の直感を信じるしかなかったんです。監督さんと相談しながら、直感が正しいかどうかを導いていただこうとしました。魔境側は荒廃した世界なので、緊張感を持った方がいいのかな?とも考えていたのですが、実は「そこまで緊張感を持たなくてもいい」というお話もありました。怖い世界に見えるけど、彼らは、それに慣れているんです。宝探しをするような感覚で、この世界を生き抜こうとしています。そこが難しかったですね。自分たちがこんな世界に入ったら、慌てるでしょうし。

 千本木さん 彼らにとっては、当たり前の世界なんですよね。

 山村さん それが普通だから、違和感を覚えるわけではないんです。その不気味な感じが面白いんです。

 ◇度肝抜かれる映像に

 --マルとキルコは掛け合いも多いですが、共演する中で感じたことは?

 佐藤さん 楽しかったです。どこまでナチュラルにするかを考えていました。状況が緊迫していたとしても、彼らにはそれが普通ですし。

 千本木さん 二人の空気感を大事にしていました。マルから見たキルコ、キルコから見たマルの印象がそれぞれ違うかもしれません。そこも面白いところです。

 佐藤さん 見る人によっても違うかもしれませんね。例えば中高生が見たら、年上のお姉ちゃんに憧れる感覚、20代くらいの人が見たら、恋人になりたいのかな?と感じるのかも。いろんな見方ができます。ただ、バディー感があって、不思議な信頼感もあります。

 千本木さん 男の子同士が一緒に進んでいく感覚なのかもしれません。仕事仲間というよりもバディーなのかもしれません。

 佐藤さん 安易に愛情とは表現したくない関係なんです。

 千本木さん 恋人じゃないですしね(笑い)。

 --山村さんは、佐藤さん、千本木さんと一緒に収録した?

 山村さん 全く別だったんです。コロナ禍の分散収録ということもあって、天国チーム、魔境チームは別に収録していて、それが作品の世界にマッチしていました。魔境チームの2人とはスタジオですれ違うことはありましたが、お芝居を見ていなくて、完成した後の映像で、初めて見ました。

 佐藤さん 天国チーム、魔境チームのキャラクターの状況とキャストの状況をリンクさせたかのように、スタジオですれ違うことはあるけど、一緒に収録することはなかったです。まるで分散収録を逆手に取ったのかと思うくらいでした。

 千本木さん 同じ作品をやっているのに、なかなか会わない(笑い)。この作品でこうやって山村さんとお話しするのも今日が初めてですしね。

 --完成した映像を見た印象は?

 山村さん 解釈一致!

 佐藤さん&千本木さん ありがとうございます!

 山村さん 実はマルでもオーディションを受けさせていただいたんです。まだ声変わりしていない少年をイメージしていて、男性の方だからどうなるんだろう?とも思っていたのですが、思春期独特の感じ、幼さ、青さ、物語が進んで成長していく感じがすごいんです。キルコは一番難しい役柄だと思いますが、ナチュラルにいろいろなことがカムフラージュされていて、真実が分かった時の衝撃も大きいと思います。

 千本木さん マルを受けていたことを初めて聞きました! 天国チームは皆さんもぴったりですよね。トキオは、謎が多く、不思議な感じがぴったりで、すごい!となりました。
 
 --最後に放送を楽しみにしている人に向けてメッセージをお願いします。

 佐藤さん 日本だけでなく、世界中の方が度肝を抜かれるんじゃないかと思っています。原作を読まれている方は、コマとコマの間の動きにこんなことがあったんだ!?となって、絶対にご満足いただけるはずです。動くことで、より謎が深くなるところもあります。とことん楽しんでいただきたいです。

 千本木さん PVの映像もすごいのですが、本編もクオリティーがとにかくすごいです。音楽もすごいです! ライトにも見ることもできますし、深掘りして楽しむことができるので、皆さんで考察をしながら、原作を読みつつ見ていただきたいです。

 山村さん 原作を読んでいた時からすごく動きが伝わってくると感じていたのですが、アニメになり、想像していた以上のすごいものになっています。カメラワーク、演出がすごく、音楽もすごく格好いいですし、皆さんのお芝居もすごい! アニメになったからこそ伝わってくることもあります。原作を読んでいない方も楽しめますし、原作のファンの方も納得していただけるクオリティーになっています。ぜひ見てください!

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