水瀬いのり:「山田くんとLv999の恋をする」 普通の女子大生役で発見 そぎ落としていく演技を

「山田くんとLv999の恋をする」に出演する水瀬いのりさん
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「山田くんとLv999の恋をする」に出演する水瀬いのりさん

 マンガアプリ「GANMA!(ガンマ!)」で連載中のましろさんのラブコメディーマンガが原作のテレビアニメ「山田くんとLv999の恋をする」。予期せぬ失恋に落ち込む女子大生・木之下茜とゲーマー男子高校生・山田秋斗の“難攻不落”の恋を描いた作品で、水瀬いのりさんが茜、内山昂輝さんが山田をそれぞれ演じる。クールな山田に対して、茜はポジティブでコミュニケーション能力が高い。茜は“普通”の女子大生でもある。水瀬さんは茜を演じる中で「“普通”を演じるために、いろいろなものをそぎ落としていかないといけませんでした」と感じていたという。水瀬さんに、同作への思いを聞いた。

ウナギノボリ

 ◇“普通”を演じるために

 「山田くんとLv999の恋をする」は、「第6回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」で大賞に選ばれ、コミックスの累計発行部数が200万部を突破した話題作。アニメは、TOKYO MXほかで毎週土曜深夜0時半に放送中。

 水瀬さんは、原作を読んで「山田は、現実世界にはあまりログインしていないのですが、茜が現実世界で山田を引っ張ります。山田はオンラインゲームで茜を引っ張ります。交わるはずのなかった世界線が交わった先が描かれています。茜と山田の恋路を描いていますが、ほかのキャラクターも魅力的です。恋愛ものと一言でくくれないところが、すごく面白かった」と感じたという。

 水瀬さんはさまざまな作品に出演してきたが、茜のような普通の女子大生を演じた経験はあまりなかったという。

 「自分がここまで声優として仕事を続けられてきたから、巡り合えたキャラクターだと思っています。自分がデビューしたての頃は、どちらかというと妹的なキャラクターだったり、愛されキャラだったり、10代の女の子の役が多かったので、このタイミングで、普通の女子大生、現実味あふれる女の子の役に挑戦できるのが、うれしかったです。オーディションに合格した時、自信がなかったんですけど、1クールかけて茜を演じられる喜びがすごくありました。自分にとって新しいきっかけになるといいな、とアフレコに臨みました」

 茜は、本当に存在しそうだと思わせる説得力がある。水瀬さんの演技によるところも大きい。

 「ナチュラルでお芝居しすぎない演技を求められることもありますが、私はあまり経験がなくて、“普通”を演じるために、いろいろなものをそぎ落としていかないといけませんでした。生々しく聞こえないといけませんし、いろいろな発見があって、すごくうれしかったです。アニメを見ている方も新鮮に感じていただけるかもしれません。私が演じていることを忘れて、茜がしゃべっている、と感じていただけるとうれしいです」

 ◇コミカルなシーンも足しすぎない

 茜は見ようによってはあざとく映ることもあるかもしれない。水瀬さんは演じる中で細心の注意を払った。

 「温度感や距離感が大切になってくるキャラクターだと思っていました。原作の読者の方は、茜に自身を投影して読むかもしれません。序盤の(佐々木)瑠奈ちゃん的な視点では、あざとくておいしいところを持っていくヒロインにも見えてしまうかもしれませんし。そこに気を付けて、山田が好きになるような茜であることを意識しました。山田がいろいろな表情を見せるのは、茜がいるからです。そういう優しい世界になれば、と思いながら収録に臨みました」

 コミカルなシーンも多いが、ナチュラルな演技を崩さなかった。

 「やってやるぞ!というギャグやあざとい演技は求められていなかったんです。画(え)はコミカルでも、演技としてはテンションをそこまで上げないというのが、監督のこだわりでしたし、コミカルなシーンは結構あるのですが、足しすぎないことを意識していました。可愛すぎないのが茜のいいところであり、欠点でもあります。完璧すぎないから周囲の人が力を貸してくれるんだと思います。普通の女子大生らしいテンション感に気をつけながら演じました」

 ◇休憩中はうるさい!?

 対照的な山田と茜のやり取りも見どころの一つだ。

 「茜が“10”だとしたら、山田は“2”くらいしかしゃべらないんです。茜がワーッ!と話すことが多いのですが、山田はそれに対して一言しか返さない。山田の返しはクセになりますね(笑い)。茜としてはもっと山田の声を聞きたい、閉ざされているものをこじ開けたいという気持ちになります。その気持ちで演じようとしました。すごくしゃべるので、汗をかきながら演じていましたが(笑い)。それに山田を嫌いな人はいないとも思います。内山さんのミステリアスな演技もあって、どこでも溶け込むんです。魅力的なキャラクターですし、内山さんがやっぱりすごいです」

 水瀬さんと内山さんの役者としての信頼関係があるからこそ生まれる演技もあるはずだ。水瀬さんは収録の中で「温かい空気」を感じていたという。

 「女性キャストの仲がよくて、休憩の時、ロビーに集まって、マスクをしながらワイワイしていたんです。内山さんに『ウザいな』と思われたら、どうしよう……と思っていたのですが、一緒におしゃべりしていただけたのが、うれしかったです。内山さんは本当に表裏のない方ですし、キャスト、スタッフの皆さんの空気感が本当に温かくて、目には見えないものですけど、そんな空気をまとって収録をしていました。毎回、アフレコが本当に楽しかったです。内山さんには、うるさくして、すみません……という気持ちもあるんですけど、うるさくするのをやめるつもりはなかったりして(笑い)」

 「山田くんとLv999の恋をする」は山田と茜の恋の行方以外にもさまざまな魅力にあふれた作品だ。

 「茜と山田の距離感の変化をもちろん楽しんでいただきたいですし、アニメならではの表現もあって、すごく刺激のある作品になっています。監督をはじめスタッフの方々の原作へのリスペクトを感じています。個人的には、茜を通して、こんな女子大生いるよね、こんな先輩や後輩がほしい……と私の声をより近くに感じていただけるとうれしいです。等身大の女子大生を頑張って演じました。ぜひ、毎回楽しみにしていてください」

 温かい空気感から生まれた水瀬さん、内山さんらの演技にぜひ注目してほしい。

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