映画プリキュアオールスターズF:20周年の挑戦 「プリキュアとは何か?」を問い直す 初心に帰る

「映画プリキュアオールスターズF」を手掛けた東映アニメーションの村瀬亜季プロデューサー
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「映画プリキュアオールスターズF」を手掛けた東映アニメーションの村瀬亜季プロデューサー

 人気アニメ「プリキュア」シリーズの劇場版アニメ最新作「映画プリキュアオールスターズF」(田中裕太監督)が9月15日に公開された。シリーズ20周年を記念した同作、第1弾「ふたりはプリキュア」から放送中の第20弾「ひろがるスカイ!プリキュア」までテレビアニメ全20シリーズのプリキュアが集結。歴代プリキュアが集結する劇場版アニメは、2018年公開の「映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ」(宮本浩史監督)以来、約5年ぶりとなる。20周年のタイミングで、同作では「プリキュアとは何か?」を問い直すことが一つの大きなテーマになっている。アニメを手掛ける東映アニメーションの村瀬亜季プロデューサーに、20周年の挑戦、制作の裏側を聞いた。

ウナギノボリ

 ◇答えは一つではない

 「プリキュア」シリーズは、普通の女の子が伝説の戦士プリキュアに変身し、さまざまな困難に立ち向かう姿を描くアニメ。第1弾「ふたりはプリキュア」が2004年2月にスタートし、現在はシリーズ第20弾「ひろがるスカイ!プリキュア」が、ABCテレビ・テレビ朝日系で毎週日曜午前8時半に放送されている。

 「映画プリキュアオールスターズF」は、20周年ならではの作品を目指した。ビジュアルには「繋(つな)ぐ」というシンプルなキャッチコピーが添えられている。

 「シナリオを作り始めた時から、スタッフで『プリキュアって何?』というテーマについて話しあっていました。タイトルの『F』やキャッチコピーの『繋ぐ』はその答えのヒントです。プリキュアとは何なのか?を問い直す映画になっています。オリジナルキャラクターのキュアシュプリーム、プーカはもちろん重要な存在になっています。キュアシュプリーム、プーカとプリキュアの関係性の中から答えが見えてきます」

 答えは作品の中でしっかり描かれているようだが、ネタバレになってしまうため、ここでは答えは書けない。ただ「答えは一つではない」という。

 「プリキュアとは何か? 壮大なテーマですが、ずっと続いている作品だからこそ、分からなくなるところもあります。話し合いの中で答えを考えていきました。いろいろな答えが出てきましたし、答えは一つではないんです。ずっと見てくださっている方には、当たり前のことかもしれません。初心に帰ることを意識しながらシナリオをまとめていきました。監督が、キャストにもテーマをしっかり伝えていたので、演技にも思いが込められています」

 ◇ミラクルライト復活への思い

 子供向けの入場者プレゼントとして「復活!ミラクルライト」が配布されることも話題になっている。ミラクルライトは、スイッチを押すと光る玩具で、2007年公開の「映画Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!」で初めて配布された。2019年公開の「映画 スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて」以来、約4年ぶりに復活することになった。

 2020年公開の「映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日」でも配布されているが、コロナ禍のため、プリキュアを応援することができなかった。映画館で、子供たちがミラクルライトを振って、プリキュアを応援するのは、おなじみの光景となっていたが、コロナ禍以降、別の特典を配布していた。久しぶりに、その光景が復活するのもファンにはうれしいところだ。

 「コロナで配れなくなったっていう経緯があり、今回は復活させるか、また違うものにするのか?と考えました。20周年ですし、しばらくプリキュアの映画を見ていなかった方にも戻ってきていただきたかった。それにここ数年のプリキュアを見てくれている子供たちは体験できていませんでしたし、大人になった子たちにもまたあの光景を楽しんでいただきたいという思いがありました。ミラクルライトを使うシーンも盛り上がるはずです」

 ◇オールスターのような豪華スタッフ

 「Go!プリンセスプリキュア」や劇場版アニメ「映画 魔法つかいプリキュア! 奇跡の変身!キュアモフルン!」「映画 スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて」などの田中裕太さんが監督を務め、田中仁さんが脚本を担当し、同シリーズで数々の変身バンクや原画を手がけてきた板岡錦さんが総作画監督、キャラクターデザインとして参加するなど豪華スタッフが集結した。

 「監督と板岡さんがペアで映画を作るのは初めてです。これまで演出、原画として一緒になったことはありますが、がっつりタッグを組んだ時、どうなるのかも楽しみにしてください。板岡さんは、監督と一緒に作品を作りたいという思いがあったようです。監督のことを『すごい!』と絶賛しています。ゲストキャラクターについて2人で話し合っている時もすごく楽しそうでした。このスタッフならではの映像になると思います。また、全員ではありませんが、歴代のキャラクターデザイナーも参加してくださっています。スタッフもオールスター的になっているので、エンドクレジットも楽しみにしていてください」

 ◇チーム分けの理由

 「映画プリキュアオールスターズF」では、「ひろがるスカイ!プリキュア」のプリキュアがキュアスカイチーム、キュアプリズムチーム、キュアウィング、キュアバタフライの4つのチームに分かれる。「Go!プリンセスプリキュア」「魔法つかいプリキュア!」「キラキラ☆プリキュアアラモード」「HUGっと!プリキュア」「スター☆トゥインクルプリキュア」「ヒーリングっど プリキュア」「トロピカル~ジュ!プリキュア」「デリシャスパーティ プリキュア」のプリキュアが各チームで活躍する姿が描かれる。

 「70分強の映画で78人のプリキュア全員にフォーカスを当てるのは厳しいため、申し訳ないのですが、全員をチームに入れているわけではありません。『HUGっと!プリキュア』の映画から5年、オールスターズはやっていなくて、その後は3世代が共演する映画はありました。直近の作品で、これまでオールスターズに出ていないプリキュアにフォーカスしました。作品の垣根を越えてプリキュアが出会い、チームを組んで旅をするというオールスターズならではの展開を楽しめます」

 どのようにチームを分けたのかも気になるところだ。

 「シナリオに入る前に、監督がどう組み合わせると、うまく話が作りやすいかを考え、表にしていました。シナリオを作りながら入れ替えたところもあります。分かりやすく属性、色で分けることも考えていたのですが、旅をしていく中での会話劇、ハプニングへの対応、場面の転換などロードムービーとして面白くしたかったので、この要素が足りない……などとシナリオを進めながら決めていきました。チームごとにこの映画の中で色を持たせることを意識しています」

 シリーズをずっと応援しているファンに向けて「全作品に見せ場がありますので、お楽しみください。これまで見てくださっていた方々と想(おも)いを共有できるはずです。そこを感じていただければうれしいです。見逃したくない、聞き逃したくない、何度でも見たくなる映画になっています」と仕掛けも用意されているという。チームに入っていないプリキュアの活躍にも期待が高まる。

 プリキュアは一人一人それぞれの個性が異なる。集結した時にどんな化学反応が起きるのか? そして「プリキュアとは何か?」という大きな問いへの答えにも注目してほしい。


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