諏訪部順一×千葉繁:「呪術廻戦」収録秘話 「両面宿儺って腹立つよね」 「かなり悩んだ」漏瑚への一言

「呪術廻戦」のカット(C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
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「呪術廻戦」のカット(C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

 「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の芥見下々(あくたみ・げげ)さんのマンガが原作のテレビアニメ「呪術廻戦」の第2期。呪術師、呪詛師、呪霊が渋谷に集結し、かつてない大規模戦闘を繰り広げる「渋谷事変」が描かれ、迫力のバトルシーン、声優陣の熱演も話題になっている。11月9日にMBS・TBS系で放送される第40話(第2期・第16話)「霹靂」では、“呪いの王”両面宿儺(りょうめんすくな)と特級呪霊・漏瑚(じょうご)の戦いが描かれる。両面宿儺役の諏訪部順一さん、漏瑚役の千葉繁さんに収録の裏側、作品に懸ける思いを聞いた。

ウナギノボリ

 ◇漏瑚はチートな強キャラと戦いすぎ?

 --「渋谷事変」のストーリーの印象は?

 千葉さん 本当に複雑怪奇というか。とにかくとんでもない人たちがいっぱい出てきて、とんでもない戦いをして、という。それが、渋谷の駅の構内であるとか、僕らがなじみ深いところで行われているという、その事実そのものが非常に面白くもあり、怖くもありますよね。神々の戦いが過去にあったように、次元の違うところで戦いが行われている。一般市民は、それをほとんど分かっていなくて、「なんでこんなことが起きているんだろう」と疑問だけが残っていく。実はその裏側では、それぞれの思いを胸に戦っているバカがいた、と(笑い)。そんな印象ですかね。諏訪部くんはどうですか?

 諏訪部さん 「渋谷事変」は、ここまで展開してきた物語がひとつ大きな区切りを迎えるようなエピソードで、まさにオールスターバトルといった感じですよね。ご覧になっている皆さんも、毎回メンタルを削られるような思いをされているのではないでしょうか?

 --第40話では、両面宿儺と漏瑚がバトルを繰り広げます。

 千葉さん あれですよね、両面宿儺って腹立つよね。

 諏訪部さん (笑い)。

 千葉さん 漏瑚と両面宿儺の戦いって、言ってみれば戦国時代の武士の戦いと西洋の鉄砲での戦いのようで。こっちは命がけで必死になって、つばぜり合いをしながら戦っているつもりなんですけど、体を触ることすらできず。なんだかもう鉄砲と刀の戦いで、勝つはずもない。どうしてこの人と出会っちゃうんだろうと。

 諏訪部さん 漏瑚は、第1期では五条悟とのバトルがありましたね。チート級の強キャラと戦いすぎです(笑い)。漏瑚も本当はめちゃくちゃ強いのですが。

 千葉さん 強いんだけどね。でも、五条にしたって、両面宿儺にしたって、強さのレベルが違うじゃないですか。漏瑚ももうちょっと下を相手にしていれば、もうちょっと出番が多くなったんじゃないかと(笑い)。漏瑚くんは、別に恨みつらみとか、そういったことで戦っているわけでもないし、ただ一生懸命、宮本武蔵のように敵を見つけては挑んでいる。大概痛い目に遭うんですけど。

 --第40話では、圧倒的な強さを誇る両面宿儺に漏瑚が立ち向かうことになります。お二人で掛け合いをした感想は?

 千葉さん 腹立ちますよね。

 諏訪部さん (笑い)。

 千葉さん ムカつきますよね(笑い)。戦うのは無理だよ、無駄だよ、この人と戦わなきゃいけないの?というね。漏瑚くん自身も「これはダメだ」と心の奥底では感じてはいるんでしょうけど、戦わざるを得ない。100万もしくは1000万分の1くらいの確率で「もしかすると……」という思いもあったのではないかと。ただ、やっぱり掛け合いでやれるといいよね?

 諏訪部さん そうですね。

 千葉さん コロナ禍もあって、これまでは単独で録(と)っていたりしていたので、相手がどんなトーンでくるのか、どういった圧で来るのかと、想像しながらやるしかない状況が続いているんですよ。今はそれがかなりゆるまってきて、元に戻りつつある。そういった意味では、いい意味でのキャッチボールができた。それがないとね。

 諏訪部さん 一緒に収録するのはやはり楽しいです。ただ両面宿儺は、相手の言葉によって目に見えて感情が揺れ動くような感じのキャラクターではありませんので、せりふのキャッチボールによって起こる表現する上でのシナジーはあまりないんですよね(笑い)。

 千葉さん いや、だからこそ腹立つんだよね(笑い)。

 諏訪部さん そういう両面宿儺と対峙(たいじ)する相手の方はいろいろとこみ上げてくるものがあるでしょうから、掛け合う演者の方が気持ちを作りやすよう、しっかりと「両面宿儺らしさ」を表現するのが自分の課題ですね。

 ◇原作を読むか、読まないか? キャラクターの“今”を大事に

 --両面宿儺と漏瑚は初対決となりますが、収録ではテストの時点から腹の探り合いのようなものがあったのでしょうか。

 千葉さん テストの時は、相手がどういうニュアンスでくるのかも全然分からないので「多分こうであろうな」と。画(え)を見て、自分なりにやってみて、「なるほどな。こう来るのか」ということで、微調整をするというかね。諏訪部くんは原作を読みます?

 諏訪部さん はい、しっかり読む派です。

 千葉さん 僕はね、一切読まないんですよ。というか、読み方が分からないんですよ。4コママンガの「コボちゃん」みたいに縦に読めればいいけど、最近のマンガはカット割りが複雑だから。ほかの皆さんは、原作を見れば分かるんでしょうけど、僕は全く読んでいないので、(収録の時に)線画を一生懸命見て、頭の中で構築しながらやっていて。

 諏訪部さん 両面宿儺はどういう感情でその言葉を発しているのか、よく分からないものが結構多いんですよね。それに、何手先も考えて行動している様子。先々の展開を知っておいた方が、その時々の腹の中をうかがい知ることができますので、「呪術廻戦」の原作は本誌連載で追い続けています。こういういろいろ分かっている系のキャラクターの場合、場当たり的な理解で演技していくと後々演技プランの帳尻が合わなくなってくるおそれもありますので。何も分かっていない、これから成長していくようなキャラクターでしたら、むしろ原作を読まないほうがリアルに演じられるかもしれませんが。難解な用語も多いので、予習の意味でも読んでいます(笑い)。

 千葉さん 言葉が難しいもんね。読めない漢字も多いし。「呪術廻戦」の世界を分かろうとするのは、スペインの繁華街で、地図も方位磁石も持たずに目的の店を見つけようとうろちょろしているような感じですよね。自分がどう迷っているのかも分からないという。とはいえ、登場人物たちにしてみると、「今」しかなくて、過去も未来もないので、「今、どう思っているか」だけだと思うんですよね。

 --演じる上でキャラクターの「今」を大事にするという。

 千葉さん 両面宿儺と戦う時も、今こいつと対峙した瞬間の思いだけだと思うんですよね。未来のことは分かっているはずもないし、過去はもう済んだことなので、今というこの瞬間だけ。今という瞬間に命を懸けて戦っているという。そこはもう理屈を超えたところだと思うんですよね。漏瑚としては倒れた仲間の陀艮(だごん)に「百年後の荒野でまた会おう」と言ったように、自分が倒れたとしても一緒に戦った人たちと違った縁(えにし)をもってまた出会って、また違った冒険をしていくんでしょうけど。今回、僕は漏瑚というキャラクターの中で、精いっぱい戦って、精いっぱい生きて。それでいいんじゃないかと。

 --諏訪部さんは、千葉さんとの掛け合いはいかがでしたか。

 諏訪部さん 宿儺目線で考えるなら、漏瑚との戦いはちょっとした余興感覚。興が乗っている間だけ付き合ってやるという、超上から目線の掛け合いですよね。圧倒的強者である宿儺はバトル時のアクションアドリブもほとんどなく、演者的にはかなり省エネな感じで。漏瑚さん大変そうだなぁ……と思っておりました。

 千葉さん (笑い)。

 諏訪部さん テストテークの時は動きに合わせてあれこれアドリブを入れてみたんですけどね。少しでも爪痕残そうと。しかし、本番前のディレクションでどれもカットされました(笑い)。

 --第40話では、漏瑚が両面宿儺の一言に心を動かされるシーンも描かれます。

 諏訪部さん 最後、漏瑚に宿儺が声を掛けるわけですが、「これをどういうニュアンスをのせて言うべきか?」とかなり悩みました。表情や言葉、その表面的なものだけでは彼の内面を推し量ることはできないので。ですがまぁ、自分なりにメンタルを構築して演じたわけですが、どうのようなプランだったかは秘密です。ご覧になったみなさんが感じたものから、ご自分なりに理解していただけますと幸いです。

 ◇呪霊の魅力 中身は人間と同じ 可愛いけどエグい

 --「呪術廻戦」は、両面宿儺、漏瑚をはじめ、呪術師たちの敵サイドにも魅力的なキャラクターが多いです。お二人が感じる敵サイドの魅力は?

 千葉さん 呪霊だろうが、人間だろうが、見た目は違いますけど、中身は基本的に同じだと思うんですよ。もちろん価値観は違うと思うんですけど、根底に持っているものは全く変わらないと思うんですよね。呪霊には呪霊の世界があって、その中で一生懸命に生きていて、人間は人間の世界で生きている。どっちも魅力的だと思うんですよね。呪霊の見た目が怖いとか不気味だとかは、人間が勝手に言っているだけであって、呪霊から見たら人間のほうがよっぽど気持ち悪いかもしれない。

 諏訪部さん 数的マイノリティーである呪霊を、この世界の主役に押し上げたいという思いが漏瑚や花御らにはあったわけで。彼らには彼らなりの正義や大義がある。その外見や能力のモチーフがプリミティブな感じの呪霊は、人間よりもむしろ純粋な存在なのかもしれませんね。そういったところが面白いと思います。

 千葉さん そうですよね。

 諏訪部さん 見た目は案外可愛らしいんだけど、やることはなかなかエグい。生理的にぞわぞわさせるものがあります。人間目線から見ると「悪」そのもの。ただ、呪霊目線から見ると、人間こそが「悪」そのもの。感情移入するキャラクターを変えると、物語の見え方が大きく変わりそうですね。

 千葉さん そうだね。漏瑚くんにしても「我々こそ真の人間なんだ」と頑張っていて、ポリシーを一生懸命貫こうとしているだけ。それを逆から見たらとんでもないわけですよ。どっちを主観に置くかによって正義がひっくり返っちゃうわけだから、どっちが良いも悪いもない。

 --最後にファンに向けてメッセージをお願いします。

 諏訪部さん テレビアニメ「呪術廻戦」は、非常によくできた映像作品だと思っております。これだけ人気のある原作をアニメ化するとなると、原作を追っていくことに終始してしまいそうなものなのですが、この作品は「映像作品だからこその表現」を大切にして、原作の魅力をより高めるような見せ方に挑み続けている気が個人的にはしています。宿儺VS漏瑚も入魂の出来になっていると思いますので、どうぞお見逃しなく! 圧巻のバトルが繰り広げられますよ。

 千葉さん 僕は、テレビの前でね、皆さんに漏瑚の気持ちになって見てもらいたい(笑い)。漏瑚、頑張れ!と。

 諏訪部さん 漏瑚、全力で頑張りますからね。声出しもOKですから、ぜひ応援上映の感覚でご視聴ください!(笑い)。

 千葉さん そういった思いで見ていただけたら非常にうれしいなと思います。

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