ドラゴンボールDAIMA
第6話 イナヅマ
11月18日(月)放送分
士郎正宗さんのマンガ「攻殻機動隊」が原作のアニメ「攻殻機動隊 SAC_2045」のシーズン2を再構成した劇場版「攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間」が、11月23日から3週間限定で公開されれている。神山健治さん、荒牧伸志さんが総監督、映画「新聞記者」などの藤井道人さんが監督を務め、新たなシーンと視点で再構成した。神山さん、荒牧さんが、シーズン2制作時のエピソード、ダブルシンクというアイデアが生まれたきっかけ、「最後の人間」の“先の可能性”を見考えなどを語った。
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神山監督 苦労していたライティングの部分をシーズン2から参加してもらったCGディレクターの松本勝さんに助けてもらった感じです。
荒牧監督 松本さんとはいろいろと仕事をしてきましたが、もっとフォトリアルなものとか、実写映画を志向していて、もともとアニメ志向ではないんですよ。ですのでシーズン1の時はあえて声をかけなかったんですよ。でもシーズン2で画(え)作りを改善することになり、ここはやっぱり参加してもらおうと。それでディスカッションした上で、彼の得意な画作りかつアニメっぽさもある感じ、いい落としどころを見つけてくれました。
神山監督 特にシーズン2中盤からは、ライティングに加えてセットと書き割りのコンポジションが大分こなれてきて。その辺りでようやくいい感じになったかなと思いましたね。
荒牧監督 そんな感じでしたね。あとはモーションキャプチャーについても、この数年で相当の量を収録したので、いろいろ認識が深まったところがありました。演出する側、演じるアクター、キャラクターという3つのバランスが、うまくとれるやり方はあるんじゃないかと思うんだけれど、これって「固定的」なものじゃないんですよね。アクターとキャラクターが近ければいいというものでもないし、そこに対して演出がどう関与するのか。一つの方法論は見つかったような気もするんですが。
荒牧監督 ジオシティは神山さんが最初に「すり鉢状になった露天掘りの採掘現場みたいなのはどうだろう」というアイデアをくれたんですよね。それを受けてまず臼井(伸二)君にデザインしてもらって、僕がそこからラフのモデルを作ってみて。そのあたりで神山さんから、その上部にかかる橋がほしいというリクエストが出てきて。
神山監督 高低差というか垂直方向のアクションは「攻殻」の華なので、あるといいなと。
荒牧監督 それで橋を渡してみたんですが、結果としてはちょっともの足りないね、となって。それで今度はブリュネ(・スタニスラス)さんに、改めてトータルデザインし直してもらいました。ジオシティは相当いろんなやりとりを重ねてできたんです。
神山監督 今回、物語のモチーフとなるものとして小説「1984」をピックアップしているんですが、同時にもう一冊、メインのモチーフにするかどうか迷った本がありました。それが「夜と霧」でした。あれを読むと、ある種の強烈な体験は個人の中に深く刻まれているけれど、普段は表に出てくることはなくて、当時者たちはむしろ数少ない“いいこと”だけをよく覚えていたりする。でも、この強烈な体験こそが、個人の存在を確立させるものでもある。これはシマムラタカシが、従妹のユズやクラスメイトのカナミの出来事で体感したことでもあります。逆にいえば、その体験があることで人と人の間に壁が生まれてしまう。だからシマムラタカシは、この壁を取り払ってしまおうと考えたわけです。それで強烈な体験を呼び起こし、郷愁とともに浄化の感情を湧き上がらせることで、それを実行しようとした。
神山監督 そこでタカシに影響を与えたのが“空挺部隊”にもらった「1984」です。「1984」を「摩擦をゼロにする方法としてのダブルシンク」を示した本として読むのは本来の読み方ではないと思う。だけど彼は、まだ幼かったからかもしれないけれど、そこに全て答えがあると思っちゃった。こうしてタカシは、人類全体を幸福にするため、ミニラブを使ってNを増やそうと考えたんです。ただ、こうした内容を、素子たち公安9課の活躍を通じて明らかにしていく、という形で描くのは苦労しました。
荒牧監督 しかも仮にシマムラタカシを追いかけたとしてそれがエンターテインメントになったかといえば、そうもならない可能性も十分あったと思います。そこが難しいところで。
神山監督 これはあまり気づかれていないことなんだけど、「S.A.C.」の第12話「映画監督の夢」の時に素子は既に今回の答えに近いことを言っているんですよ。脳だけになった映画監督が彼女に「(お前は)リアリストだな」と言うんです。それに対して素子は「現実逃避をロマンチストと呼ぶならね」って返す。言外に自分のことをロマンチストだと思っているということが分かるせりふです。でも、夢を生きようとするなら、現実をどこまでクリアにしていくかを抜きには考えられない。それをやっているのが素子ということです。
神山監督 意外と素子のことをスーパーリアリストだと思っている人が多いんですけど、みんな第12話を忘れているんですよ。そしてタカシくんとしては、現実と夢がシームレスだったからこそ、素子をNにすることができなかった。
荒牧監督 変わっていく正義にその都度ちゃんと対応していく人という印象は変わらずありますね。原作から始まって、映画やテレビシリーズを経て、素子はずっとさまざまな状況に対応しているんですよね。「APPLESEED」シリーズのデュナンはパートナーであるブリアレオスありきのところがあるんですよね。素子は、そこはどうでもいいというか、パートナーがいても別に自分がそこに左右されることはない。神山さんがさっき言ったロマンチストっていう言葉はすごく的確だったと思いますね。現実と夢に真摯(しんし)に向かい合っているキャラクターだと思います。
神山監督 僕はやっぱり「攻殻」の世界全体が、ウェブ3.0になった方が、この“先”があるとしても可能性があると思ったんです。
荒牧監督 実はそこは今回「SAC_2045」を始めるにあたって一番問題になったポイントでもありましたね。原作で描かれていた電脳空間の描写にとどまるべきか、もっと先の描写へと進めるべきか。
神山監督 これから世の中がどう進んでいくかというと、かつて考えられたサイバーパンクのような未来ではなく、もっと異なる方向だろうというふうに考えたわけです。それを写し取れるような世界であった方が、これからいいだろうと。
荒牧監督 でも、考えてみると、N化が進んだ世界は、概念的には士郎先生の描いた「攻殻機動隊2 MANMACHINE INTERFACE」に結果として近づいたのかな、というふうにも思いましたね
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