押井守監督:「攻殻機動隊 SAC_2045」語る “虚構と現実”は「映画を作る上での方便」

「攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間」の公開記念舞台あいさつに登場した押井守監督(左)と神山健治監督
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「攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間」の公開記念舞台あいさつに登場した押井守監督(左)と神山健治監督

 士郎正宗さんのマンガ「攻殻機動隊」が原作のアニメ「攻殻機動隊 SAC_2045」のシーズン2を再構成した劇場版「攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間」の公開記念舞台あいさつが12月2日、グランドシネマサンシャイン池袋(東京都豊島区)で開催され、神山健治監督、押井守監督が登場した。「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」「イノセンス」などで知られる押井監督は、神山監督が手掛けた「攻殻機動隊 SAC_2045」について「神山、まだやってるんだ! 時代というテーマを追いかけていることに感心した。よく戦っている。果敢にやっている」と語り出した。

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 押井監督は「攻殻機動隊 SAC_2045」の神山監督の挑戦について「(神山監督は)世界で何が起きているのか? 起ころうとしているのか?に興味がある。アニメでこれをやるのは大変。時代は確実に変わりつつあり、映画でやるのは相当勇気がいる。(押井監督は)『パトレイバー』で時代に関わろうとした時期はあったけど、なかなかできない。時代に抜きつ抜かれつだったけど、今は時代が速い。映画のテーマとして難しくなってきた」と話した。

 同作のキーワードの一つにダブルシンク(二重思考)がある。押井監督の作品は「虚構と現実」がテーマになっているものもあるが「虚構と現実と散々言われてきたけど、そういうことではないんだよ。つきまとっているものではあるけど、映画を作る上での方便なんですよ。それ自体が映画になるわけではない。最終的には人間の現実を語りたい。虚構なしで生きている人間はいない」とコメント。「人間は年を取るし、現実と自分の落としどころが見えてくる。現実は悪くない」とも語った。

 「攻殻機動隊」は、未来を予測してきた作品で、長く愛されている。 押井監督はその理由を「散々、聞かれたけど、分からないね」と語りつつ「新しい技術は願望で語られる。技術は実際には違うところで進化する。AIへの畏怖(いふ)、恐怖があるかもしれないけど、AIは人間に似せようと作っていない。願望なんですよ。恐怖は願望の裏返し。映画で語られている未来像は、現実とは違う。願望を下敷きにして恐怖、憧れを作り出すのが僕らの仕事。実際の技術は、人間の願望とは別の次元で進化する。インターネットがそう。つまらないところに着地する。予言するために映画を作っているわけではない」と話した。

 「攻殻機動隊SAC_2045」は、「攻殻機動隊 S.A.C.」シリーズの神山さんと「アップルシード」の荒牧伸志さんが監督を務めたアニメで、プロダクションI.GとSOLA DIGITAL ARTSが制作。シーズン1が2021年4月から、シーズン2が2022年5月からNetflixで配信されている。「攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間」は、神山さん、荒牧さんが総監督、映画「新聞記者」などの藤井道人さんが監督を務め、新たなシーンと視点で再構成した。11月23日から3週間限定で公開されている。

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