名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
劇場では100億円作品が登場し、「【推しの子】」は主題歌が世界的なヒットを記録するなど、広く話題を振りまいてきた今年のアニメ界。さらにこれまでと異なる状況が生まれているようだ。コラムニストの小新井涼さんが解説する。
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2023年も早いもので残りわずか。振り返ると、今年もアニメ関連のさまざまな出来事がありました。
新語・流行語大賞のトップ10にもなった4年ぶりの声出し応援は、アニメ界隈でもライブや応援上映で続々解禁され、年度末には26年続いたサトシのアニポケ主人公卒業も話題に。春クールで盛り上がりをみせた「【推しの子】」は、主題歌「アイドル」の世界的なヒットも度々報じられ、今期話題の「葬送のフリーレン」では、史上初の「金曜ロードショー」での初回スペシャル放送が大いに注目を集めました。
そんな今年を、特に印象的であったアニメ関連の話題と共に総括してみると、2023年はいったいどんな年であったといえるでしょうか。
真っ先に思い浮かぶのは、2022年に引き続き“アニメ映画関連の話題が絶えない年”であったことです。
先日、復活上映も決まった今年初の興収100億円突破作品「THE FIRST SLAM DUNK」をはじめ、シリーズ初の興収100億円突破を達成した劇場版「名探偵コナン 黒鉄の魚影」など、今年も興収100億円突破作品が複数誕生する年となりました。宮崎駿監督待望の最新作「君たちはどう生きるか」が公開され、異例の宣伝方法がより話題を呼び、興収80億円を突破するヒットを生んだことも今年を代表する出来事といえるでしょう。
また、10月前後には「すずめの戸締まり」や「BLUE GIANT」といった話題作が早くもアンコール上映され、「ONE PIECE FILM RED」がここで累計興収200億円を突破したことも忘れてはなりません。従来は映像ソフトの販売や配信開始時期とも重なるため、まず再上映されることはなかった直近の話題作が、こうして過去作の“リバイバル”というよりは終映後すぐの“アンコール”という形で相次いで再上映されたことも、今年の特筆すべき出来事でしょう。その背景には、好きな作品を映画館でみることに、配信や映像ソフトでの視聴とはまた違った価値を見出した観客の鑑賞習慣の変化や、それに気づいて再上映に力を入れだした配給/興行側の動きといった、ここ数年に渡る傾向も関係していそうです。
他にも、現在もじわじわ熱を広げ続ける映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」や、年末には「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」も控えているなど、まさに今年は最初から最後まで、“アニメ映画関連の話題が絶えない年”でありました。
そして今年もうひとつ印象的だったのは、海外での「アダプテーション」に“新たな可能性”が見出されたことです。
「アダプテーション」という言葉は、“翻案”とも訳され、ある作品を別のメディア形式で新たに作り出す、つまりマンガ作品を実写映画にするなど、日本でいうメディアミックスに近い形で英語圏でも一般的に使われています。今年はそうしたアダプテーションの話題作として、アニメ映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」と実写ドラマ版「ONE PIECE」という印象的な作品が登場しました。
両者共に、世界的な大ヒットを生んだことはもちろん、なにより大きかったのが、これまでなにかと原作ファンが懐疑的であった、海外でのアダプテーション(映像化)へのイメージを塗り替える大きな反響を生んだ点です。ゲームで遊んだ幅広い世代を夢中にさせた「マリオ」しかり、世界中のファンからも絶賛された「ONE PIECE」しかり、懐疑的だった作品ファンもうなるようなアダプテーションは生まれ得るのだと、多くの人にその可能性を示した点はかなり大きいと思います。
これまでも、映画「名探偵ピカチュウ」などの話題作はたびたび生まれてきましたが、それでも海外での映像化には、まだまだ期待と同じだけ不安や懐疑の声も生じていました。しかし今年の上記2大ヒットを経たことで、先日任天堂から発表された「ゼルダの伝説」実写化への大きな反響からもうかがえるように、今後のアニメも含めた海外でのアダプテーションへの期待値は、それ以前と比べて格段に大きくなったように思います。その意味でも、今年は海外でのアダプテーションにとって、従来のイメージを塗り替える大きな変革をもたらした年であったといえるのではないでしょうか。
改めて2023年を振り返ってみると、今年は特にこのふたつ、前年に引き続きアニメ映画関連の話題が絶えず、海外でのアダプテーションに新たな可能性が見出されたことが印象的な年であったといえそうです。これらは、引き続きアニメファン以外にまで広く様々な作品が普及し続けている状況や、海外展開においても、そうして大きくなり続ける作品ファンの声がこれまで以上に重視されるようになってきているここ数年の流れも関連しているのでしょう。
そうしてアニメや関連作品を受け入れる土壌がますます大きくなってきている中で、今後どのようなヒット作や盛り上がりが生まれてくるのか、来年以降の展開からもますます目が離せなくなりそうです。
こあらい・りょう=KDエンタテインメント所属、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約10年前から継続しつつ、学術的な観点からもアニメについて考察・研究し、大学や専門学校の教壇にも立つ。アニメコラムの連載をする傍ら、番組コメンテーターやアニメ情報の監修で番組制作にも参加している。
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