ダンダダン
第11話「初恋の人」
12月12日(木)放送分
人気アニメ「機動戦士ガンダムSEED」シリーズの完全新作「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」が1月26日に公開された。新作には、ライジングフリーダムガンダムなどの新たなMS(モビルスーツ)が登場することも話題になっており、「機動戦士ガンダムSEED」「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」に続き、大河原邦男さんらがメカニックデザインを手掛ける。大河原さんは1972年に放送をスタートした「科学忍者隊ガッチャマン」で初めてアニメのメカデザインを手掛け、「機動戦士ガンダム」や「装甲騎兵ボトムズ」「勇者シリーズ」など数多くのメカを手掛けてきたメカニックデザイナーの“巨匠”だ。大河原さんのアトリエを訪れ、「SEED」シリーズをはじめとしたメカデザインについて聞いた。
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大河原さんのアトリエには、パソコンがあるものの、デザインは手描きが中心だという。デザインは一人で行っている。
「アシスタントもいませんし、弟子もとりません。眠くなったら眠りますし、一人で自由にやっています。クライアントの要望でデジタルをやることもありますが、基本的にはアナログです。アナログ時代に育っていますし、アナログの方が線に特徴があっていい。私は線画だけですしね。カラーに関しては、アニメ制作会社の色彩設計の方が、監督と決めていきます。今はデジタルなので何色でも使えるのですが、アニメカラー(セル画用の塗料)が高かった時代の名残ですね。『SEED』に関しても色彩設計の方がカラーを担当しています」
長年、メカデザインを手掛ける中で、時代の変化も感じている。一方で、変わらずに大切にしていることもある。
「『ガンダム』が始まったのはもう45年も前ですし、その頃と今ではテクノロジーがまるっきり違います。デザインに関しても、テクノロジーにのっとったリアリティーがありますしね。玩具はセーフティートイの基準がありますし、鋭角をあまり多用しない。そうすると限られてくるんです。メカもキャラクターなので、シルエットでこのメカが何であるかを表現します。複雑なディテールはあまり必要ないんですよ。空間恐怖症というものがあって、広い空間があると、埋めたくなるのですが、私の場合は逆に線を入れるのが怖いんです。F91(1991年公開の『機動戦士ガンダムF91』)の時は、ディテール入れて、企画室で線を減らし、シーンによって線の数を調整してもらったことはありましたが、それ以降はそういう作業をしていません。今は線をいっぱい入れる人が多いですよね」
大河原さんは、「科学忍者隊ガッチャマン」が始まった1972年にタツノコプロに入社した。当時の経験から「線を入れるのが怖い」と感じるようになったという。メカデザインの線が増えれば、アニメーターの手間も増える。大河原さんは、アニメで動かすことを前提としたデザインを考えている。
「タツノコに新入社員として入り、3カ月でメカを始めたのですが、線を入れることが怖くなってしまったところがあります。その頃は、メカデザインではなく、メカ設定といっていました。芝居で必要なら、ボルト一本から形を指定していく。監督は鳥海永行で、社長は劇画的な画(え)を描く吉田竜夫でした。サンライズ、当時の創映社は『ゼロテスター』をやっていて、『ガッチャマン』があまりにもリアリティーがあるので、創映社が焦ったらしいんですよ。我々の仲間は20代でしたし、天野喜孝は19歳でした。そういう連中がワイワイとチャレンジしていた。私はアニメのことは知らなくて、わけが分かっていなかったけど、やりたいことがどんどんできました。そういう時代でした」
大河原さんが「ガンダム」シリーズのMS(モビルスーツ)を含めたメカをデザインする際に重視しているのがシルエットだ。竜の子プロダクション(現・タツノコプロ)の入社前に、オンワード樫山で背広のデザインをしていた経験を生かしているという。
「衣装、コスチュームもシルエットです。ザクも背広ですから。オンワードで背広をたくさん書かされましてね。仏像や民族衣装などを頭に思い浮かべると、どんどん作れるんですよね。そんなに頑張って作っているわけではないですよ」
「SEED」シリーズも線を入れすぎないデザインで仕上げようとした。シルエットで特徴的なのは“羽”のあるMSが多いことだ。羽があると、全体のバランスをとるのが難しそうだが……。
「昔は、模型にする時、立てないからダメだと言われたのですが、胸から放射線状の武器を付けたり、そういうシルエットが子供たちに喜ばれるけど、脚はしっかりと地面に立つ。ハイヒールはダメだと言われていましたが、今は関係ないですよね。ただ、身に付いてしまっているものがあるんです」
「SEED FREEDOM」に登場する新MSのライジングフリーダムガンダムのデザインが公開された際、“顔”が話題になった。フリーダムガンダムとは“顔”が変わっているようにも見える。
「実はそんなに変えていないんです。ガンダムっぽいデザインは大体、顔の印象は変えていなくて、ヘルメットなどで個性を立たせればいいという考えです。人間もそんなに顔は変わらないじゃないですか(笑い)。ヘルメットなどで差別化できる。新しいメカにしてもそんなに顔は変えていないんです」
新MSとしてゲルググ、ギャンを想起させるゲルググメナース、ギャンシュトロームが登場することに注目しているファンも多い。「SEED」シリーズではこれまで、ザクウォーリア、ドムトルーパーなど懐かしのMSをモチーフとした機体が登場した。「SEED」シリーズを手掛ける福田己津央監督の要望もあって、デザインしたという。
「『SEED DESTINY』が終わり、劇場版を作ることになって、その時にデザインをしたものなので、10年以上前にはデザインが終わっていたんです。劇場版の制作の際、必要なMSは福田監督から言われて作ってあって、それがやっと日の目を見ました。ギャンはフィニッシュに近いものがあって、耳にアンテナのようなものを付けたり、その程度です」
1987~88年に放送された「機甲戦記ドラグナー」のキャバリアーのようなメカも登場する。「機甲戦記ドラグナー」は、大河原さんがメカデザインを手掛け、福田監督が演出として参加したアニメだ。
「これも福田監督から話がありました。当時、ドラグナーの1、2、3型の主役3体のデザインが寂しかったので、神田武幸監督に三度笠(がさ)をかぶせたいとお願いしたんです。傘を外したら、顔が出てくる……と度肝を抜きたくて」
大河原さんは、福田監督に「『ガラット』(1984~85年放送の『超力ロボ ガラット』)の時から一緒にやっているし、気心が知れている」と信頼を寄せている。
「福田監督の好みは分かっているし、彼に任せれば、デザイン以上の魅力を引き出してくれる。長く一緒にやっているので信じていますし、言われた通りやっています。私の仕事は、自分の意思を押し付けなきゃいけないようなものではない。監督が求めているものを出すのが仕事なんです。これまで100本くらいやっていて、こういう作品をやりたいと提案をしたのは『ボトムズ』(1983~84年放送の『装甲騎兵ボトムズ』)だけですね。パワードスーツではなくて、人が操縦して乗る搭乗型ロボットはああいう構造になる。(監督の)高橋良輔さんも『私も考えていた』と言ってくれたのですが、スポンサーには評判が悪くて」
“巨匠”である大河原さんがデザインに取り組む姿勢は“職人”のようだ。「SEED FREEDOM」のMSのデザインには数々の“職人技”が込められている。
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