石見舞菜香:「【推しの子】」黒川あかね役 第1期“神回”の裏側 綱渡りのように集中 “アイ”高橋李依を研究

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 「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載中のマンガが原作のテレビアニメ「【推しの子】」の第2期が7月3日からTOKYO MX、BS11ほか35局で放送される。2023年4~6月に放送された第1期は数々の“神回”がある中で、舞台俳優の黒川あかねの“神回”と話題になったのが第七話「バズ」だ。第2期の放送を前に、あかね役の声優の石見舞菜香さんに第1期を振り返ってもらった。

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 ◇役者としてあかねと一緒に役を考える

 「【推しの子】」は、「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」の赤坂アカさん、「クズの本懐」などの横槍メンゴさんの豪華タッグが原作を手がける人気マンガで、「週刊ヤングジャンプ」で2020年4月に連載をスタートした。突然の死を遂げた天才アイドル・アイがのこした双子の兄妹の物語が描かれる。双子の妹・ルビーは母に憧れ芸能界に入り、兄・アクアはアイ殺害の協力者であろう実の父親への復讐(ふくしゅう)を誓う。

 第1期は、音楽ユニット「YOASOBI」が手掛けるテレビアニメのオープニングテーマ「アイドル」も大ヒットし、「第74回NHK紅白歌合戦」のパフォーマンスも話題になった。老若男女を魅了し、社会現象となった「【推しの子】」の大きな反響を受けて、石見さんは「

 「【推しの子】展に行った時、小さな子供、家族連れの方々の姿を見て、幅広い方に愛されている作品であることを実感しました。私自身も『何に出ているの?』と聞かれた時、【推しの子】と言えば、通じますし、改めて多くの方から愛されている作品に携わらせていただけていることを本当にうれしく思っています」

 石見さんが演じるあかねは、劇団ララライの舞台役者。役を研究し尽くす憑依型の演技が高い評価を得ている。あかねは劇中で役を演じることもあり、石見さんがあかねを演じ、あかねが役を演じ……と複雑でもある。

 「看板役者で、きちんと演技ができるキャラクターなので、私もしっかり演じないといけません。私もお芝居を仕事にしているのが、あかねちゃんとの共通点ですし、あかねちゃんと一緒に頑張って演じていこう!という気持ちです。劇中で、あかねちゃんは、役を演じることもあります。あかねちゃんを演じる時は、そんなに声を作っているわけではないので、自分も役者としてあかねちゃんと一緒に役を考えているみたいなんです。でも、あかねちゃんは役をプロファイリングしてお芝居をしますが、私がプロファイリングしても、あかねちゃんと同じ表現ができるわけではないので、自分は自分のやり方を探しつつ、あかねちゃんの表現として成立するように演じています」

 ◇高橋李依の芝居の奥深さ

 あかね役はやっぱり複雑だ。“神回”となった第1期の第七話「バズ」、あかねがアイを演じたシーンもあった。

 「第一話のアイの資料をいただいて、研究しました。メディアに出ているアイ、子供たちに接するアイ、社長と接するアイは、声色も全然違ったんです。第七話では、アクアに『アイだ』と思わせないといけないし、アニメを見ている方にも『アイだ』と感じていただかないといけません。アクアに対して母の愛を見せつつ、アイドルモードの軽やかさもないとアイとは思ってもらえない。ただ軽やかなだけではアイではないですし、とにかくいろいろなアイをにじませないといけません。アイを演じられている高橋李依さんと音が違ってはいけないし、だからといって声まねでもない。難しいところで、ずっとアイの声を聞いて研究しました」

 石見さんは、あかねのようにアイをプロファイリングした。

 「研究は重ねたのですが、やっぱり難しかったです。李依さんは本当にすごい。記号化できないんです。ちょっとつかみどころのないのがアイの魅力でもあるのですが、本当になかなかつかめなくって。李依さんのアイだからこそこんなに難しかったんだと思います。李依さんがアイを演じると知った時から覚悟はしていたのですが、やはり自分としては収録している時、大丈夫だったかな?という気持ちが大きかったんです。なんといっても【推しの子】は作画がすごい作品ですし、とくに第七話はエンディングの入り方もすごかったので、トータルで盛り上がったんだと思ったりもして。李依さんのお芝居の奥深さは、研究している自分がよく分かっているので、もっと頑張りたかったな……という気持ちも正直ありました」

 石見さんは自信がなかったようだが、X(ツイッター)では石見さんの名前がトレンド入りし、横槍さんが石見さんの演技を絶賛するなど大きな盛り上がりを見せた。

 「その時は、私自身がまだ【推しの子】の現場に慣れていなかったのもあって、皆さんとあまりお話できていませんでしたが、放送後のラジオ番組で共演者の方とお話する機会があって、『アイでした!』と言っていただけたり、原作の先生が喜んでくださったり、見ていただいた皆さんにも届いたことがうれしかったです。皆さんに届くことがなにより大事だと思いますし、反省は自分の中で終わらせて、今はよかったと思っています」

 石見さんは「【推しの子】」を見て“画(え)の力”も感じている。石見さんの演技と画が融合することで“神回”が生まれた。

 「スタッフの皆さんが作品に注いでいる熱量を感じ、尊敬の念がありますし、一人でキャラクターを演じているのではないという気持ちになります。以前、別の作品で、作画をされている方とお話をする機会があり、『お芝居しながら、同じ気持ちになりながら描いている』と伺いました。その時に決して自分だけが演じているわけではないので、もっと画に寄り添いながら、画に負けないように頑張ろうと思ったんです。私は【推しの子】のスタッフの皆さんを信頼していますし、思いに応えたいという思いで演じています」

 ◇集中するともやがかかるような状態に

 石見さんは、あかねと同じように憑依型の役者なのかもしれない。

 「オーディションの時から“作らないこと”を考えていました。あかねちゃんと自分はそんなに遠くないですし、お芝居はもちろんのこと、あかねちゃんとしてしゃべることができれば……という思いがありました。そのためには、集中力を絶対に切らさないようにしないといけません。言葉にするのが難しいのですが、もやがかかるような状態になると集中できるんです。なので集中力が切れないよう、毎回のアフレコは綱渡りのように役と向き合っています。スタッフの方にも毎回、ディレクションしていただき、絶対に集中を切らさないぞ!という気合で臨んでいます」

 集中を切らせないために、ギリギリの状態で役に向き合っている。

 「あかねちゃんに共感ができることが、大きいんだと思います。気持ちを理解ができるからこそ、入り込めますし。特に第1期の時は、集中力を保つためにも休憩中は共演者の方とコミュニケーションを取るというよりかは、ずっと台本と向き合っていました」

 第2期では、アクアやあかねらが2.5次元舞台「東京ブレイド」に出演することになる。第2期の見どころを聞いてみると「ありすぎます!」と熱弁する。

 「アニメだからこその演出、音楽もあって、完成前の映像を見ても毎回泣けるくらい本当にすごいです。すごいアニメになる予感しかありません。原作を読んでいる方にも、新しい感動があるような第2期になっています。あかねちゃんを含めてそれぞれのキャラクターの関係、それぞれがぶつかる壁にも注目してください!」

 第2期でも綱渡りのように繊細にあかねを演じる石見さんの演技に注目してほしい。

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