ガリウム・マグネシウムのサプライチェーン強靭化に向けた提言

図1:ガリウムのサプライチェーンの現状と強靭化に向けた提言
1 / 1
図1:ガリウムのサプライチェーンの現状と強靭化に向けた提言

プレスリリース詳細 https://kyodonewsprwire.jp/release/202409045913

あなたにオススメ

本プレスリリースは発表元が入力した原稿をそのまま掲載しております。詳細は上記URLを参照下さい。また、プレスリリースへのお問い合わせは発表元に直接お願いいたします。

2024年9月9日

EPIコンサルティング合同会社

 EPIコンサルティング合同会社(以下、EPIと呼びます)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDOと呼びます)から委託を請け、諸外国の金属資源政策、及びガリウム(Ga)・マグネシウム(Mg)のサプライチェーンを分析し、当該サプライチェーンの強靭化に向けた提言を行いましたので、以下のとおりお知らせします。

〇調査の背景

 カーボンニュートラルやデジタル社会の実現に向け、近年、電動車のバッテリーや車体軽量化に使用される金属をはじめ、半導体に用いられる金属材料等の重要性が一層増しています。一方で、昨今の紛争の激化をはじめとする世界情勢の激変により、一部の国で資源の輸出が制限されるなど、金属材料を取り巻く環境変化が続いています。このような環境変化を踏まえ、本調査では半導体材料のガリウム(Ga)、及び軽量化に利用されるマグネシウム(Mg)を対象に、諸外国の政策動向や研究開発動向、サプライチェーンの状況を明らかにし、我が国として取るべき対応策を検討しました。

〇ガリウムのサプライチェーンの現状と強靭化に向けた提言

 ガリウムはアルミ製錬・亜鉛製錬の副産物として生産され、世界の製錬品の98%が中国で生産されています。中国のアルミナ製錬のシェアは55%、亜鉛製錬のシェアは47%であることから、ガリウムが回収されていない製錬所は世界に多く存在していることを意味しています。製錬所においてガリウムの回収を行わないことがある背景としては、先進国においては環境規制によりアルミ・亜鉛製錬所におけるガリウム生産施設を併設することが困難であること、及びガリウムの市場規模が小さいことから投資回収に不透明さがあることが挙げられます。

 ガリウムの安定調達のためには、上流においては、環境影響への懸念からガリウムを生産していないアルミナ製錬所に対し、我が国が有する環境配慮型の製錬技術を供与し、調達の多様化を推進すべきです。

 中下流においては、半導体デバイスの製造工程で基板裏面を研削する際に剥離されるGaN基板の再利用を促す他、ガリウムの工程内リサイクルが実施されていない近隣諸国を含む半導体工場から排出されるGaAs基板のスクラップを回収し、国内に輸入してガリウムを精製することでバージン材の需要を抑制すべきです。

 市中リサイクルについては、LED等に含まれるGaAs基板や横型GaNはガリウム含有量が少ないため実施されていませんが、今後、ガリウム含有量の多い縦型GaNが自動車等のパワー半導体へ採用される際に、市中リサイクルスキームを作ることが求められます。

 上記の施策により、ガリウムの調達先の多様化及びグリーン化を実現し、我が国のガリウムデバイスの一層の競争力向上につなげるべきです。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202409045913-O1-7Bm39G57

〇マグネシウムのサプライチェーンの現状と強靭化に向けた提言

 マグネシウムは、ドロマイト等のマグネシウム鉱石から精製する方法か、塩湖から精製する方法のいずれかで生産されています。マグネシウムの鉱石生産の約6割を中国が占め、製錬シェアにおいては約8割を占めています。2000年頃までは北米や欧州も一定の製錬シェアを有していましたが、2010年以降、コスト競争力の観点から中国以外の製錬量が減り、結果として中国のシェアが高まっています。塩湖からマグネシウムを回収することもできますが、経済的に回収するには塩湖の濃度が高いことが求めらます。このため、商業的に生産しているのは米国とイスラエルに限られ、両国の供給量は少ないのが実態です。この結果、我が国のマグネシウム製錬品輸入先シェアは中国が9割を占めており、調達先の多様化は十分ではありません。

 マグネシウムの安定調達のためには、上流においては、ドロマイトが偏在していることを踏まえると、塩湖や海水からの回収が期待されますが、経済性を担保できる高濃度の塩湖は限りがあることが課題です。そこで、現時点では有効活用されていない海水淡水化プラントの濃縮海水に着目し、低コストで環境負荷の低い濃縮海水向けマグネシウム精製の技術開発を行い、マグネシウムの調達多様化を図ることは有益と考えられます。

 中流においては、耐熱性及び耐腐食性を向上した自動車向けのマグネシウム合金の開発及び、ギガキャストの品質安定化とギガキャストに使用するアルミ合金の規格化を支援し、自動車向けのマグネシウム製品採用を後押しすべきです。

 下流においては、長期的には自動車へのマグネシウム製品の採用増加を見越して、自動車からのマグネシウムの市中リサイクルシステムを構築すべきです。

 上記の施策により、濃縮海水から再エネを使用した電解精錬によりグリーンなマグネシウムを調達し、それを新たな合金技術を用いて自動車への採用を拡大することで、我が国の自動車産業等の競争力強化に貢献すべきです。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202409045913-O2-54m1G2Z4

〇本報告書の詳細について

 EPIでは報告書の概要を特設ウェブサイトに取り纏めています。本報告書について詳しく知りたい方は、以下の特設ウェブサイトをご覧ください。

ガリウム・マグネシウムのサプライチェーン強靭化に関する調査

特設Webサイト

www.epi.inc/insights/work/criticalmaterials/

 EPIは関係者と連携の上、本提言の実行を継続的に支援し、我が国のガリウム・マグネシウムの一層の安定調達の実現に向けて貢献していきます。

【会社概要】 EPIコンサルティング合同会社

 EPIコンサルティングは世界の石油メジャー出身者により2000年に設立されたエネルギー領域に特化した戦略コンサルティングファームです。国内随一の専門性と少数精鋭のファームならではの機動力を強みに、20年以上にわたりお客様のエナジートランジションを支えています。

【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M108050/202409045913/_prw_PT1fl_eIEp5wAI.png

共同通信PRワイヤー 最新記事

MAiDiGiTV 動画